2 『津波』に対する各学校等の対応について PDF
津波防災・避難行動に関する提言
~「引き渡し後の被災」と「想定外の浸水」を防ぐために~
Ⅰ. 現状分析と課題(データからの教訓)
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引き渡しの「パラドックス」: 学校(高台・安全地帯)にいた児童生徒が、保護者に引き渡された直後、車で自宅(低地)へ向かったり、渋滞に巻き込まれたりして犠牲になる事例が多発した。「親に返すことが、必ずしも安全ではない」という厳しい現実がある。
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「優しさ」が招いた悲劇: 中高生を中心に、一度避難した後で「祖母を助けに」「弟を迎えに」「ペットを心配して」戻り、命を落とした事例が目立つ。
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「想定」の崩壊: 「3階なら大丈夫」という想定を超え、屋上(4階相当、25m)まで浸水・全壊した事例があった。ハザードマップや指定避難所さえも被災した。
Ⅱ. 具体的提言
提言1:【引き渡し】津波警報中の「引き渡し停止・保留」
保護者が迎えに来ても、津波警報が出ている間は児童生徒を「渡さない(校内に留め置く)」、あるいは「保護者ごと学校に留まってもらう」ルールを徹底すべきです。
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「引き渡し=下校」にしない: 引き渡しは「保護者の顔を見て安心させるため」に行い、**移動は「警報解除後」**とする原則を保護者と共有する。
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リスク・コミュニケーション: 「迎えに来た車に乗って流された事例が多数ある」という事実を、平時の保護者会で具体的に伝え、「学校が高台にあるなら、そこに留まるのが一番安全」という認識を統一する。
提言2:【教育】「てんでんこ」と「家族の約束」の徹底
「家族を助けに戻るな」と教えることは残酷ですが、共倒れを防ぐために必須の教育です。
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「戻らない」約束: 「地震が起きたら、お互いを探さずに、それぞれの場所で一番高いところへ逃げる。生きて後で会う」という約束(津波てんでんこ)を、各家庭で話し合わせる宿題を出す。
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兄弟・姉妹対応のルール化: 「兄姉が弟妹を迎えに行かなくても、学校や園の先生が必ず守るから、兄姉は自分の命を守るために逃げなさい」と学校側から強く指導し、安心させる。
提言3:【避難場所】「垂直避難」の過信禁止と「三次避難」
「校舎の3階にいれば安心」という神話は崩れました。
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「屋上」を超える想定: 校舎への浸水・破壊(漂流物による倒壊)を想定し、校舎内避難(垂直避難)はあくまで「時間がない時の緊急手段」と位置づける。
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より高い場所への「二次・三次避難」: 時間が許す限り、校舎よりもさらに高い裏山や高台へ逃げるルートを確保する。データにあった「浸水の危険を感じて、マニュアルに従わずさらに上に逃げた」判断を評価し、現場の裁量権を認める。
提言4:【手段】「徒歩避難」の原則厳守
車での避難が渋滞を招き、多くの犠牲を生みました。
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車避難の禁止: 原則として「徒歩避難」を徹底する。保護者に対しても、「車で迎えに来ることは、自分と子供、そして地域の避難者の命を危険に晒す」と繰り返し啓発する。
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スクールバスの放棄基準: 運行中のバスは、浸水想定区域外であれば停車、区域内であれば「バスを乗り捨てて高台へ走る」判断基準を運転手と共有する。
Ⅲ. 結論
津波防災においては、「マニュアルやハザードマップを信じすぎないこと」、そして**「家族の情愛が時として避難の足枷になること」**を直視する必要があります。
「ただちに高台へ逃げ、警報が解除されるまでは、たとえ家族であっても迎えに行かない・戻らない」。 この非情とも言える鉄則を、学校と家庭が共有することが、次の津波から命を守る唯一の道です。
津波防災・避難行動に関する総合提言
~「引き渡し」のパラドックスを解消し、「想定外」を生き抜くために~
Ⅰ. 現状分析と課題(データからの教訓)
- 「引き渡し」が招く被災リスク(パラドックス): 安全な高台の学校にいた児童生徒を、マニュアル通り保護者に引き渡した結果、帰宅途中の車内や渋滞で津波に巻き込まれる事例が多発した。「親に返すことが安全とは限らない」という厳しい現実がある。
- 「想定」と「指定場所」の崩壊: 「3階なら安心」「指定避難所なら安全」という事前の想定を超え、屋上(4階相当)までの浸水や、指定場所自体の被災・孤立が発生した。ハザードマップを過信した避難計画が機能しなかった。
- 「優しさ」と「正常性バイアス」の悲劇: 中高生を中心に「家族を助けに戻る」「弟を迎えに行く」といった家族愛ゆえの行動や、「自分は大丈夫」という心理が逃げ遅れを招いた。一方で、状況悪化(予想波高の上方修正)を察知し、即座に「さらに上」へ逃げた現場判断が命を救った。
Ⅱ. 具体的提言
提言1:【引き渡し】津波警報中の「引き渡し凍結(または同伴避難)」
最も重要なルール変更です。保護者が迎えに来ても、警報中は絶対に児童生徒を校外へ出しません。
- 「動かない」ルールの徹底:
- 大津波警報・津波警報発令中は、原則として**「引き渡し(下校)」を行わず、学校または高台の避難所で保護する**ことをマニュアルに明記する。
- 保護者の「緊急収容」:
- 迎えに来てしまった保護者に対しては、「連れて帰る」のではなく**「保護者も一緒に学校で避難する」**よう誘導する。
- 帰宅途中の被災や渋滞を防ぐため、保護者の車は乗り捨てさせ、徒歩で校舎上階へ誘導する。
- リスク・コミュニケーション:
- 平時から「迎えに来た車に乗って流された事例」を伝え、「学校が高台にあるなら、そこに留まるのが一番安全」という認識を家庭と共有しておく。
提言2:【避難計画】「二段構え」の場所設定と「徒歩・垂直避難」
「ここなら絶対安全」という神話を捨て、状況悪化に対応できる多重の備えを行います。
- 「二次・三次避難(ラスト・リゾート)」の確保:
- 校庭や校舎が浸水・損壊した場合に備え、さらに高い裏山、神社、高台の民家などへ逃げるルートを確保する。マニュアルにない場所でも、現場判断で使えるよう地域と協定を結ぶ。
- 「垂直避難」の高度化と備え:
- 「2階で大丈夫」と決めつけず、浸水予測が変われば即座に「屋上」へ移動する。
- 屋上避難における「寒さ(低体温症)」を防ぐため、防寒シートや雨具の持ち出しを必須とする。
- 「車避難禁止」と「バス放棄」:
- 原則として渋滞を招く「車避難」は禁止し、徒歩避難を徹底する。
- 運行中のスクールバスは、危険区域内であれば「バスを乗り捨てて高台へ走る」判断基準を運転手と共有する。
提言3:【教育】「てんでんこ」の家庭内契約と「心のケア」
家族の情愛が避難の足枷にならないよう、事前の「約束」を徹底します。
- 「戻らない・探さない」約束(津波てんでんこ):
- 「地震が起きたら、家族を探さずに、各自の場所で一番高いところへ逃げる。生きて後で会う」という約束を、各家庭で取り交わさせる。
- 特に兄姉に対し、「弟妹は先生が必ず守るから、迎えに行かずに自分の命を守れ」と学校側から強く指導し、安心させる。
- 「学校管理下外」の生存教育:
- 登下校中や在宅時に被災した場合の避難場所を、自分の足で確認させる。
- 「見せない」配慮:
- 津波の襲来を目撃することは強烈なトラウマになる。安全確保が前提だが、可能な限り海と反対側の部屋へ移動させる等の配慮を行う。
提言4:【意思決定】「現場裁量権」の最大化
マニュアルは「最低限の基準」であり、「上限」ではありません。
- 即応的な行動変更:
- ラジオや防災無線で「予想高さ」が上がった場合(例:3m→10m)、マニュアルの手順を飛ばしてでも、即座により高い場所へ移動する権限を現場責任者に与える。
- 「マニュアルにないから動けない」事態を防ぐため、「命を守るためなら独断を許容する」免責条項を設ける。
Ⅲ. 結論
津波防災においては、「マニュアルやハザードマップを信じすぎないこと」、そして**「家族の情愛が時として避難の足枷になること」**を直視する必要があります。
「ただちに高台へ逃げ、警報が解除されるまでは、たとえ家族であっても迎えに行かない・戻らない」。 そして、「状況が悪化したら、即座にプランB(さらに上)へ移行する」。
この非情とも言える鉄則と柔軟性を、学校と家庭が共有することが、次の津波から命を守る唯一の道です。
(以下「平成23年度 東日本大震災における学校等の対応等に関する調査報告書 平成24年3月 文部科学省」の要約)
- 津波による被害状況と対応について
2-1 東日本大震災における津波による被害
質問事項: 児童生徒等はどのような状況で被害(死傷・行方不明)を受けましたか?(津波被害)
【幼稚園】
主な被害状況:降園後の被災、園バス運行中、家族との避難中
- 園バスでの被災:
- 降園中に園バスが津波に巻き込まれ、園児5名と添乗員が死亡。
- 園に残っていた園児をバスで待機させている最中に流された。
- 降園後・帰宅時の被災:
- 自宅にいた園児(卒園式で休園中)、帰宅後の園児が自宅ごと流された。
- 祖母や保護者と共に避難中、または車で移動中に巻き込まれた。
- 買い物の後、伯母の車で移動中に被災。
- 引き渡し直後の悲劇:
- 園バスで祖母に手渡した直後、祖母と共に行方不明となった。
【小学校】
主な被害状況:引き渡し後の移動中、家族の安否確認・救助、避難行動中
- 引き渡し後の移動中:
- 親戚・家族の救助へ:
- 保護者に引き渡された後、別場所にいる親戚の安否を心配して向かう途中で被災。
- 父親の職場へ迎えに行った後、母子で避難中に不明。
- まだ学校にいる弟を迎えに行く途中、家族全員で車ごと被災。
- 渋滞・遭遇: 帰宅途中、国道の渋滞により巻き込まれた。学校を出てすぐの場所で飲まれた。
- 親戚・家族の救助へ:
- 自宅・避難所での被災:
- 帰宅後、自宅ごと流された。
- 避難所へ逃げたが、そこも被災した(祖母と一緒に避難所へ)。
- 自宅から出ようとした瞬間、または避難中の車内で流された。
- 特異な事例:
- 叔母との遭遇: 一人で高台へ避難し無事だったが、探しに来た叔母と会い、寒さのため叔母の車に入ったところを、車ごと逃げ遅れて被災した。
- 捜索中の被災: 保護者が迎えに来て引き渡し後、行方の分からない妹を探しに親子で自宅方面へ向かい被災(妹は別途避難し無事だった)。
【中学校】
主な被害状況:帰宅後の被災、家族・ペットを助けるための行動、避難所の被災
- 「家族・家」への回帰行動:
- 大津波警報を聞き、自宅にいる母親を気遣い戻って被災。
- 自宅にいる犬(ペット)を気遣い、車で自宅に戻って被災。
- 避難所にいたが、家族の安否確認のために避難所を離れ、第2波に巻き込まれた。
- 下校・在宅中の被災:
- 卒業式(午前終了)や準備等で、早めに帰宅していた生徒が自宅で被災。
- 体調不良で欠席し、自室にいたところを被災。
- 友人の家(海岸近く)に遊びに行っていた生徒が共に被災。
- 妹を幼稚園へ迎えに行く途中で被災。
- 指定避難所の被災: 市が指定した避難所に逃げたが、そこへ大津波が襲来した。
【高等学校】
主な被害状況:部活動・卒業生、家族の手助け、引き渡し後の迂回
- 行動中の被災:
- 部活動準備中に地震発生、指定避難所に逃げたが飲み込まれた。
- 下校途中に駅で被災し、曾祖母・祖母の安否確認のため自宅へ向かい死亡。
- 家族・同級生との関係:
- 身体の不自由な父親と一緒に避難しようとして巻き込まれた可能性。
- 同級生の送り届け: 保護者の車で帰宅中、同乗させた同級生を送り届けるために迂回(海側へ戻るルート等)し、津波に遭遇。
- 祖母を助けようとして逃げ遅れた。
【特別支援学校】
- 児童デイサービスの送迎車で帰宅途中に被災。
分析と教訓(読み取り)
この痛ましい記録からは、今後の防災教育や保護者啓発において、以下の点が極めて重大な課題として浮き彫りになります。
- 「引き渡し」がリスクになる場合がある: 学校という安全な高台にいた児童が、保護者に引き渡されたことで低地(自宅や職場)へ移動し、被災した事例が多数あります。「学校に留め置く」判断の重さを示しています。
- 「家族を想う行動」の危険性: 中高生を中心に、「母を助けに」「祖母を迎えに」「弟・妹を探しに」という、人間として尊い行動が命を落とす原因となりました。緊急時は「てんでんこ(各自で逃げる)」の徹底がいかに難しいか、そして重要かを物語っています。
- 「車避難」の明暗: 寒さを凌ぐために車に入った結果逃げ遅れる、渋滞に巻き込まれるなど、車が避難の足枷(あしかせ)となったケースが散見されます。
2-1 (2) 津波による浸水被害の範囲
質問事項: 貴校(園)に到達した津波により、どこまで浸水被害を受けましたか?(その他の回答)
【壊滅的被害:屋上・3階以上への到達】
想定を遥かに超える高さの津波により、建物全体が水没、あるいは流失した事例です。
- 屋上・全体水没:
- 3階屋上の給水タンクも水没した。(推定25m)
- 津波は校舎の4階にあたる屋上付近まで達し、校舎と体育館は全壊した。
- 校舎の屋上を超えていた。
- 校舎屋上まで浸水で流木等が突き刺さった状態。
- 津波は屋上を超え、校舎3階の備品もすべて流出した。体育館も流出。
- 高層階への浸水:
- 3階まで浸水した。
- 最上階(3階)まで浸水。
- 校舎4階床面まで浸水した(全壊)。
- 建物の流失・全壊:
- 園舎の物置、敷地の遊具及び倉庫等、すべて流出。
- 園舎流出。
- 3階建て校舎と体育館が全壊。
- 北校舎2階以外は津波の直撃を受け、壊滅状態となった。
- 体育館流失。
【甚大な被害:1階~2階・体育館】
校舎の低層階が破壊され、機能不全に陥った事例です。
- 2階レベル:
- 校舎1階天井まで損壊、2階床上約20㎝浸水。
- 一部校舎は2階床上まで浸水。
- 1階・体育館レベル:
- 1階が水没した。
- 校舎1階天井付近まで浸水した。
- 校舎1階水没流失、体育館ギャラリーの高さまで水没流失。
- 校舎1階、各実習棟、体育館等浸水。
- 園舎一階部分流出。
- 体育館の半分まで浸水。
- 体育館、新校舎1階(技術室)が浸水。それより高い位置にある本校舎の玄関まで到達。
- 校舎1階及び体育館は壊滅状態。
【敷地内・周辺への到達】
建物本体への直撃は免れたものの、敷地内や周辺環境が被災した事例です。
- 校庭・駐車場:
- 校庭、駐車場、その他校地での液状化、亀裂、浸水など。(8件)
- 駐車場の一部浸水。
- 運動場脇まで到達した。
- 校庭のフェンスが倒され、駐車場の一部が浸水した。
- 周辺道路・地形:
- 学校周辺の道路が浸水した。
- 周辺一帯が浸水。
- 学校の校庭の下の田まで津波が到達した。
- 校庭下の法面(のりめん)まで津波が到達した。
- 最終避難の場である高さ20m以上の県道まで津波が到達した。
【その他の具体的被害状況】
- 破壊の要因:
- がれきや乗用車等、様々なものが校舎1階や体育館を破壊した。
- 津波による流出。損壊建物自体の津波による崩壊。
- 船具庫の倒壊、流失。
- 汚染・複合被害:
- 川の逆流による敷地内への汚泥の侵入。
- 地震の後に津波に襲われたため、原因が特定できない(複合被害)。
まとめと分析(読み取り)
このデータは、当時の津波の破壊力が**「浸水」という言葉では片付けられないレベル(建物の破壊・流出)**であったことを示しています。
- 「高さ」の脅威: 「4階床面」「屋上(推定25m)」という記述があり、従来の垂直避難(3階への避難など)では助からないケースがあったことがわかります。
- 「凶器」となる漂流物: 単なる水圧だけでなく、「車」や「がれき」が校舎に突っ込み、建物を破壊した様子が記されています。
- 避難場所の限界: 「最終避難場所である高さ20m以上の県道まで到達した」という記述は、ハザードマップの想定を超えた事態を象徴しています。
- 『津波』に対する各学校等の対応について
(1) 津波からの避難場所
質問事項: 貴校(園)では、津波からどこへ避難しましたか?(その他の回答)
「垂直避難(校舎上階)」と「高台・他施設への移動」に大別されます。中には、指定場所からさらに高い場所へ二次避難したケースも見られます。
【高台・外部への避難】
- より高い場所へ:
- 指定場所からさらに高台へ避難した。
- 指定避難場所の高台へ避難したが、そこにも津波が迫り、より高い神社への道を駆け上がった。
- 最終的には、高台にある民家に避難した。
- 近隣施設・地形:
- 近隣中学校体育館、高台の中学校。
- 講堂、園長宅。
- 近くの小高い国道。
- 県道の脇の高い山の中と、学校裏山の神社の社(やしろ)。
【校舎内への避難(垂直避難)】
※「校舎の上階や屋上に避難した」として集計された主な回答
- 上階への移動:
- 校舎の最上階、およびその下の階。
- 海から遠い校舎の3階。
- 屋上がないため、校舎上階に避難。
- 天候による判断:
- みぞれが降っていたため、屋上ではなく校舎の2・3階へ避難した。
- 待機:
- 本校が指定避難場所だったため、そのまま待機させた。
- 学校体育館が避難所となっているため、体育館に避難した。
【その他】
- 津波に対する避難意識が無かったため避難しなかった。
(2) 危機管理マニュアルの有効性と課題
質問事項: マニュアルの手順や方法で功を奏した点、あるいは課題や反省点は?
【功を奏した点】(Good Practices)
- 基本動作の徹底:
- 「海岸・河川から離れる」「高台へ逃げる」が徹底されていた。
- 過去の訓練や実際の避難行動により、スムーズにマニュアル通り避難できた。
- 待機の判断:
- 登校後の警報発令中は「学校待機」と家庭に知らせていたため、二次被害を防げた。
- 警報解除まで学校で待機し、地域住民も受け入れた。
- 防寒対策:
- マニュアル通り、防寒具を着てランドセルを背負い3階へ避難したことが役立った。
- 【間一髪の事例】:
- 保護者が迎えに来たため、マニュアル(引き渡し規定)と混乱回避を考慮し、やむを得ず引き渡した。結果、学区中心部が浸水したが、間一髪で(再び)学校に避難してきて、児童・保護者共に無事だった。
【課題・反省点】(Lessons Learned)
- 引き渡しのジレンマ:
- 大津波警報発令中に保護者が迎えに来た際、「校舎に避難させる」か「引き渡す」かで混乱した。
- 「迎えに来たら帰す」規定だったが、何度も津波が来る状況では、安全確認のために留め置く必要があった。
- 生徒の所在による差:
- 1・2年生(在校)は対応できたが、3年生(帰宅済み)への対応が後回しになってしまった。
- 登下校中の対処方法を再検討する必要がある。
- 備蓄・連絡: 水・食料の備蓄、連絡手段の確保。
(3) マニュアル外の避難行動とその理由・評価
質問事項: マニュアルに示された以外の行動(または規定外)をとった際の内容・理由・評価は?
想定(津波の高さ・安全性)が崩れた際の、現場の臨機応変な対応が記録されています。
【実際の行動】(マニュアルからの変更)
- 場所の変更(より安全な場所へ):
- 所定の避難場所から、明文化されていない裏山にさらに避難した。
- 校庭から校舎3階へ移動した。
- 学校グラウンドではなく、駐車場に避難させた。
- 高度の変更:
- 当初2階に避難させていたが、大津波警報に変わった時点で3階へ上げさせた。
- 引き渡しの停止:
- 生徒を保護者に引き渡すことなく、学校から移動させないようにした(全員帰宅させなかった)。
【その行動をとった理由】
- 想定の崩壊:
- 予想を超える高さの津波が押し寄せたため。
- 情報の更新(警報が約3mから、大津波警報6m以上へ変わった)に合わせ、より安全な上階を選択した。
- 本校は想定区域外の指定避難所であり、そもそも津波を想定していなかった(が、危険を感じて動いた)。
- 物理的危険:
- 学校グラウンドに地割れが発生し、避難経路(高架橋下)も危険だったため。
- 校舎の被害が甚大で、余震や移動中の事故も懸念されたため。
- 情報の活用:
- 防災無線からの情報や、テレビ・ラジオの情報をもとに判断した。
【成果と反省】
- 成果:
- 生死を分けた判断: 第1次避難場所(所定の場所)に留まっていれば浸水していた。海が見える場所で状況把握しながら動けたのが良かった。
- トラウマ回避: 校庭下の田まで押し寄せた津波を、児童に見せずに済んだ(上階や反対側へ移動したため)。
- 地域連携: 地域住民の受け入れがすぐにできた。
- 課題:
- 把握の難しさ: 避難場所が多岐にわたった(高台、自宅、駐車場など)ため、状況把握に時間を要した。
- 連絡体制: 緊急時の地区内連絡体制の不備が判明した。
読み取りと分析
このセクションのデータは、津波防災における**「二段構えの避難」**の重要性を示唆しています。
- 「指定避難所」の絶対視は危険: 指定場所やマニュアル上の避難場所(校庭など)が危険になるケースが多発しました。「そこも危ないなら、さらに上(裏山・神社)へ」という柔軟な二次避難が生死を分けました。
- 「情報更新」への即応: 「3m」の予報が「6m」「10m以上」に変わる中で、2階から3階へ移動させるなどの迅速な判断が功を奏しています。
- 「引き渡し」のリスク再認識: ここでも「警報中に親に返すこと」のリスクが指摘されています。マニュアルで「引き渡し=善」とされている場合、現場が混乱するため、**「警報中は渡さない(親と一緒に留まる)」**というルールの確立が急務であることが改めて確認できます。