
ゼロメートル防災講座(対面・オンライン併用)開催しました
誰も置き去りにしない防災へ
~熊本地震・豪雨災害から学ぶ、地域と暮らしのレジリエンス~
災害の現場ではマニュアルは役に立たないことがほとんどです。本当に大切なのは、「そこにいる人が、そこにあるもので、何とかするしかない」という覚悟。そして、それを可能にするための日頃からの知識と助け合いのネットワークです。
熊本地震や熊本豪雨での支援活動事例を共有し、自然災害時における地域社会と人間の「脆弱性」と「可能性」を理解します。講師の専門分野である地域福祉の視点から、「誰もが健康で安心して暮らせるまちづくり」に必要な、住民の「くらしの声」を聴き取る方法と具体的な実践論を学び、弥富市における地域防災のあり方を考えます。
講師 高林 秀明 氏(熊本学園大学 社会福祉学部 教授)
社会福祉学を専門とし、地域で暮らす人々の「くらしの声」に耳を傾ける調査活動を重視。子ども、高齢者、障がい者、働く人々などの生活問題を多角的に研究。阪神・淡路大震災時は、仮設住宅での「孤独死」調査を行い、熊本地震以降は学生とともに被災地・被災者支援を継続的に取り組んでいる。研究フィールドは熊本県内にとどまらず、沖縄、岩手、北欧など国内外に広がる。
- 日時: 令和8年1月17日(土)18:00〜20:00 未定
- 場所: 弥富市総合福祉センター 多目的研修室 および オンライン(Zoom)
- 対象: 弥富市民、自治会や防災会の役員、防災ボランティアリーダー、看護師、保健師、介護士、行政職員など、防災に関心のあるすべての方
- 主催:弥富防災・ゼロの会
- 後援:弥富市
- 参加費:無料
【講師紹介】高林 秀明 氏 熊本学園大学 社会福祉学部 教授(社会福祉学部長)
【専門】社会福祉学、地域福祉論
地域に深く入り込み、住民との対話による「くらしの声」の聴き取り(生活実態調査)を長年実践されている社会福祉学の研究者です。
特に災害後の生活問題に関する研究・提言を精力的に行い、熊本地震・熊本豪雨、さらには能登半島地震の被災地で、学生とともに継続的な被災者・被災地支援を展開されています。
災害復興の現場から、「生活問題が生じるメカニズム」を分析し、障がいのある方や高齢者など、誰も置き去りにしないための「普遍主義の社会政策」と「地域によるケアの実践」の必要性を強く訴えています。
【主な研究・活動テーマ】
- 自然災害と社会・人間の脆弱性・被傷性、そしてレジリエンス(回復力)に関する実態調査
- 狭い仮設住宅や「みなし仮設」の生活実態と人権問題
- 障害者・高齢者・子育て家族など、多様な人々の生活問題の構造とその対策体系
- 自治体職員の制度運営の実態とケアの倫理
【近年の主な著書・論考】
- 『災害時代を生きる条件 住民自治・普遍主義・ケア実践』(自治体研究社、2025年)
- 論文「能登半島地震・熊本地震後の実態が求めるものー災害時代こそ普遍主義の社会政策を」(『経済』2025年3月)
- 衆議院予算委員会地方公聴会にて、みなし仮設支援や長期的生活支援について意見陳述(2020年2月)
- NHKクローズアップ現代+、朝日新聞、熊本日日新聞などメディア出演多数。
「誰もが健康で安心して暮らせるまちづくり」のために、現場の声に基づいた貴重な知見をお話しいただきます。
弥富防災・ゼロの会の活動について
私たちは、「海抜ゼロメートル地帯」における自然災害(台風、高潮、地震、津波など)への備えを強化し、災害関連死を含めた死者ゼロの実現を目指しています。この目標達成のため、行政と住民が連携し、日頃からの顔の見える関係づくりを通じて、被害を最小限に抑え、迅速な復興を可能にする地域社会を築くことを使命としています。この使命を果たすため、私たちは21年前に結成されて以来、防災に関心を持つボランティアが、行政や地域の人々、様々な組織・団体と連携し、その繋ぎ役として活動を続けてきました。
当団体の活動は多岐にわたります。
- 地域のリスク理解と関係構築:
- この地域の災害対策や災害リスク(例:排水機場や堤防の状況)を実際に視察し、学習。
- 関連する行政やライフライン、インフラなどの管理担当者との連携を深めてきました。
- 家庭・自治会レベルでの備えの支援:
- 各家庭での防災備蓄や対策の啓発。
- 自治会が実施する防災会活動の支援。
- ライフライン途絶時(水など)の応急給水訓練をはじめとする対応策の検討と普及。
- 地域内のネットワーク構築:
- 防災に関わる様々な組織、団体、個人との連携を促進し、地域全体の防災力向上に貢献。
阪神・淡路大震災から30年。中越・東日本・熊本地震、西日本豪雨、そして能登半島地震。日本列島はまさに「災害時代」の真ん中にある。
阪神・淡路大震災から30年。中越・東日本・熊本地震、西日本豪雨、そして能登半島地震。日本列島はまさに「災害時代」の真ん中にある。著者は被災地に出かけ、被災者の声を、苦悩の中で生きる声、抵抗の声、人間の声として聴く。そこから、被災者の暮らしと自然、社会、制度、地域との関わりを捉え、災害対応を含む社会制度のあり方を問う。
目次
- はじめに
第1章 能登半島の多重・複合災害が問いかけるもの
第1節 過酷な避難生活
- 1 過酷な避難環境
- 2 在宅避難者
- 3 ビニールハウス避難や車中泊
- 4 避難所の集約・縮小、そして豪雨災害
第2節 仮設住宅の被災者の状況
- 1 建設型仮設の現状
- 2 狭い仮設住宅がさらに狭く
- 3 戸別訪問と交流支援と相談活動
- 4 みなし仮設の現状
第3節 自治の軽視と豪雨災害
- 1 管理されるボランティア
- 2 国主導の復興計画
- 3 自治の視点の乏しさ
- 4 地震想定の矮小化
- 5 復旧・復興途上の9月奥能登豪雨災害
第4節 問われているもの
- 1 生存ライン未満の環境
- 2 自尊・他者尊重の社会的基礎の条件整備の乏しさ
- 3 「分離・自立」から「つながり・相互依存」へ
第2章 住民自治による避難所運営ー熊本地震の実際と教訓
第1節 住民自治の実際
- 1 熊本地震直後
- 2 自治組織の立ち上げ
- 3 班をつくりコミュニケーションができる
- 4 朝夕に手づくりのあたたかい食事を
- 5 救護班の活動、障害のある人や高齢者、乳児などの支援
- 6 物資と食事を地域で配るー避難所は復旧・復興の一つの拠点
第2節 地域復興の拠点としての避難所と併設のボランティアセンター
- 1 避難者の帰宅の手伝いから始まる
- 2 地域のニーズに応える
- 3 サテライトとしての役割ー市災害ボラセンとの連携
- 4 自治会ごとの動きー日頃の活動のあり様が災害時に現れる
第3節 地域福祉の視点からみた避難所運営とその課題
- 1 いのちと暮らしを守る住民自治によって地域の復旧・復興の拠点として
- 2 避難所の集約・閉鎖と今後の課題
- 3 なおも埋もれている課題
第3章 みなし仮設の健康・生活と復興施策の課題
第1節 みなし仮設住民の生活と健康
- 1 みなし仮設とは
- 2 健康の全般的状況
- 3 事例からみたみなし仮設住民の生活と健康
- 4 健康、生活、地域、アイデンティティのトータルな課題
第2節 地域支え合いセンターの役割と課題
- 1 スタッフの量と質
- 2 交流支援の弱さ、自治の視点の欠如
第3節 自治体行政の責任・役割と課題
- 1 地域支え合いセンターの条件整備の問題
- 2 交流支援と自治活動支援の欠如
- 3 硬直的な運用
- 4 延長要件による大量退去
第4節 みなし仮設からみた復興施策の課題
- 1 異質な「空間の質感」への転居という経験
- 2 行政・政治によるみなし仮設の「分離」と「隔離」
- 3 被災者の自治活動への行政・議会の無理解・無関心
- 4 被災者と政治・行政の間の共有できる言葉と舞台の欠如
- 5 異質な二つの領域をつなぐために
第4章 被災者の健康と生活からみる社会保障の問題
第1節 分析視点
- 1 被災者の「生活問題」とは何か
- 2 被災者の生活再建に関する制度
第2節 被災者の健康と受診控え
- 1 被災者の健康状態
- 2 被災者はどのような生活のなかでいかに受診を控えているか
第3節 被災者の暮らしと健康の実態
- 1 被災者の暮らしの面での困りごと・不安
- 2 生計中心者の健康状態
- 3 家計からみる生活実態
- 4 健康保険の種類と負担感
- 5 医療費の窓口負担と受診の状況、免除措置継続の意向
第4節 社会保障と災害救助・生活再建支援の制度の構造的問題
- 1 受診控えによる医療費の切り詰めを強いる構造
- 2 もともと高い保険料と受診控え、特例廃止後に治療中断、減免措置は機能せず
- 3 免除措置復活の運動と限界
- 4 災害時代の制度改革ー選別主義から普遍主義へ
第5章 関係性の断絶と権利としての関係保障の条件整備
第1節 制度による関係性の断絶
- 1 仕事も家もペットを失い、住家損壊調査をめぐる奮闘
- 2 高齢夫婦の過酷な避難生活と立ち退きの苦しみ
第2節 ボランティア活動における関係性の断絶と創造ーコロナ禍の熊本豪雨
- 1 発災から2か月間
- 2 9月からの4か月ー避難所から仮設住宅へ
- 3 2021年の5か月間ー第3波・第4波の下
- 4 コロナ禍の災害ボランティアに突きつけられたもの
第3節 関係性の断絶から自尊の社会的基礎の保障を
- 1 主体性の管理、承認の歪み、自尊の毀損
- 2 災害時の承認の秩序、規範的要求の水準
- 3 自尊の社会的基礎である雇用・労働条件と社会制度
- 4 対話・協力の社会的構造と政策的意図
- 5 地域活動・ボランティア活動の管理と権利としての関係保障との違い
第6章 災害時代を生きる条件ー関係保障・普遍主義・ケア実践
第1節 権利としての関係保障の条件整備を
- 1 対話と交流が暮らしと健康を守る
- 2 相互承認と自尊他尊は異なる立場を超えてつながる力/連帯の土台
第2節 社会政策・社会保障を普遍主義に
- 1 社会政策の普遍主義
- 2 災害時代こそ普遍主義を
- 3 選別主義傾向が強い「受け皿」制度の改善は基本的対策の拡充運動と一体的に
- 4 自治体行政、ケースマネジメントは個別支援と社会運動の両輪で
- 5 関係保障と普遍主義の制度の担い手の量・質の確保を
第3節 ケアの倫理を制度・運営の軸に
- 1 被災者の苦悩と倫理の問題
- 2 家父長制規範の濃い行政・制度に欠けるもの
- 3 私たちの社会と道徳性とケアの倫理
- 4 ケアの倫理と実践を制度・運営の論理に
おわりに