1-1地震による被害状況と対応について PDF
地震被害分析に基づく学校安全対策への提言
~事例が教える「屋内・屋外・通学路」の死角~
Ⅰ. 屋内・教室:「転倒・落下」の排除
授業中や避難行動中に、身近な備品が児童生徒を傷つけました。「机の下に隠れる」だけでは防げない被害への対策が必要です。
提言1:大型備品の「固定」と「配置見直し」
オルガンや掃除用具入れなどの「背の高い・重い備品」は、転倒防止措置を徹底するか、児童生徒の動線から隔離する必要があります。
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【事例からの教訓】
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「教室のオルガンが転倒し、1年生男児が左足人差し指を挟む(爪剥離および骨折)」(小学校)
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「机の下に避難中、近くのオルガンが倒れて腕を骨折」(小学校)
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「転倒した掃除用具入れが足に当たり負傷」(高校)
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対策: オルガン、テレビ台、ロッカー、掃除用具入れは壁に固定する。特に低学年教室では、地震時にこれらが「凶器」にならない配置を徹底する。
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Ⅱ. 体育館:「非構造部材」の緊急点検
「広くて安全」と思われがちな体育館ですが、天井や照明、軒天(のきてん)などの落下被害が多発しました。特に「避難出口」での負傷は致命的です。
提言2:避難口周辺と天井の耐震化
卒業式シーズンなど、多くの生徒が集まる場所での被害は、集団災害に直結します。
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【事例からの教訓】
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「非常口から避難する際、体育館の軒天(のきてん)が落下し、背中や肩に直撃。生徒14名が負傷(うち1名は鎖骨にひびが入る重傷)」(中学校)
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「パイプ椅子の下に身を隠していた際、落下物により頭部を負傷」(小学校)
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「天井からの落下物により肩を骨折」(高校)
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対策: 体育館の「吊り天井」「照明器具」「バスケットゴール」の落下防止対策を行う。特に、避難しようとして殺到する**「非常口の上部(外壁・軒)」**の老朽化・耐震性は最優先で点検する。
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Ⅲ. 屋外・通学路:「ブロック塀」と「水辺」の罠
通学路や校地境界にある「ブロック塀」は、地震時に倒壊し、逃げようとする児童を襲いました。
提言3:ブロック塀の撤去・改修とハザードマップの拡大
学校敷地内だけでなく、通学路の危険箇所を洗い出し、改修または「通行禁止」にする必要があります。
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【事例からの教訓】
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「下校中、倒壊したブロック塀により腕を複雑骨折」(小学校)
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「門柱、記念碑(二宮尊徳像等)の倒壊・損壊(17件)」(全体)
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対策: 校地内のブロック塀は、生垣やフェンスへ切り替える。通学路上の古いブロック塀については、自治体や所有者へ働きかけを行う。
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提言4:想定外の「水害」リスクの周知
津波だけでなく、内陸部でもため池の決壊などの水害が発生しています。
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【事例からの教訓】
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「避難途中、農業用ため池が決壊し、濁流に飲み込まれ水死」(小学校・学校管理外)
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対策: 海沿いだけでなく、内陸部であっても「ため池」「ダム」「老朽化した水路」の下流地域はハザードマップで危険性を確認し、地震発生時には近づかないよう指導する。
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Ⅳ. ライフライン・施設:「インフラ途絶」への備え
建物の倒壊は免れても、ライフラインの寸断が学校機能を麻痺させました。
提言5:ライフライン独立性の確保
インフラ全滅を前提とした備えが必要です。
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【事例からの教訓】
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「水道、電気、通信、ガス、下水道、給水槽、浄水層等の損壊(44件)」
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「ネットワーク線の切断による通信不能」
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「プール損壊(27件)」
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対策: 通信不能(44件の損壊に含まれる)に備え、衛星電話や特設公衆電話(赤電話)を確保する。プールの水は「防火・生活用水」として重要だが、損壊リスクが高いため(27件)、それに頼らない水の備蓄(受水槽の耐震化など)を進める。
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Ⅴ. 結論
被害状況データは、**「こどもたちは『机の下』や『出口』など、教えられた通りに動こうとして、そこで傷ついた」**ことを示しています。
こどもたちの避難行動を正解にするためには、
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教室内の大型備品を固定する
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体育館の天井・非常口の安全を確保する
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通学路のブロック塀を撤去する
この3点のハード対策が急務です。「想定内」の揺れであっても、これらが未対策であれば凶器となります。
(以下 東日本大震災における学校等の対応等に関する調査 報告書の要約)
第1章 地震による被害状況と対応について
東日本大震災における被害状況報告
- 地震による人的被害
質問事項: 児童生徒等はどのような状況で被害(死傷・行方不明)を受けましたか?
【小学校】
- 一次避難中
- 教室のオルガンが転倒し、1年生男児が左足人差し指を挟む(爪剥離および骨折)。
- 授業中
- 机の下に避難中、近くのオルガンが倒れて腕を骨折。
- 体育館活動中
- パイプ椅子の下に身を隠していた際、落下物により頭部を負傷(2針縫合)。
- 下校中
- 倒壊した壁により負傷。
- 倒壊したブロック塀により腕を複雑骨折。
【中学校】
- 卒業式準備中
- 体育館ギャラリーにいた生徒が、揺れにより頭を壁に強打。
- 卒業式練習中
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- 非常口から避難する際、体育館の軒天(のきてん)が落下し、背中や肩に直撃。
- 被害規模: 生徒14名が負傷(うち1名は鎖骨にひびが入る重傷、他は打撲)。
【高等学校】
- 地震発生時
- 転倒した掃除用具入れが足に当たり負傷。
- 部活動中
- 町の体育館にて、天井からの落下物により肩を骨折。
【学校管理外】
- 自宅待機中
- 家庭学習日であったため、自宅にて被災(高校)。
- 避難途中
- 農業用ため池が決壊し、濁流に飲み込まれ水死(小学校)。
- 地震による物的被害
質問事項: 3月11日の地震によって、どのような物的被害を受けましたか?
【施設・設備の損壊】
| 被害箇所 | 内容・件数 |
| ライフライン | 水道、電気、通信、ガス、下水道、給水槽、浄水層等の損壊 (44件) |
| プール | 損壊 (27件) |
| 建物本体 | 教室等の壁面の亀裂など (17件) |
| 外構・工作物 | 門柱、記念碑(二宮尊徳像等)の倒壊・損壊 (17件) |
| 塀など | ブロック塀等の倒壊、亀裂など (7件) |
| 地盤・地面 | 外部手洗い場の沈下(5~10cm)、インターロッキング破損(約1㎡)、コンクリート製滑り台の中心部・土台の亀裂、校外ボート部用艇庫の全壊(海沿い) |
| その他施設 | 幼児館・物置の損壊、トイレの破損、玄関ドア・ホール蛍光灯の歪み |
【備品・教材等の被害】
- 物品 (12件): 教材、実験機器、図書、食器等の破損。
- 設備: 暖房設備・機器の破損、廊下ロッカー転倒によるガラス破損、遊戯室の窓枠外れ、運動場の夜間照明ランプ切れ(3カ所)。
- 個人・事務: 教職員の自家用車・所有物の流失・破損、職員室内の書類流失。
- 通信: ネットワーク線の切断による通信不能。
【環境・放射能関連】
- 原発事故による放射能対応。
- 建物や花壇の放射線による汚染。
- 放射性物質の降下による校地内の放射線量の上昇。
【通学路・周辺環境】
- 地下通学路の被害。
- 外周道路の亀裂、隣接道路の護岸ブロック亀裂。
- 通学路(橋)の変更、通用道路(市道)の崩落。