半数以上が避難に自信なし 日赤の調査から考える避難情報と避難所の改善
災害の危険を知っていても、「いつ避難すればよいのか」「避難先で安心して過ごせるのか」が分からなければ、行動に移すことは難しくなります。
日本赤十字社が2026年9月17日に公表した「災害時の避難に関する意識・実態調査」は、避難の判断や避難所の環境に、多くの人が不安を抱えていることを示しています。
避難を呼びかける情報と、安心して避難できる環境を、一体として考える必要があります。
避難を経験したことがない人が7割以上
調査は2026年7月、全国の10代から60代以上の男女1,440人を対象に、インターネットで実施されました。
災害を理由とする避難について、72.3%が経験なしと回答。避難所へ避難した経験がある人は、回答者全体の8.5%でした。
また、災害時に自分で情報を集め、必要な避難行動をとれるかという問いに、53.2%が「あまり自信がない」「できないと思う」と答えています。
多くの人にとって、避難は経験のない行動です。
地域の防災訓練でも、会場に集まるだけでなく、「何をきっかけに出発するか」「誰と、どこへ、どう移動するか」を具体的に確かめる機会が必要だと考えます。
公的情報を頼りにしていても、避難のタイミングに迷う
避難を始めるきっかけとして最も多かったのは、公的機関からの呼びかけでした。
一方、避難をためらう理由で最も多かったのは、避難のタイミングが分からないことです。
この結果からは、情報を受け取ることと、自分の行動を決めることの間に、なお課題があると読み取れます。
大雨などに伴う避難情報では、警戒レベル3「高齢者等避難」で、避難に時間がかかる人とその支援者が危険な場所から避難し、警戒レベル4「避難指示」で、危険な場所にいる全員が避難することが基本です。
地域では、この情報を各家庭の事情に結びつける必要があります。
家族の移動にどれだけ時間がかかるのか、夜間でも移動できるのか、支援する人にどう連絡するのか。平時に話し合い、自分たちの避難開始の目安を決めておくことが、迷いを減らす一歩になります。
トイレとプライバシーへの要望が高い
避難所で特に重要だと思うものは、トイレ・入浴環境が1位、プライバシーの確保が2位でした。
避難所の環境について「安心できる」と答えた割合は、調査したすべての項目で4分の1未満でした。
ただし、これは避難所に対するイメージや意識を尋ねた結果であり、すべての施設の実態を評価したものではありません。
「安心できる」が4分の1未満だからといって、残り全員が不安と回答したとも限りません。
それでも、避難先の環境への不安が、避難をためらう理由に挙がっている点は重く受け止める必要があります。
**トイレ、着替えや授乳の場所、間仕切り、休める寝床などを、開設直後からどう確保するか。
**避難所整備では、収容人数とともに、そこで送る生活を具体的に考えたいと思います。
女性の不安を、備えや運営に反映する
避難行動に自信がない、またはできないと思う人の割合は、男性43.2%、女性63.4%でした。
避難所の各項目でも、不安と回答した割合は、女性が男性を10ポイント以上上回っています。
この調査だけでは、男女差が生じた原因までは分かりません。
だからこそ、女性をはじめ、子育て中の人、高齢者、障害のある人、医療的ケアが必要な人などに、何が不安なのかを直接聞くことが大切です。
弥富でも、避難所の計画や訓練、運営に、さまざまな立場の人が参加し、その声が設備や支援方法に反映される仕組みを進めたいと考えます。
命を守る避難と、その後の避難生活を分けて考える
ここで区別したいのが、危険から命を守るための避難と、安全を確保した後の避難生活です。
国の制度でも、災害の危険から緊急に逃れる「指定緊急避難場所」と、一定期間生活する「指定避難所」は、目的が異なります。
避難場所は、地震、洪水、津波など、災害の種類ごとに確認する必要があります。
安全な場所にいる人は、必ずしも避難場所へ移動する必要はありません。
一方、危険な場所にいる場合は、まず安全を確保する行動が必要です。
その後の生活では、自宅の安全性や生活条件を確認したうえで、在宅避難や親戚・知人宅などで過ごす人もいます。
弥富の防災を考える際には、避難所の環境改善と併せて、避難所の外にいる被災者にも、情報や物資、健康相談などを届ける体制を検討したいと思います。
弥富の訓練で、避難と生活を具体的に確かめる
今回の調査を、弥富の防災に生かすために、次の点を確かめていきたいと考えます。
- 各家庭で、避難を始める目安と移動方法を決める。
- 避難に時間がかかる人の支援方法を、本人と一緒に確認する。
- 避難所開設の訓練で、受付、トイレ、寝床、間仕切りの設置まで試す。
- 通信や充電、相談窓口を含め、生活に必要な支援を点検する。
- 在宅などで避難生活を送る人の状況も把握し、支援につなげる。
「いつ、どう避難するか」と「避難した後にどう暮らすか」。
この両方に具体的な答えを用意することが、安心して行動できる地域づくりにつながると考えます。
※調査数値の出典は、2026年日本赤十字社調べ。
本調査は全国のインターネット調査であり、弥富市民の実態を直接示すものではありません。
本文の弥富に関する提案は、調査を踏まえた筆者の考えです。
