防災推進国民大会2024セッション/日本学術会議学術シンポジウム/第19回防災学術連携シンポジウム「土地を知り、土砂災害・地盤災害に備える」
博物館で集めたボーリング資料で探る大阪平野地下の地層と成り立ち
発表者:石井先生(大阪市立自然史博物館)
1. 大阪市立自然史博物館の概要
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所在地と歴史: 大阪市南部の長居公園内にあり、現在の建物になってから50年。5年前から地方独立行政法人化。
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規模と活動: 館長含め学芸員14名、総務10名で運営。収蔵資料は190万点(展示は約6000点)。年間20〜30万人(コロナ前)が来館し、普及行事も年100回以上開催。
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役割: 展示だけでなく、資料収集、調査、研究、普及教育などを行う「機能としての博物館」を目指している。
2. 都市部における地層研究とボーリング標本の活用
地層が見える崖がほとんどない沖積平野の大都市(大阪)において、地下の様子を知るために**ボーリング標本(地質調査用の円柱状の土砂コア)**を活用しています。
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資料の収集: 活断層調査や公共工事の地盤調査で掘られたボーリングコアを収集。地層を専門に扱う学芸員が少ないため、こうした標本を集める自然史系博物館は少数派です。
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データの整理と展示: いただいたデータを整理し、柱状図や地質断面図を作成。特別展(「氷河時代」「大阪アンダーグラウンド」など)で壁一面に地質構造を展示し、気候変動や活断層の解説に活用しています。
3. 学校向け「ボーリング標本貸し出しプログラム」
小中学校の理科の授業(地層や自然災害の単元)向けに、大阪市内の学校へ標本やデータを貸し出しています。
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提供する教材:
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ボーリング標本(青の吹き出し付き)
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学校周辺の地質断面図や、観察ポイントのメモ(先生向け)
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昔の様子を示す布製の掛け図などの補助教材
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あえて「出前授業」を行わない理由: 大阪市は学校数が多く、博物館の本来業務が滞る恐れがあるため。代わりに、子どもたちを一番理解している先生方に地層を学んでもらい、得意になってもらうためのサポートに注力しています。
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教育効果: 「自分の学校の地下の地層」を扱うことで、子どもたちが**「自分ごと」**として興味を持ち、深く学べるという好評を得ています。
4. 地域密着型のデータを用いた防災教育
生活の場の地層を知ることは、そのまま防災教育につながります。
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西淀川区(野里小学校)の例:
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特徴: 海生粘土層(暖かい時代に海で堆積)が連続して見られ、貝殻片などの観察が可能。
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防災の視点: 標高0m地帯であるため津波・高潮リスクがある。地下の「Ma13層」は柔らかく地震の揺れに弱い。上の砂層は液状化しやすい可能性がある。
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上町台地地域(中央高校周辺)の例:
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特徴: 大阪市内では珍しい斜面(坂道)があり、比較的良い地盤。
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防災の視点: 深い地層が傾いたり断ち切られたりしており、街の真ん中にある**「上町断層帯」**が引き起こす地震リスクについて展開できる。
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5. 長期的な視点で見る気候変動
大阪平野には約350万年前からの地層が堆積しており、そこから世界的な気候変動を読み取ることができます。
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過去数千年の短いスパンだけでなく、数十万〜数百万年単位の「気候変動曲線」を見ることで、地球の寒暖サイクルと現在の「地球温暖化」をより長期的な視点から捉え直すきっかけになります。
まとめ
小中学校の教育や防災教育において、「生活の場の地層(地域密着型のデータ)」を扱うことは非常に大きな意味を持ちます。 大阪平野の事例を参考に、各地域でも地域に根ざした地層単元や防災教材の開発を進めることが重要です。