3-1 安全管理・防災教育などの実施状況について PDF
防災訓練・連携に関する提言
~「シナリオなき訓練」と「地域一体型防災」へ~
Ⅰ. 訓練の参加と連携:外部を入れる意義
学校単独の訓練では、「緊張感」も「専門性」も不足していました。外部の目を入れることで質が変わります。
1. 現状と事例分析
外部機関や地域住民と連携した訓練は、実際の震災時に大きな効果を発揮しました。
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【事例:中学生の覚醒】
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「中学生が小学生や幼稚園児をかばって避難した」
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「中学生を中心とした助け合いが見られた」 合同訓練を通じて「自分たちは守られる側ではない」という自覚を持った中学生が、実際の避難でも年少者や高齢者を助ける「戦力」となりました。
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【事例:顔見知りの効果】
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「町内会長のリーダーシップが発揮された」
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「顔見知りであったため、避難場所の変更がスムーズに行えた」 日頃から訓練に参加していた地域住民は、学校の構造や教職員を知っていたため、混乱の中でもスムーズに避難所運営へ移行できました。
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2. 具体的提言
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提言①:「異年齢合同訓練」の常態化 中学校は隣接する小学校・幼稚園・老人施設と合同で避難訓練を行い、中学生に「誰かを助ける」役割を与えてください。これは防災力の向上だけでなく、人間教育としても極めて有効です。
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提言②:「地域住民」を巻き込んだ運営訓練 避難訓練の後半に「避難所設営訓練」を組み込み、地域住民と一緒に受付設置や誘導を行ってください。「顔見知り」になっておくことが、被災時の混乱を防ぐ最大の防御です。
Ⅱ. 訓練内容の改善:「想定外」をつぶす
「放送が入る」「先生がいる」「天気は晴れ」という前提の訓練は、実際の災害では役に立ちませんでした。
1. 現状と事例分析
多くの学校が、「訓練通りにいかなかった」という反省を挙げています。
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【事例:放送なき避難】
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「停電で校内放送が使えず、職員が校舎内を回って指示を出したため時間がかかった」 放送設備に頼り切っていた学校は、停電した瞬間に指揮系統が麻痺しました。
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【事例:住民対応によるパンク】
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「大津波警報で地域住民が殺到し、児童への対応と避難者対応が重なり、職員がパンクした」 訓練では「生徒だけ」を扱っていましたが、本番では「パニックになった住民」が押し寄せ、生徒の点呼や引き渡しが妨害されました。
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【事例:動き封じ】
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「机の下に隠れる指導をしていたが、揺れが激しすぎて身体を隠すことすらできなかった」 激震時は「動けない」ことが判明しました。机の下に入ることに固執せず、「その場で頭を守る(ダンゴムシのポーズ)」などの柔軟な指導が必要です。
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2. 具体的提言
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提言③:「シナリオ・ブラインド」訓練 「〇月〇日〇時に地震」と予告せず、休み時間や清掃時間、部活動中など「教員がそばにいない」「バラバラにいる」タイミングで抜き打ち訓練を行ってください。
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提言④:「負荷」をかけた訓練 「放送機器が使えない」「校長が出張中」「防火扉が閉まっている」「地域住民が殺到してきた」という「悪条件(負荷)」を設定した訓練を行ってください。
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提言⑤:「引き渡し」の葛藤訓練 「津波警報中に迎えに来た保護者をどう説得するか」という、対人トラブルを想定したロールプレイング訓練を教職員間で行ってください。
Ⅲ. 成功事例の横展開:安否札
コストをかけずに大きな効果を上げた事例があります。
1. 事例分析
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【事例:安否札(無事ですタオル)】
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「地域に配布していた『安否札』が玄関先に掲げられていたことにより、安否確認のために家に入る必要がなくなり、間接的に避難者の命を救うことができた」 一軒一軒チャイムを鳴らして確認することは、確認者(消防団や教職員)を津波や余震の危険に晒します。玄関を見るだけで判断できる仕組みが命を守りました。
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2. 具体的提言
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提言⑥:「無事です表示」の普及 学校区単位で「無事なら黄色いハンカチ(タオル)を出す」といったルールを決め、家庭に配布または周知してください。これは安否確認のスピードを劇的に上げ、捜索者の安全も確保します。
結論
これまでの防災訓練は、いわば**「演劇(セレモニー)」でした。しかし、3.11が求めたのは「即興劇(インプロビゼーション)」**の能力でした。
今後の訓練は、きれいに整列することを目指すのではなく、 「放送が聞こえない時どうするか」 「先生がいない時どうするか」 「知らない大人が助けを求めてきたらどうするか」 を、子供たち自身に考えさせ、失敗させ、学ばせる場に変えていく必要があります。
安全管理・防災教育・訓練に関する提言
~「守られる存在」から「自ら判断し、地域を支える存在」へ~
Ⅰ. 現状分析(データから得られた教訓)
- 「学校避難所」という現実: 訓練では「生徒の避難」に終始していたが、実際には地域住民が殺到し、教職員は「避難所運営」と「生徒の安全確保」のダブルパンチで機能不全に陥った。
- 「シナリオ」の限界: 「授業中・担任在室・放送あり」という好条件の訓練しかしておらず、「休み時間・担任不在・停電(放送不能)・雪」といった悪条件への応用が利かなかった。
- 「共助」の可能性: 中学生が小学生を誘導したり、避難所で活動したりする事例が見られ、防災教育が「生徒を戦力化」する上で有効であることが証明された。
Ⅱ. 具体的提言
提言1:【訓練内容】「シナリオ・レス(想定なし)」訓練の導入
「いつ逃げるか」を教員や生徒に予告しない訓練へシフトする必要があります。
- 「ブラインド型」訓練の実施:
- 日時を予告せず、休み時間や清掃時間、部活動中など、教員がそばにいない状況で緊急地震速報を鳴らす訓練を行う。
- 「悪条件」の付加:
- 「放送機器が壊れた」想定で、ハンドマイクや肉声での伝達リレーを行う訓練や、防火扉が閉まった状態、積雪時の避難ルート確認など、負荷をかけた訓練を定例化する。
- 「事後対応」までの拡張:
- 「逃げて終わり」ではなく、「逃げた後、半数の生徒が帰宅困難になった」という想定で、備蓄品の配布やトイレ設置、寝床の確保までをシミュレーションする。
提言2:【地域連携】「避難所運営」を含めた合同訓練
学校単独の訓練から、地域ぐるみの訓練へ転換します。
- 「住民受け入れ」シミュレーション:
- 避難訓練の後半に、町内会や保護者に「避難者役」として参加してもらい、受付、誘導、エリア分け(生徒ゾーンと住民ゾーンの区分け)を教職員と住民が協働で行う訓練を実施する。
- 「顔の見える関係」の構築:
- データにあった「安否札」の配布や、中学生と高齢者の交流など、平時からのつながりを強化する。顔見知りであれば、有事の際に住民が「お客様」ではなく「協力者」になってくれる。
提言3:【教育】「主体性」と「共助」の育成
「先生の言うことを聞く」教育から、「自分で判断して逃げる」教育への転換です。
- 「小中合同」避難の制度化:
- 中学生には「自分の命を守る」だけでなく、「小学生や園児の手を引いて逃げる」役割を与える。これにより、年長者の自覚(リーダーシップ)と、年少者の安心感を同時に醸成する。
- 「てんでんこ」のアップデート:
- 登下校中や休日など、大人がいない状況での判断基準(橋を渡るか戻るか、どの建物に逃げるか)を、ハザードマップを見ながら生徒自身に考えさせる「図上訓練(DIG)」を授業に取り入れる。
提言4:【引き渡し】「訓練」と「ルール」の厳格化
訓練していないことは、本番では絶対にできません。
- 「引き渡し訓練」の全校実施:
- 年1回は必ず保護者参加の引き渡し訓練を行う。その際、「メールが届かない」想定で行い、アナログな名簿確認やドライブスルー方式などの手順を確認する。
- 「引き渡し拒否」の周知:
- 「警報発令中は、たとえ保護者が来ても引き渡さない(保護者も校内に留め置く)」というルールを、年度初めの保護者会で徹底周知し、同意を得ておく。
Ⅲ. 結論
これからの防災教育・訓練のキーワードは、**「脱・予定調和」と「学校の避難所化」**です。
「訓練通りに動けば助かる」のではなく、**「訓練以上のことが起きても、自分で考えて動ける」**生徒を育てること。そして、学校が地域コミュニティの核として、住民と共に災害を乗り越える体制を作ること。この2点が、東日本大震災のデータが指し示す未来への道標です。
(以下「平成23年度 東日本大震災における学校等の対応等に関する調査報告書 平成24年3月 文部科学省」の要約)
- 安全管理・防災教育などの実施状況について
3-1 各学校等での避難訓練の実施状況
(1) 避難訓練の種類(問15)
質問事項: どのような災害を想定して避難訓練を行っていましたか?
圧倒的に多い「防犯訓練」に加え、地域特性(火山、原発)に合わせた訓練も行われていました。
- 地震・火災: 地震、火災などの複合訓練。
- 防犯・安全: 不審者対策訓練、防犯訓練 (492件)。
- 引き渡し: 保護者への引き渡し訓練。
- 特殊災害:
- 火山対策訓練 (7件)
- 原発事故対策訓練 (4件)
(2) 地震に対する避難訓練での重点内容(SQ15-1)
質問事項: 震災前、地震訓練においてどのような内容に重点を置いていましたか?
「身を守る(一次避難)」と「ルールの徹底」が中心でした。
【初期行動・身の安全確保】
- 一次避難: 揺れに対する初期避難行動を重視。
- 落下物対応: 机の下に入る、落下物を回避して身を守る。
- 基本動作: 「あわてないで、自分の身を守る」。
【避難行動のルール・徹底】
- 「お・か・し・も」の徹底: 「押さない・駆けない・静かに・戻らない」の約束のもと、一次避難から二次避難(戸外)への誘導を円滑に行う。
- 情報収集: 放送や担任の指示を絶対聞き逃さない、情報をよく聞く。
- 冷静さ: 落ち着いて安全に、かつ速やかに避難する。
【状況に応じた判断・教職員の動き】
- シナリオ別対応:
- 火災発生時の対応。
- 停電で放送が使えない時の避難方法。
- 被害状況によって変わる避難ルートの確認。
- 教職員の役割: 避難誘導、施設点検、安否確認、点呼の仕方。
- 引き渡し: 保護者への確実な引き渡し、緊急時の連絡。
(3) 津波に対する避難訓練での重点内容(SQ15-2)
質問事項: 震災前、津波訓練においてどのような内容に重点を置いていましたか?
「てんでんこ(各自避難)」の意識付けや、具体的な場所・時間を想定した実践的な訓練が行われていました。
【避難の原則・意識啓発】
- 基本原則: 津波の怖さを知らせ、海から離れて素早く高台へ逃げる。
- 「津波てんでんこ」: 自宅や地域にいた時でも、各自が判断して逃げる方法を指導。
- 家庭・地域での対応:
- 学校は高台にあるため、家庭や休日(遊泳中など)の避難方法を指導。
- 津波警報が出た場合、どこに逃げるか一人一人に考えさせる。
【具体的シミュレーション・実地訓練】
- 場所の確認:
- 市指定第一避難場所への迅速な避難。
- 地域と連携した学校独自の避難場所(高台の民有地など)の設定。
- 公民館前の高台や、公民館屋上への避難体験。
- 登下校中の想定:
- 橋の通過判断: 「橋を渡る前なら学校に戻る」「渡った後なら内陸側の道路へ逃げる」といった具体的な判断基準の指導。
- 近くの安全な高台への避難。
- 時間・持ち物:
- 地震発生から津波注意報、二次避難までの時間を計測。
- 必要な持ち物(ラジオ、防寒着、USB、名簿など)をみんなで考える。
【連携・体制】
- 合同訓練: 幼稚園・小学校・中学校が合同で避難計画や訓練を実施(小中共有の校庭からさらに高台へ)。
- 要援護者: 災害弱者への支援。
まとめと分析
今回のデータ(3-1前半)と、前回整理したデータ(3-1後半:訓練の成果と課題)を合わせると、以下のことが見えてきます。
- 津波訓練の具体性: 地震訓練が「型(机の下)」中心であるのに対し、津波訓練は「橋の手前か奥か」「15分以内」など、具体的でシビアな判断を求めていた学校があり、これらが実際の生還につながったと考えられます。
- 「てんでんこ」の重要性: 学校管理下だけでなく、「休日」や「登下校中」を想定した指導が行われていたことは、今回のような広域災害において極めて重要でした。
- 防犯訓練の多さ: 日常的には「不審者訓練(492件)」が多く行われていますが、今回のような未曾有の災害時には、それとは異なる「災害特有の動き(集団行動だけでなく個別の判断)」も必要とされることが浮き彫りになりました。
3-1 (4) & (5) 避難訓練への参加・連携と震災時の効果
(4) 避難訓練の参加団体
質問事項: 地震に対する避難訓練では、どのような人や団体が参加していましたか?(その他の回答)
行政や消防だけでなく、インフラ企業や近隣施設とも連携していました。
- 行政・公的機関: 町役場、県 (20件)、消防設備点検業者、防災関連事業者 (8件)。
- 学校関係・保護者: 併設する学校、学童保育所、児童館、PTA会員、スクールサポーター。
- 地域・近隣: 町内会、隣接する施設の職員・利用者、近隣の教育施設(図書館等)。
- 企業・専門機関:
- NHK職員(緊急地震速報を用いた訓練)。
- NTT、日本赤十字社。
(5) 地域住民・組織と連携したことによる効果
質問事項: 事前の連携訓練により、震災当日に具体的に効果が発揮された点は?
「専門家による質の向上」と「顔の見える関係によるスムーズな運営」が、混乱を防ぐ鍵となりました。
【1. 専門性の向上と意識付け】
消防署や専門業者が入ることで、訓練の質が上がり、生徒・職員の意識が変わりました。
- 緊張感と意識: 外部指導が入ることで訓練に「緊張感」が生まれ、生徒の防災意識が高まった。
- 具体的スキルの獲得:
- 煙体験(煙の恐ろしさの理解)、消火器操作。
- 避難経路確保のための「窓や扉の開閉」などの具体的指導。
- 教職員の指導力向上: 専門的な助言により、避難誘導の問題点が改善され、当日のパニック防止につながった。
【2. 「共助」の発生(中学生の活躍)】
幼・小・中の合同訓練を行っていたことで、中学生が「守られる側」から「守る側」へシフトしました。
- 年少者・弱者の保護:
- 中学生が小学生や幼稚園児をかばって避難した。
- 地域の高齢者(老人福祉施設入居者)への支援活動を行いながら避難した。
- 避難所での活動:
- 生徒が自主的に物資運搬や、プールからのトイレ用水くみを行った。
- 中学生を中心とした助け合いが見られた。
【3. 避難所運営・地域の安全】
日頃から「顔見知り」であったことが、避難所運営の初動を決定づけました。
- 運営の円滑化:
- 町内会主導での立ち上げ訓練経験が、当日の運営に役立った。
- 町内会長のリーダーシップが発揮された。
- 顔見知りであったため、避難場所の変更(体育館→校舎2・3階)がスムーズに行えた。
- 資機材の提供: 発電機や仮設トイレなど、地域の備蓄資材が提供され、夜間の安全が確保された。
- 地域知識: 地域の津波被害の歴史や地形の特徴など、地元ならではの知識を教わっていたことが役立った。
【4. 引き渡し・誘導の成功】
- 引き渡しの円滑化: 訓練に引き渡しを組み込んでいたため、保護者の迎えや職員の対応が混乱なく行えた。
- 地域住民による誘導:
- 公園で遊んでいた児童に対し、地域の方々が声をかけ、高台の民有地(訓練で設定していた場所)へ誘導してくれた。
- 学童保育指導員も連携して保護にあたった。
【5. 具体的な成功事例:安否札】
- 「安否札」の効果: 地域に1,000枚配布していた「安否札(無事です等の表示)」が玄関先に掲げられていたことにより、安否確認のために家に入る必要がなくなり、間接的に避難者の命を救うことができた。
【その他】
- 今回の震災に際しては、効果がほとんど無かったという意見もあり。
まとめと分析(読み取り)
このセクションは、**「防災訓練は学校だけで完結させてはいけない」**という強いメッセージを含んでいます。
- 「中学生」の戦力化: 合同訓練を通じて「年下の子を守る」という役割意識を持たせたことが、実際の災害時に中学生を立派な「救援者」に変えました。
- 「顔の見える関係」の実利: 「顔見知りだから指示が通る」「顔見知りだから資材を貸してくれる」という、マニュアルを超えた人間関係のインフラが、避難所運営の危機を救いました。
- 「安否札」という発明: 「逃げ遅れ」の大きな原因となる「近所の人の安否確認」を、札一枚で解決し、確認者の命を守った事例は、即効性のある防災対策として注目に値します。
3-1 (6) & (7) 避難訓練の検証:成果と課題
(6) 避難訓練が今回の震災に活かされた点(成果)
質問事項: 事前の避難訓練は、今回の震災において、どのような点で活かされたと考えますか?
「基本動作の徹底」と「自主的な判断力」、そして「地域との絆」が成果として挙がっています。
- 自律的な判断と行動:
- 訓練の成果で、うろたえずに避難手順を踏めた。
- 全体への指示がなくても、各教員が適切に判断し対応できた。
- 学校外(下校中など)でも、生徒が自主的に高台へ避難するなど安全確保ができた。
- 生徒間の共助:
- 下校途中の小学生を、本校生徒(中高生等)が校庭に誘導した。
- 地域との連携:
- 避難所開設や運営に地域の方がいち早く着手し、共同運営体制がとれた。
- 前回の地震の教訓が地域に受け継がれており、住民との協力で混乱が少なかった。
(7) 事前の訓練が今回の震災において活かされなかった点(課題)
質問事項: 事前の避難訓練が今回の震災において活かされなかった点などがあればご記入下さい。
「マニュアルの想定」と「現実の災害」との間に生じた巨大なギャップが、多くの反省点として挙げられています。
(1) マニュアル整備・想定の限界
- 想定外の規模とパニック: 揺れが激しすぎたり、想定外のことが多すぎてパニックになり、訓練通りにいかなかった。
- 気象条件: 「雪が降った場合」の対応が決まっていなかった。
- 状況判断の難しさ: マニュアルの「室内待機」が本当に安全か迷う場面があった。現場での即時判断の難しさを痛感した。
- 津波未対応: 避難訓練が津波対応になっていなかった。
(2) 初期対応
- 身動きが取れない: 机の下に隠れる指導をしていたが、揺れが激しすぎて身体を隠すことすらできなかった。
(3) 二次対応(避難行動)
- 情報遮断と判断: 大津波到達時刻や規模の情報が入らず、「さらに高台へ逃げるか」の判断に困った。
- 通信手段の喪失: 停電で校内放送が使えず、職員が校舎内を回って指示を出したため時間がかかった。
- 三次避難の欠如: 指定避難所(学校)が危険になった場合の「三次避難場所」を想定していなかった。
(4) 学校管理下の状況別対応
- 「授業中」以外の想定不足: 訓練は在校時(授業中)が前提だったため、下校後や部活動中(バラバラの場所にいる時)の安否確認や指揮命令系統に混乱が生じた。
- 情報収集手段の喪失: 余震が収まり始めた頃からの情報収集・伝達手段が失われた。
(5) 校内体制・地域住民対応(最大のボトルネック)
- 住民対応による機能不全:
- 大津波警報で地域住民が殺到し、「児童への対応」と「避難者対応」が重なり、職員がパンクした。
- 学校周辺の水没、600人超の避難者対応、市からの応援なしという状況下で、意識の低い地域(受け身)に対し、学校側が全て運営しなければならなかった。
- 人員不足: 休暇中の教員や不在者がおり、予定していた役割分担が機能しなかった。
- 連携不足: 関係機関(消防・教委・児童館)や地域との連携訓練が不足していた。
(6) 引き渡しと待機
- ルールの不徹底:
- 「警報中は引き渡ししない」と事前に伝えておらず、保護者の強い要望に押し切られたり、判断に迷ったりした。
- 避難してきた地域住民への対応と、児童の引き渡しが重なり大混乱した。
- 連絡不能: 通信手段が全滅し、保護者と連絡が取れず、安否確認や帰宅確認に時間がかかった。
(7) 物品・備蓄など
- 停電対策不足: 停電時の連絡方法、情報収集手段(防災無線など)が使えず苦戦した。
- 物資不足: 食料、毛布の不足。ガソリン枯渇による巡回不能。
- 避難所設営: 具体的な避難所開設訓練を行っていなかった。
(8) 教職員研修
- 柔軟性の不足: パニックによる指示徹底不足や、靴の履き替えなどの些細な判断で避難に遅れが生じた。
読み取りと分析(提言に向けた視点)
このセクションのデータは、学校防災の構造的な課題を浮き彫りにしています。
- 「学校=避難所」という現実への未対応: 訓練では「児童生徒の避難」に集中していましたが、現実は**「地域住民の避難所運営」**がいきなり降りかかり、それによって児童生徒のケア(引き渡し・安否確認)が圧迫されました。
- 今後の課題: 「地域住民を受け入れながら、生徒を守る」というマルチタスク訓練が必要です。
- 「不在時・下校時」の脆弱性: 「全員が教室にいる」という一番管理しやすい時間帯の訓練ばかりで、「バラバラにいる時」「先生が少ない時」の訓練が不足していました。
- 「引き渡し」のルール崩壊: ここでもやはり、「警報中の引き渡し」が混乱の元凶となっています。