3-2各学校等での防災教育の実施状況について PDFはこちらから
防災教育の高度化に関する提言
~「知識」を「行動」に変え、生徒を「地域の戦力」にするために~
第1章:「自律的判断力」の育成(自助)
【教訓】大人がいない時こそ、教育の真価が問われる
1. 事例分析
震災は、必ずしも授業中に起きるとは限りません。先生や親がそばにいない状況で、子供たちがどう動いたかが生死を分けました。
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【事例:顧問不在の部活動】
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「部活動中(顧問不在):顧問が離席していたが、従前の指導通り、生徒が自主的に判断し避難集合した」 教師の指示を待つのではなく、自分たちで危険を感じて避難行動に移れたのは、日頃の指導が浸透していた証拠です。
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【事例:下校中のとっさの判断】
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「下校中:落下物を避け、道路の端にしゃがみ身を守った」
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「机の下に潜り、頭部を保護する行動がとれた」 これらの「基本動作」は、恐怖でパニックになる状況下でも、身体が覚えているレベルまで反復訓練していたからこそ実践できました。
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2. 具体的提言
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提言①:「大人のいない」シミュレーション教育 「登下校中」「留守番中」「部活の休憩中」など、大人がいない状況を想定したディスカッション(危険予知トレーニング)や訓練をカリキュラムに組み込んでください。
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提言②:「反射神経」を作る反復訓練 「地震だ!」の声で即座にダンゴムシのポーズ(頭を守る)が取れるよう、理屈抜きの反復練習(ショート訓練)を日常的に行ってください。
第2章:「中高生の戦力化」とリーダーシップ(共助)
【教訓】中高生は「子供」ではない。「若き防災リーダー」である。
1. 事例分析
中学生や高校生が、自分より弱い存在(小学生・高齢者)を守り、避難所の運営を支えた事例が多数報告されています。
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【事例:弱者を守る盾となる】
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「中2・中3の男子生徒が、下級生や女子生徒を守ろうと行動した」
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「高学年児童が低学年児童をいたわりながら避難した」
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「お年寄りと共に高台や学校へ避難した」 これらは単なる優しさではなく、「自分たちは動ける」という効力感と責任感の表れです。
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【事例:避難所運営の主力】
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「中学生が各避難所で、水くみやトイレ清掃などを率先して行った」 大人が疲弊し、行政の手が回らない中、中学生が嫌がる仕事(トイレ掃除など)を率先して行ったことは、避難所の衛生と秩序維持に決定的な役割を果たしました。
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2. 具体的提言
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提言③:「守る側」への意識改革プログラム 中学生に対し、「プチレスキュー講座」や「下級生の避難誘導係」などの役割を与えてください。「守られる客」から「地域を守るキャスト」へとアイデンティティを変える教育が有効です。
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提言④:避難所運営スキルの習得 避難所設営訓練に中高生を参加させ、受付、配給、簡易トイレの組み立てなどを「大人のパートナー」として担当させてください。
第3章:「サバイバルスキル」の実践教育
【教訓】「生き延びる技術」を知っているかどうかが、避難生活の質を決める
1. 事例分析
座学(知識)だけでなく、手を動かす「実技」を学んでいた学校では、その経験が直接的に役立ちました。
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【事例:生活・運営スキルの実践】
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「サバイバル飯の調理実習」
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「避難所の設営と運営」
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「AEDの使い方講習、応急処置」 電気やガスが止まった時、どうやって温かい食事を作るか。怪我人をどう手当てするか。これらの「野外活動スキル」とも言える教育が、過酷な避難生活を支える土台となりました。
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【事例:着衣泳(ちゃくいえい)】
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「着衣泳の指導」 津波や水害を想定し、服を着たまま水に浮く訓練を行っていたことは、想定外の浸水時における生存率を高めるための極めて実践的な備えでした。
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2. 具体的提言
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提言⑤:「生活科・家庭科」等の防災化 家庭科で「ポリ袋を使った炊飯(サバイバル飯)」、体育で「着衣泳」「負傷者の搬送法」、理科で「濾過(ろか)装置作り」など、既存教科の中にサバイバル要素を組み込んでください。
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提言⑥:「心の教育」とボランティア
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「被災地への励ましのメッセージ郵送(心の教育)」
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「海岸被災地へのボランティア支援」 防災教育の一環としてボランティア活動を推奨し、「困っている人を助ける喜び」を体験させてください。これが有事の際の献身的な行動につながります。
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結論
データが示すのは、**「防災教育は、テストの点を取るためのものではなく、命を使いこなすためのもの」**だということです。
これからの学校防災は、
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**「先生がいなくても逃げられる」**自律性
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**「人を助けることができる」**リーダーシップ
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**「不便な環境でも生活を作れる」**サバイバル能力
この3つを育てる**「生きる力の実践道場」**へと進化させるべきです。
防災教育に関する提言
~「生き抜くスキル」と「他者を助ける心」を育む~
Ⅰ. 現状分析(データから得られた教訓)
- 教育の「実戦証明」: 「顧問不在の部活動中」や「下校中」であっても、教えられた通りに身を守り、高台へ逃げた事例は、平時の教育がパニック下でも機能したことを証明している。
- 「共助」の芽生え: 中高生が自発的にトイレ掃除、水くみ、高齢者の避難誘導を行った。これは「避難訓練」だけでは育たない、「社会性・奉仕精神」の教育成果である。
- 「生活スキル」の重要性: 「サバイバル飯」や「着衣泳」など、具体的な生存技術を学んでいたことが、非常時の冷静さや適応力につながった。
Ⅱ. 具体的提言
提言1:【カリキュラム】「貢献」をテーマにした防災教育
中高生に対しては、「どう逃げるか」だけでなく「どう助けるか」を教える段階へ移行すべきです。
- 「避難所運営」のカリキュラム化:
- 生徒会や委員会活動の一環として、避難所の受付、物資の仕分け、簡易トイレの組立などを学ぶ「レスキュー隊養成講座(プチレスキュー)」を導入する。
- ボランティア・マインドの醸成:
- 平時から地域清掃や高齢者施設との交流を行い、「顔の見える関係」を作っておくことが、有事の際の「自然な手助け」につながる。
提言2:【スキル】「サバイバル技術」の実習導入
座学や避難訓練だけでなく、ライフラインが断絶した世界で生き延びるための「実技」を強化します。
- 生活・生存技術の習得:
- 家庭科や特別活動の時間に、「カセットコンロでの炊飯(サバイバル飯)」「新聞紙での防寒着づくり」「応急手当(AED・止血法)」を体験させる。
- 水泳の授業で、着衣のまま浮いて待つ「着衣泳(背浮き)」を必須化する。
提言3:【意識】「教師がいなくても生き残る」自律性の育成
「先生の指示待ち」からの脱却を目指します。
- 「想定外」のシミュレーション:
- 「登下校中に地震が起きたら」「家に一人でいる時に津波警報が鳴ったら」という個別のシミュレーション(マイ・タイムラインの作成)を行わせる。
- 科学的理解の促進:
- 理科や社会科の授業で、津波のメカニズムや過去の被害歴史を学び、「なぜ逃げなければならないのか」を論理的に理解させる。データにあるように、知識がある生徒は避難中も冷静に状況を分析できる。
Ⅲ. 結論
これからの防災教育は、「ただ怖がらせる教育」から「自信を持たせる教育」へと変わるべきです。
「自分は一人でも自分の命を守れる(自助)」という自信と、「自分は地域や困っている人の役に立てる(共助)」という自己有用感。この2つを育むことこそが、想定外の災害に負けない強いこどもたちを育てる鍵となります。
(以下「平成23年度 東日本大震災における学校等の対応等に関する調査報告書 平成24年3月 文部科学省」の要約)
3-2 各学校等での防災教育の実施状況について
(1) 防災教育の内容
質問事項: 震災前までは、どのような内容の指導を行ってきましたか?(その他の回答)
知識の習得だけでなく、実技や体験を重視した多様なプログラムが実施されていました。
【知識・学習】
- 授業での扱い:
- 市教委発行の防災授業資料を活用しての授業。
- 「地学I」の授業(一部生徒対象)、保健体育の授業。
- 日本の国土の特徴と災害の種類、日本の防災文化。
- 小4社会科での防災センター見学(仕組みの学習)。
- 啓発活動:
- 「おかしもすき(避難時の約束)」の周知。
- 災害ポスター、習字の作品作り。
- 絵本、紙芝居、DVDなどの視聴。
- 外国での津波被害の様子の学習。
【実技・体験・スキル】
- 救命・応急処置: AEDの使い方講習、応急処置や救命救急法。
- 避難スキル:
- 火災および地震の際の避難の仕方(相違点を含む)。
- 着衣泳(ちゃくいえい)の指導。
- 生活・運営スキル:
- サバイバル飯の調理実習。
- 避難所の設営と運営。
- 中学生ができる地域防災活動(プチレスキュー講座)。
- 被災地への励ましのメッセージ郵送(心の教育)。
(2) 防災教育が活かされた具体的な児童生徒等の行動
質問事項: 事前の防災教育が活かされた、具体的な行動で確認されていることは?
(1) 初期対応(身を守る・冷静さ)
- 基本動作の徹底:
- 机の下に潜り、頭部を保護する行動がとれた。
- 窓際・転倒物・落下物を避け、安全な場所で揺れが収まるのを待った。
- パニック防止:
- ドアを開放し避難通路を確保するなど、冷静に指示に沿った行動ができた。
- 慌てず、混乱することなく、周囲と協調して行動した。
(2) 二次対応(避難行動・共助)
- 津波避難への意識:
- 津波の危険性を把握しており、自宅等においても高台や地域の避難場所へ迅速に避難した。
- 避難中に、過去の津波被害について静かに話し合っている生徒がいた。
- 上級生のリーダーシップ(共助):
- 中2・中3の男子生徒が、下級生や女子生徒を守ろうと行動した。
- 高学年児童が低学年児童をいたわりながら避難した。
- お年寄りと共に高台や学校へ避難した。
- 集団行動: 集団になった時に静かにし、全体の指示をしっかり聞こうとしていた。
(3) 学校管理下の状況別対応(自主判断)
- 下校中: 落下物を避け、道路の端にしゃがみ身を守った。
- 部活動中(顧問不在): 顧問が離席していたが、従前の指導通り、生徒が自主的に判断し避難集合した。
(4) 校内体制・ボランティア(社会参画)
- 避難所での貢献:
- 中学生が各避難所で、水くみやトイレ清掃などを率先して行った。
- 支援活動:
- 生徒会や部活動ごとに、海岸被災地へのボランティア支援、募金活動、避難所生活者支援を自発的に行った。
(5) 引き渡しと待機
- 混乱せずに保護者が迎えに来るのを待つことができた。
(6) 物品・備蓄などの課題(※)
- 停電や余震への対応、ガソリン不足による移動困難などの状況が発生した。 (※この項目は「行動」というよりは、直面した「課題」としての記述と思われます)
まとめと分析(読み取り)
このセクションのデータは、**「防災教育=『生きる力』の育成」**であることを証明しています。
- 「守られる側」から「守る側」へ: 中学生がトイレ掃除や水くみ、高齢者の避難補助を行ったという記述は、防災教育が単なる避難訓練を超え、**「地域社会の一員としての自覚」**を育てていた成果と言えます。
- 「不在時」の判断力: 顧問不在の部活動中や下校中に、教わった通りに身を守れた事例は、反復学習の効果を示しています。
- 多様なスキルの有用性: 「着衣泳」や「サバイバル飯」など、座学以外の実践的なスキル教育が行われていたことも特徴的です。