映画鑑賞と防災講演会
大川小学校の教訓に学ぶ
~安全確保は組織的に科学的に~
日時:令和6年1月14日(日) 13:00~16:00
場所:弥富市総合社会教育センター 中央公民館ホール
近年大規模な水害が多発しており、今まで以上に地域防災力の重要性が高まっています。災害の経験を教訓として次に備えましょう。
今回は、「組織の防災力」をみんなで考えます。防災力を「個人の問題」に矮小化せず、「組織全体の防災力に高める」ための教訓として、映画「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」を鑑賞します。
映画を見た後、講演と語りあいをします。
(内容) ①映画「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」の鑑賞
②講演「津波から命を守った学校の事例紹介」
③語りあい「弥富市でこの教訓をどう生かすか」
(参加者) だれでも。(小学生未満の方は、保護者同伴でお願いいたします)
(参加費等) 弥富市内の方は無料 市外の方は500円程度のカンパをお願いします
(申込先) ここをクリックして「申し込みフォーム」から入力してください
(主催)弥富防災・ゼロの会
監督:寺田和弘 プロデューサー:松本裕子
協力:大川小学校児童津波被災遺族原告団、吉岡和弘、齋藤雅弘
映画「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」
2022年文部科学省選定作品 東京都推奨映画 2022年/日本/16:9/カラー/124分
©︎2022 PAO NETWORK INC.
公式HP:https://ikiru-okawafilm.com/
(お勧めします)映画「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」 原告遺族、代理人弁護士 会見
以下の詳しい内容はこちらからPDFでも見られます伊勢湾ゼロメートル防災フォーラム 2024
今回は、「組織の防災力」をみんなで考えます
私たちは、様々な組織に属しています(会社、市役所、消防団、自治会、自主防災会、考え方によっては、家族という組織)。
学校は、最もありふれた組織の1つです。防災の面からは、「かけがえのない、多くの将来性のある命を預かっている組織」の象徴です。
災害時には、究極的に言えば、一人一人個人の判断で命を守る行動をとることが第一原則ですが、さりとて集団でいる以上、組織的に制約に縛られてしまいます。
大川小学校では組織的な備え・体制がとれていたのか
1つ目の地裁判決では、「主に現場の職員の行動」について判断が下されました。
重要なのは、2つ目の高裁の判決です。「組織としてどんな備えをして、組織として構成員がどのように動くか、事前に動けるようにしていたか」が問われたということです。
災害の現場では、様々な人がいます。うろたえてどうしようもない人、観察力・判断力・行動力がある人も、そしてその他大勢の大勢に従う人も。
どちらにしても、全員死んでしまうのか、多くの人が助かるのかは、事前の準備、組織的な体制ができているかどうかです。
この判決が鳴らした警鐘は、もちろん、学校現場では広く深く受け止めて欲しいのですが、日本中のすべての組織に対する警鐘として、日本人全員が広く深く受け止めるべきだと思います。
対象的に組織力で生き残った学校組織があります
石巻市には、在校した児童が全て助かり、なおかつ、近隣の住民も助かった門脇小学校の事例があります。校長先生のリーダーシップ、事前の指導が大川小学校と対照的だったのです。
これは校長先生1人の力でなく、教員も、児童も自ら考え、自ら責任を持って行動を取ることを、日ごろの指導方針として確立していたということです。
具体的には、防災訓練をマニュアル通りにやるだけではなく、訓練の後には必ず各自そして全体で反省をして、改良を重ねることが行われています。
紙に書いた「防災マニュアル」を実践的な災害時対応計画にバージョンアップをし、何よりも、各教員や児童が自ら判断して動く体制をつくり上げていったことです。
月並みですが、おそらくこれが大川小学校の教訓に対する答えの1つであるのだと思います。
もちろん、我々弥富市民が様々な組織の中で、どのように備えるのか、どのように動くかについては、皆さんの英知を結集して話し合いをしたいと思います。
シンポジウム開催報告】<大川小学校津波訴訟とその意義>から抜き書き
(2019年11月23日)
※髙橋眞氏(大阪市立大学教授)の講演から、重要と思われるポイントを抜き出し、整理して記載しました。
大川小学校事件控訴審判決の重要なポイント
- 校長等には安全に関するマニュアルを作る義務がある
保護者は児童を通わせる小学校を選べないという公教育のもとでは、この前提に、児童の安全が確保されていることが制度的に保障されていることがあると、判決で述べています。
安全が確保されていなければ、保護者は安心して学校に通わせられないということです。
学校保健安全法により、校長等は地震の際の危機管理マニュアルを作成する義務があり、実際に、危機管理マニュアルの作成は、市教委主催の会議と依頼文書により、大川小に対して具体的に指示されていました。
2.「組織力」で安全を確保する
安全を確保するという目的のためには、校長等の管理職だけでなく、すべての教職員の行動が大切です。各教職員は、現場においてそれぞれの担当する場所や子ども達を見ており、避難行動をするにあたっての具体的な問題点を、それぞれが持ち寄ることが可能であり、また期待されるからです。
さらに、各自の「自立」した行動だけでなく、「連携」があってはじめて「組織の強み」を発揮することができるのです。
ここで「自立」とは、言われたことだけを受け身で行うのではなく、自らの分担部分について、事故を防止するために問題意識をもち、必要なことを積極的に行うことをいいます。
組織運営においては、「連携」を可能にする条件をつくります。つまり遠慮なく疑問や提案の出せる場と雰囲気をつくることが必要となります。
- 現場を最もよく知る者として、専門的知見を「科学的」に活用する
平成16年に報告された宮城県の地震被害想定調査を基につくられた津波ハザードマップにおいて、大川小学校は津波の避難場所として指定されていました。
県の報告書の中で「市町村がこの中の津波浸水域分布図を用いて津波ハザードマップを作成する場合には、地元住民に対してワークショップを行い、住民と共に詳細なハザードマップを作成することが必要である」との指摘もあったにもかかわらず、地域の実情に即したより詳細な検討はされていませんでした。
この調査は宮城県が地震防災計画に活用する目的で行ったものであり、専門家はその目的に沿って仕事をしています。
つまり、あくまで部分的であって全体を把握したものではないということを念頭においておかなければなりません。
校長等は、堤防を越えて大川小に津波が襲来することを危惧し、裏山をも含めた第三次避難場所について話し合っていましたが、ハザードマップで安全だとされていたことから行動に移しませんでした。自分の持ち場である現場で危惧や疑問を感じた時は、これを提示して専門家に再検討を求めることが大事になってきます。
現場の危惧や情報と専門的な知見、この相互検証で事柄の全面的な、「科学的」な把握ができるようになります。