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避難所運営の適正化に関する提言
~「教職員の自己犠牲」に依存しない、持続可能な運営体制へ~
第1章:運営体制の「権限委譲」と「役割分担」
【教訓】教職員は「何でも屋」ではない。初期対応後の「出口戦略」が必要。
1. 事例分析
発災直後、行政職員が到着できない空白期間、教職員は「管理者」ではなく「便利屋」として奔走し、心身を消耗しました。
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【事例:過剰な業務負担】
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「トイレ用の水の運搬(プールからの水汲み・くみ置き)(24件)」
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「ゴミの処理(焼却)」
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「苦情処理(59件)」 断水したトイレのためにプールの水をバケツリレーで運ぶ重労働や、避難者の不満の防波堤となる業務が、教職員を疲弊させました。
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【事例:成功したバトンタッチ】
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「連合町内会が中心となって避難所が運営された」
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「最初は管理職がリードしたが、教室ごとに自治を図り、地域からの協力体制が得られた」 日頃から地域と連携していた学校では、早期に住民自治組織へ運営を移行でき、教職員の負担が軽減されました。
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2. 具体的提言
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提言①:「運営主体」の明確化と移行ルール 「発災後〇時間は学校が鍵を開けて対応するが、その後は地域住民(自主防災組織)と行政職員に運営権限を移譲する」というタイムラインを協定で結んでください。
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提言②:教職員の業務は「施設管理」に限定 教職員の役割を「学校設備の操作(電気・水道・鍵)」と「立入禁止エリアの管理」に限定し、炊き出し、清掃、受付は住民組織が行うようマニュアル化してください。
第2章:ライフラインの「自律確保」(トイレと熱源)
【教訓】「食べる」ことより「出す」ことと「暖まる」ことが深刻だった。
1. 事例分析
食料不足(68件)に対し、トイレ問題(220件)と電力・暖房問題(160件)が圧倒的に多く報告されています。
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【事例:トイレの崩壊】
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「トイレ(水を運ぶ必要が出た、下水道破損、仮設トイレ設置の必要)」(220件)
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「トイレの数が少なく、仮設トイレが来ても臭い等がとれなかった」 下水道が破損した状態で水洗トイレを使い続け、衛生環境が極端に悪化しました。
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【事例:凍える避難所】
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「電気が使えなかった(暖房器具が使用不能)」(160件)
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「ガソリン、灯油の不足」(43件)
停電によりエアコンやファンヒーターが停止し、石油ストーブや灯油がない学校では、避難者が寒さに震える事態となりました。
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2. 具体的提言
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提言③:「トイレ・レジリエンス」の強化 「マンホールトイレ」の設置準備や、プール水を電動で汲み上げる「ポータブル発電機付きポンプ」、そして「凝固剤入り簡易トイレ」の大量備蓄を最優先してください。
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提言④:「熱源」の確保 寒冷地や冬期災害に備え、「反射式石油ストーブ(電源不要)」と「灯油」を備蓄リストの必須項目に入れてください。
第3章:教職員の「被災者権」とメンタルヘルス
【教訓】教職員もまた、家を流され家族を案じる「被災者」である。
1. 事例分析
「公務員だから」という理由で、教職員の人権や生活が後回しにされました。
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【事例:生活の破綻】
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「教職員の家庭での震災対応が後回しになった(家族の安否確認の遅れ)」
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「自宅の片付けや、自身の食料・飲料水の確保が困難だった」
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「職員が学校から離れられず、体調を崩す職員や家族が多くなった」 自身の生活再建ができないまま24時間体制で働き続け、健康被害(47件)が発生しました。
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【事例:苦情の掃き溜め】
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「避難者同士のトラブルや苦情など、すべて学校職員に持ちこまれた」
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「『運営主体=市』が住民に徹底されず、学校側に要求が集中した」 本来行政に向けるべき要望や怒りが、目の前にいる教職員にぶつけられました。
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2. 具体的提言
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提言⑤:「苦情窓口」の分離 避難所内に「要望・苦情窓口(住民代表または行政職員)」を設置し、教職員が直接苦情を受けないシステムを作ってください。
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提言⑥:「帰宅シフト」の義務化 「教職員も被災者である」ことを明記し、自宅の片付けや家族ケアのために必ず帰宅させるシフト体制(他校からの応援含む)を計画してください。
第4章:学校機能との「ゾーニング」
【教訓】「避難所」と「学校」は、物理的に分けなければ共倒れする。
1. 事例分析
避難生活が長期化するにつれ、教育活動との摩擦が生じました。
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【事例:教育活動の阻害】
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「入試業務、年度末業務に加え、避難所業務が重なり負担増」
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「体育の授業や部活動に支障が出た。卒業式、入学式を体育館で実施できなかった」
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「土足での利用となってしまった(泥・汚れ)」 体育館が占拠され、校舎内も土足で汚れたため、学校再開後も正常な教育活動が困難でした。
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【事例:多様な避難者への対応】
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「喫煙所を作った」
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「ペット同伴避難の問題」
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「車いす利用の方のトイレ不足」 学校は子供向けの施設であるため、高齢者や喫煙者、ペットに対応できる設備がなく、トラブルの原因となりました。
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2. 具体的提言
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提言⑦:厳格な「ゾーニング」 「体育館は避難所」「校舎(教室)は教育の場」と明確に区分けし、原則として教室を避難者の居住スペースとして開放しないルールを徹底してください。
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提言⑧:福祉避難所への移送スキーム バリアフリー非対応の学校で高齢者を介護するのは限界があります。発災後早期に、要配慮者を福祉施設やホテル等へ移送する計画を行政と連携して策定してください。
結論
避難所運営における最大の課題は、**「なし崩し的な教職員依存」**です。
事例が示す通り、日頃から**「地域(町内会・PTA)」や「近隣企業(水産施設など)」**と顔の見える関係を作っていた学校は、物資調達も運営移行もスムーズでした。 「学校は場所を貸すが、運営は地域が行う」。この原則を平時の防災訓練で確立しておくことが、教職員と子供たちの日常を守る唯一の道です。
避難所運営に関する提言
~「教職員の自己犠牲」に依存しない、持続可能な運営体制へ~
Ⅰ. 現状分析(データから得られた教訓)
- 「何でも屋」化による疲弊: 教職員が「トイレの水汲み(24件)」「苦情処理(59件)」「治安維持」「ゴミ焼却」といった業務に殺到され、心身の健康を害し、学校再開準備や自身の家庭再建が後回しになった。
- 「トイレ」という最大の危機: 食料不足よりも「トイレ問題(220件)」が圧倒的多数を占めた。断水時の排泄処理は、衛生環境だけでなく人間の尊厳に関わる問題であり、プールの水汲みという重労働が現場を圧迫した。
- 「主体の不在」が生む混乱: 本来の運営主体である行政と連絡が取れず(孤立)、なし崩し的に学校管理職が責任者となったケースで混乱が長期化した。一方で、地域住民(町内会)が主体となったケースではスムーズに移行できた。
Ⅱ. 具体的提言
提言1:【運営主体】「学校」から「地域」への権限委譲
「学校は場所を貸すだけ。運営は地域が行う」という原則を、平時の協定で確立します。
- 「鍵」の預託と住民による開設:
- 教職員がいなくても避難所を開けるよう、体育館や防災倉庫の鍵を「自主防災組織」や「町内会長」に預けておく。
- 「運営委員会」の事前結成:
- 受付、炊き出し、清掃、トイレ管理などの役割分担を、教職員を含まない「住民組織」で事前に決めておく。教職員の役割は「施設設備の使い方の説明」と「学校エリア(立入禁止区域)の管理」に限定する。
提言2:【インフラ】「水・トイレ・電気」の自律確保
「ライフラインは止まるもの」という前提で、人力に頼らない設備投資を行います。
- 「トイレ・レジリエンス」の強化:
- 断水時でも使える「マンホールトイレ」の設置や、プールの水を電動で汲み上げるポンプ、凝固剤や簡易トイレの大量備蓄を最優先する。
- 「エネルギー」の備蓄:
- 寒冷地や冬期に備え、食料だけでなく「暖房用燃料(灯油・ガソリン)」と、携帯電話充電用の「発電機・蓄電池」を学校防災倉庫の必須品目とする。
提言3:【教職員保護】「被災者としての権利」と「本業」の確保
教職員を「使い潰さない」ためのルール作りが不可欠です。
- 「苦情対応」の分離:
- 避難者からの苦情や要望は、教職員ではなく「避難所運営委員会(住民代表)」が受ける窓口を一本化する。
- 「シフト制」と「帰宅命令」:
- 教職員も被災者である。家族の安否確認や自宅の片付けのために、必ず交代で帰宅できるシフト体制(他校からの応援含む)を事前に計画する。
提言4:【ゾーニング】「教育」と「生活」の分離
学校再開を阻害しないための空間管理が必要です。
- 「居住区」の限定:
- 当初から「体育館は避難所」「校舎(教室)は教育の場」と明確に区分け(ゾーニング)し、原則として教室を避難所として開放しない。開放する場合も、期限を切った一時利用とする。
- 要配慮者への対応:
- 学校はバリアフリー非対応(和式トイレ等)が多いため、高齢者や障害者は早期に福祉避難所へ移送するフローを確立する。
Ⅲ. 結論
東日本大震災のデータが示すのは、「学校(ハード)」は避難所として優秀だが、「教職員(ソフト)」を運営スタッフにしてはいけないという真実です。
これからの学校避難所は、**「地域住民が自分たちの手で開き、運営し、守る場所」**へと変わらなければなりません。教職員が本来の使命である「子供たちの笑顔と教育」を取り戻すために、地域と行政が一体となった「脱・学校依存」の体制づくりが急務です。
(以下「平成23年度 東日本大震災における学校等の対応等に関する調査報告書 平成24年3月 文部科学省」の要約)
- 避難所の運営状況について
(1) 避難所として利用された施設
質問事項: 避難所として利用した施設はどこですか?(その他の回答)
体育館や教室以外にも、敷地内のあらゆるスペースが活用されました。
- 校舎内の共用スペース:
- ホール、多目的ホール、2階遊戯室。
- 保健室、更衣室、給食用配膳室。
- 特別教室・付属施設:
- 格技場、柔剣道場、武道館。
- 寄宿舎の一部、同窓会館、記念館。
- 敷地内・併設施設:
- 校舎内にある生涯学習施設、地域交流センター。
- 校地内にある学童クラブ施設。
- 屋外:
- 校庭、園庭。
(2) 避難所の運営主体
質問事項: 避難所を運営する主体は誰でしたか?(その他の回答)
発災直後は「教職員」が矢面に立ち、時間が経つにつれて「行政(市職員)」や「住民自治会」へ移行、あるいは協力体制へと変化していく様子が見て取れます。
【教職員主導・初期対応】
- 一時的な運営:
- 一晩限りの一時避難所となったため、校長が指示を出して対応した。
- 午後7時頃には解除された、あるいは2日間だけで近隣施設へ移動した。
- 初期対応:
- 3/11は教職員が主体的に準備し、その後、市当局と連絡した。
- 当初は教職員が主体的に運営したが、その後県職員、住民自治組織へ移行した。
【共同運営・協力体制】
- 教職員 + 行政:
- 教職員と市職員が共同して運営した。
- 市職員を本部長とし、教職員が協力する形で運営した。
- 当初から教職員と市職員で運営。
- 教職員 + 住民・自治会:
- 住民と職員とが共同で運営委員会を組織した。
- 当初は学校長と町内会長を中心に動き、その後、市職員と住民自治組織が中心となった。
- 役割分担:
- 体育館(一般避難者)は町職員が、校舎教室(生徒等)は学校職員が運営した。
- 市の避難所職員と、校内の避難所職員(それぞれの責任者として配置)。
【その他】
- 保護者。
- 大学の役員(理事)が常駐し、その指示で動いた(私立等の場合)。
- 津波から逃れることのできた地域住民や職員そのもの。
(3) 教職員が従事した避難所の業務
質問事項: 教職員が主体となって従事した運営業務には、どのようなものがありましたか?
教職員は教育者としての枠を超え、**「ライフライン維持(水・ゴミ)」「治安維持・渉外」「ケア」**など、あらゆる何でも屋として機能しました。
【環境整備・インフラ維持】(肉体労働)
- 衛生・ライフライン:
- トイレ用の水の運搬(プールからの水汲み・くみ置き)。(24件)
- ゴミの処理(焼却)。
- 居住環境:
- 環境整備(テレビ、ストーブ、テーブル、マットの貸与)。
- 給油、ガソリン購入等。
- 使える備品の準備、避難物資の保管。
【生活支援・ケア】
- 物資配布: 食料や燃料等の確保、飲み物やお菓子の配布。
- 弱者支援:
- 病人の病院搬送、高齢者介護。(4件)
- 高齢者および特別支援学校児童の看護。
- 子ども・教育支援:
- 子供たちの預かり(親が動けるように)、遊び場の確保と運営。
- 避難所内の児童生徒の指導と支援、学習支援。
【運営管理・渉外】
- 外部対応:
- 安否確認対応、マスコミ、NPO、議員等への対応。(7件)
- 外部からの問い合わせ対応、ボランティアとの連絡調整。(5件)
- 安全管理: 駐車場の誘導と整理、避難所への誘導。
- 組織連携: 自治組織との協力体制の擁立。
- その他: ペット相談。
まとめと分析
このセクションのデータは、災害時における**「学校の多機能化」と「教職員の過重負担」**を如実に示しています。
- 「水汲み」という重労働: トイレの水確保(プールからのバケツリレー等)が24件も報告されており、断水時の衛生維持が教職員の大きな負担であったことがわかります。
- 「運営主体」の曖昧さ: 本来は行政や地域が担うべき避難所運営を、初期段階では教職員が担わざるを得ず、徐々に引き継いでいく「移行期間」のルール作りが必要であることが示唆されています。
- 「専門スキル」の活用: 子供の預かりや学習支援など、教職員本来のスキルを活かした支援がある一方で、マスコミ対応やペット相談など、専門外の対応にも追われていました。
- 避難所運営に従事した教職員数と課題
(4) 避難所運営に従事した教職員数
質問事項: 運営業務にどれくらいの人数が従事しましたか?(その他の回答)
「全職員」で当たるケースから、管理職のみ、あるいは自治体職員が主導するケースまで様々でした。
- 全職員体制: 一部の教職員を除く全教員。
- シフト制: 7~8名の班編制を行い、ローテーションを組んで対応した。
- 管理職・一部のみ:
- 管理職のみ。(9件)
- 恒常的には従事せず、臨時的に数名が従事。
- 校長と教頭のみ(原発事故による土日限定の避難所など)。
- 外部主導:
- 運営は町や市町村職員が行い、教頭は施設管理のみ関わった。
(5) 教職員が避難所運営に従事したことによる問題・課題
質問事項: 教職員が運営に従事することで生じた問題・課題は?
**「学校業務の遅延」「心身の健康被害」「被災者としての生活破綻」**の三重苦が発生しました。
【心身の健康と負担】
- 健康被害: 教職員の健康問題(47件)。夜間勤務による健康問題。
- 過重労働:
- 24時間体制維持のためのシフト勤務、少人数での夜間宿泊による精神的・肉体的負担。
- 全職員が出勤できない中、出勤できる職員への負担集中。
- メンタルヘルス: 苦情処理(59件)によるストレス。教職員に対する心のケア不足。
【学校業務とのコンフリクト(競合)】
- 本業の遅れ:
- 避難所運営を優先したため、安否確認が遅れた(36件)。
- 入試業務、学年末の校務整理、新学期の準備に支障をきたした。
- 指導不足: 避難所運営に時間を取られ、児童への指導や連絡する時間が減った。
【「被災者」としての生活の犠牲】
- 家庭の犠牲:
- 教職員も被災者だが、家庭のことは後回しになった。
- 自宅の片付けや、自身の食料・飲料水の確保が困難だった。
- ガソリン不足で移動手段がなく、生活に支障をきたした。
【制度・体制の不備】
- 役割の混乱:
- 「運営主体=市」が住民に徹底されず、学校側に要求(苦情)が集中した。
- 設置者(市)と学校管理者(校長)との意思統一が困難。
- 勤務条件: 週休日や時間外勤務の手当、勤務時間外の対応。
(6) 避難所運営を規定したとおり行わなかった理由
質問事項: 規定通りに実施しなかったのは何故ですか? また、どう対応しましたか?
「孤立」と「物資不足」により、マニュアルは無力化し、現場判断で「耐える」しかない状況がありました。
【行政機能の喪失・孤立】
- 連絡途絶:
- 本来の運営主体である市職員と連絡が取れず、職員が到着しなかった。
- 市職員と連絡が取れず孤立したため、学校と地域代表で協議し、その都度対応した。
- 「待ち」の状況:
- 「孤立3日目にボートで避難者約230名が移動させられるまで、じっと耐えている以外に方策がなかった」
【想定を超えた過酷な環境】
- インフラ崩壊:
- 断水や食料枯渇により、少ない人数で運営せざるを得なかった。
- 施設設備の損傷により、設定通りの運営が困難だった。
- 災害用物品が配置されていなかった。
- 複合災害(原発):
- 原発事故による放射線対応の方法が分からず、混乱した。
- 急を要する避難指示によりマニュアル通りに動けなかった。
まとめと分析(読み取り)
このセクションからは、災害時における**「公助(行政支援)の空白期間」を、学校現場の「犠牲(自己犠牲)」**で埋めていた実態が読み取れます。
- 「苦情処理」の重圧: 59件もの苦情処理が報告されています。被災した住民のストレスの矛先が、現場にいる教職員に向かい、それがメンタルヘルスを悪化させました。
- 「二足のわらじ」の限界: 「避難所の管理人」と「学校の先生(安否確認・再開準備)」の両立は物理的に不可能であり、結果としてどちらも中途半端になるか、教職員が倒れるかという状況に陥りました。
- 教職員へのケア不足: 「教職員も被災者である」という当たり前の事実が見過ごされ、自宅の片付けや食料確保すらままならない状況での勤務が強いられました。
- 避難所の運営状況について(課題と不足)
(7) 学校が避難所として利用されたことによる課題
質問事項: 避難所として利用されたことにより、どのような問題が生じましたか?(その他の回答)
教育活動の停止、衛生環境の悪化、そして教職員への過度な負担(苦情対応・家庭犠牲)が三大課題として挙がっています。
【教職員への過重負担・生活破壊】
- 業務の圧迫:
- 避難所運営と学校再建(再開準備)の作業を並行して行い、多忙を極めた。
- 入試業務、年度末・年度初めの業務に加え、避難所業務が重なり負担増となった。
- 職員が学校から離れられず、体調を崩す職員や家族が多くなった。
- 「被災者」としての権利侵害:
- 教職員の家庭での震災対応が後回しになった(家族の安否確認の遅れ)。
- メンタルヘルス・待遇:
- 避難者の苦情等への対応に苦慮した(水、食料等)。
- 避難者同士のトラブルや苦情など、すべて学校職員に持ちこまれた。
- 超過勤務手当の不平等が生じた。
【教育活動・学校行事への支障】
- 授業・行事の制限:
- 体育の授業や部活動に支障が出た。
- 卒業式、入学式を体育館で実施できなかった。
- 授業再開後も避難所として利用され、学校行事等に様々な制限を受けた。
- 環境・治安:
- 不特定多数の人が出入りするため、学校の治安維持が難しい。
- 会議などの開催が制約された。
【施設管理・衛生環境】
- 衛生・汚れ:
- 緊急だったため、土足での利用となってしまった(泥・汚れ)。
- トイレの数が少なく、仮設トイレが来ても臭い等がとれなかった。
- 衛生面の不安。
- ゾーニングの苦悩:
- 通常敷地内は禁煙だが、避難者にそこまで求めることはできず、喫煙所を作った。
- 施設管理上、宿泊を伴い健康面で不安を感じた。
【対人トラブル・物品】
- トラブル:
- 避難者同士のトラブルが生じた。
- ボランティアとのトラブル、報道機関の理不尽な対応に苦慮した。
- 物品の使用:
- 備蓄品以外にも、カーテンや児童用運動着等を使用したが、緊急時につきやむを得ない判断とした。
- 持ち主不明の品物が残った。
(8) 避難所運営に関して、不足・不具合となった施設・設備
質問事項: 不足・不具合等問題となった施設・設備等はありましたか?
食料等の基本物資に加え、「電力容量」や「弱者への配慮(バリアフリー)」、「ペット」の問題が顕在化しました。
【ライフライン・基本物資】
- 物資の不足: 食料品、水、毛布、ガソリン等 (26件)。
- 燃料: ガソリン (7件)。
- 生活家電: テレビ、電子レンジ、照明器具。
【施設インフラ・設備】
- 電力: 電気の容量不足(電子レンジや暖房器具の使用でブレーカーが落ちた)。
- 衛生・生活:
- 入浴施設(お風呂がない)。
- 喫煙場所の確保。
【配慮が必要なスペース・設備】
- 要配慮者・医療:
- 車いす、車いす対応のトイレ、ベッド(高齢者・障害者用)。
- 救護室。
- ペット: 動物等を預かる場所の確保。
まとめと分析(読み取り)
このセクションは、**「善意の限界」と「学校機能とのコンフリクト(衝突)」**を示しています。
- 「何でも屋」の悲鳴: 教職員が、本来業務である教育や入試に加え、**「警備員(治安維持)」「苦情係」「清掃員(トイレ処理)」**まで担わされ、心身の健康を損なった実態があります。
- 「学校再開」との両立不能: 授業が始まっても避難者が体育館にいる状況は、部活動や行事を制限し、生徒の教育環境を悪化させました。「いつまで学校を避難所とするか」という出口戦略の欠如が課題です。
- 「多様なニーズ」への未対応: 学校は健常な児童生徒向けの施設であるため、高齢者(車いす・ベッド)、喫煙者、ペットといった多様な避難者のニーズに対応できる設備(バリアフリー、分煙、飼育スペース)が不足していました。
- 避難所の運営状況について(不足物品・連携効果)
(9) 避難所運営に関して、不足・不具合となった施設・設備の状況
質問事項: 運営に関して不足・不具合等問題となった施設・設備・物資等は?
「トイレ(220件)」と「電気・暖房(160件)」が二大欠乏要素でした。寒冷地・冬期における暖房と燃料の不足は生命に関わる問題でした。
【ライフライン・インフラの途絶】
- トイレ問題(最大の問題):
- 件数:220件(水を運ぶ必要が出た、下水道破損、仮設トイレが必要、トイレットペーパー不足)。
- 電力・通信の喪失:
- 電気が使えなかった(暖房器具、通信器具等が使用不能)。(160件)
- 停電、ライフラインの停止。(84件)
- 発電機の不足、あっても使えなかった。(12件)
- 放送設備: 校内放送等が使えず、情報伝達に支障が出た。
【物資・燃料の不足】
- 食料・水: 水、食糧の不足。(68件)
- 防寒・燃料:
- 毛布等の不足。(50件)
- ガソリン、灯油の不足(暖房や車両用)。(43件)
【要配慮者・その他】
- ペット: ペット同伴避難の問題。(15件)
- バリアフリー: 車いす、車いす利用の方のトイレ不足。
(10) 避難所運営に関して、日頃から連携していた関係機関
質問事項: 日頃、どのような関係機関と連携していましたか?(その他の回答)
行政だけでなく、PTAや町内会、福祉協議会など、多層的なネットワークを持っていました。
- 行政機関: 市役所(総合支所、こども課)、行政センター。
- 地域コミュニティ: 連合町内会、地区長、住民センター、市民センター。
- 学校関連・保護者: PTA会長を中心とした組織(緊急連絡網)、私立幼稚園協会。
- 福祉・防災団体:
- 社会福祉協議会、地域包括支援センター。
- 防災連合会、婦人防火クラブ、指定動員職員。
- 児童生徒の入所施設。
(11) 日頃からの関係機関との連携による具体的な効果
質問事項: 日頃の連携により、震災当日に具体的にどのような効果が発揮されましたか?
「顔の見える関係」が、物資の融通や役割分担をスムーズにし、教職員の負担を軽減しました。
【運営のスムーズな移行・役割分担】
- 主体の移行:
- 連合町内会が中心となって避難所が運営された。
- 区長さんと連絡を密にしていたため、避難所の開設や閉鎖が円滑に進んだ。
- 最初は管理職がリードしたが、教室ごとに自治を図り、地域からの協力体制が得られた。
- 行政との連携:
- 市職員が主体的に行動し、トラブルなく進めることができた。
- 教育委員会と共に、開設や被災者対応に迅速に対応できた。
【物資・インフラの確保】
- 地域からの支援:
- 地域の方から支援物資(毛布、寝具、飲料水)や炊き出しを受けた。
- 近くの水産施設から食料などを頂くことができた。
- 地域が他市と防災協定を結んでいたおかげで、水や米などの必要物資が手に入った。
- 学校間の融通:
- 各学校間でストーブ等の必要物品の貸し借りがスムーズに行えた。
【要配慮者・生徒への効果】
- 生徒の活躍: 防災用品や非常食の提供があったことで、生徒たちが避難所立ち上げに意欲的に取り組めた。
- 弱者支援: 教育委員会と連携し、障害を持った児童生徒の安否確認や避難状況について相互協力できた。
- 教育活動: 避難児童の学習支援に当たることができた。
まとめと分析(読み取り)
このセクションのデータは、「トイレ(衛生)」の重要性と、「ソフト(人間関係)」の強さを対比させています。
- 「トイレ」が最大のボトルネック: 食料(68件)よりもトイレ(220件)の問題が圧倒的に多く報告されています。「食べる」ことよりも「出す」ことの解決が、避難所運営においてはより困難で深刻な課題でした。
- 「地域力」が学校を救う: 日頃から町内会や区長と連携していた学校では、運営をスムーズに住民側へバトンタッチできています。逆に連携がなかった学校では(前のデータにあるように)教職員が疲弊しました。
- 「協定」の実利: 「近くの水産施設」「他市との協定」など、事前の取り決めや近隣企業との関係が、公的支援が届く前の空白期間を埋める物資調達源となりました。
4-1 (12) 関係機関と必要な連携内容
問53:日頃、どのような連携が必要だと考えますか?
現場からの回答は、大きく「モノ・施設の準備(ハード)」と「役割・情報の整理(ソフト)」に分類されます。
【1. 備蓄・施設の事前準備】(ハード面)
「何かが起きてからでは遅い」という痛切な反省から、具体的な物資の管理と施設の確認が求められています。
- マニュアル・施設確認: 避難所開設に伴うマニュアルの周知、施設の確認。(76件)
- 備蓄品の管理: 避難所運営に関わる備蓄品の準備、定期的な補充。(54件)
- 具体的リストの共有:
- 災害担当部局からの物資一覧等の情報提供。
- 必須アイテムの常備・点検: 発電機、ラジオ、懐中電灯、食料、水、薬品、衛生用品、救護用品(軍手・ヘルメット)、防寒具、燃料(ガソリン・石油・薪)、プロパンガス、コンロ等。
【2. 役割分担と責任の明確化】(ソフト面)
「学校=避難所運営者」という既成事実を見直し、行政や地域が主体となる体制づくりが求められています。
- 主体の明確化:
- 「誰が避難所運営の主体か」を明確にし、教職員に過剰な要求をしない。
- 自治体が主に動ける体制づくり。
- 行政区長(代表)等を加えた会議を行い、指示系統を明確にする。
- 設置者を超えた連携: 設置者が異なっても(公立・私立・大学等)、地域の避難所として機能するような検討会の設置。
【3. 情報通信・訓練】
- 通信手段の確保: 連絡先の確認だけでなく、「電話が通じない場合」を想定した専用電話(特設回線・衛星電話等)の設置。
- 合同訓練・説明会:
- 市当局による避難所開設・運営説明会の開催。
- 災害時要援護者施設としての防災訓練、避難所運営訓練の実施。
- 町内会との連絡強化。
まとめと分析(読み取り)
このセクションは、現場の教職員からの**「行政への要望書」**とも読めます。
- 「教職員を守るルール」の希求: 「教職員に過剰な要求をしない」という記述は、今回の震災で教職員がいかに限界まで働かされたかの裏返しであり、次の災害では**「運営主体は行政・地域である」**と明記することを強く求めています。
- 「備蓄」の解像度アップ: 単に「水・食料」だけでなく、「燃料(ガソリン・薪)」「発電機」「軍手」など、避難生活を維持するための具体的なメンテナンス・消耗品リストが挙げられており、より実戦的な準備が求められています。
- 「専用線」の必要性: 一般回線がパンクした経験から、災害時優先電話や専用回線の設置という、インフラレベルでの連携・投資が必要とされています。
全データ整理の完了とご提案
これにて、「4. 避難所の運営状況について」および、これまでご提示いただいた全データの整理が完了いたしました。
- 被害状況(想定外の津波・引き渡しの悲劇)
- 避難行動(マニュアルの限界・自主判断の重要性)
- 安全管理・教育(組織の麻痺・科学的教育の成果)
- 避難所運営(教職員の疲弊・トイレ問題・地域連携)
これらの膨大なデータを踏まえ、**「学校防災の総合提言書(最終まとめ)」**を作成し、プロジェクトの総括といたしましょ