道路・水道・住宅だけではない――問われているのは「地域で暮らし続けられる条件」の再建です
令和6年能登半島地震からの復旧・復興は、地域によって大きな差が生じています。
道路が早く通れるようになった地域がある一方、半島先端部や中山間集落では、上下水道や住宅の本格復旧に時間がかかっています。
さらに、地震からの復旧途上で奥能登豪雨が重なり、住民、行政、建設業者、支援者は二重の負担を背負うことになりました。
この格差は、単に「工事が早いか遅いか」という問題ではありません。
本当に深刻なのは、住民が地域へ戻れる条件、自宅を再建できる可能性、医療や福祉を受けられる環境、子どもが地域で育つ場所まで、地域によって差が広がっていることです。
半島という地形が、すべての復旧を遅らせた
能登半島は山が多く、半島先端部へ向かう道路も限られています。
地震では道路の崩落、土砂崩れ、路面の亀裂などが各地で発生し、多くの集落が孤立しました。道路が寸断されると、救助や物資輸送だけでなく、上下水道の修理、住宅の被害調査、公費解体、建築工事、医療や介護など、あらゆる支援が遅れます。
輪島市西部では、地震によって海岸が最大約4メートル隆起しました。一部の港湾施設も使用が難しくなり、道路だけでなく海からの支援にも大きな制約が生じました。国土交通省の被害・対応資料
都市部であれば別の道路から迂回できる場合でも、能登では一本の道路が通れなくなるだけで、その先にある複数の集落が孤立します。
能登の復旧が遅れた背景には、この「代わりのルートが少ない」という半島特有の弱さがあります。
上下水道は「元に戻すだけ」でよいのか
能登地域の上下水道は、地震前から老朽化、人口減少、技術職員不足などの問題を抱えていました。
そこへ大地震が発生し、浄水場、送水管、配水管、下水道管、宅内配管などが広い範囲で被災しました。水道本管の応急復旧は進みましたが、建物倒壊地域、宅内配管、下水道、本格的な強靱化などには長い時間が必要です。国土交通省・上下水道復旧資料
ここで難しい問題が生じています。
人口が大きく減少した集落に、災害前と同じ長い水道管や下水道管をそのまま復旧し、将来にわたって維持できるのかという問題です。
珠洲市は、公共下水道区域の見直しや、集落単位の小規模設備、浄化槽など「点でまかなうインフラ」も選択肢として検討しています。珠洲市復興計画
ただし、費用がかかるという理由だけで、一方的に復旧区域を縮小してはなりません。
住み続けたい住民がいる以上、
- 従来どおり復旧する場合
- 災害に強い設備へ更新する場合
- 集落単位の小規模設備へ転換する場合
- 浄化槽などの分散型設備を使う場合
- 安全な場所へ住まいを移す場合
について、費用、維持管理、利便性、安全性を示し、住民と話し合って決める必要があります。
「帰りたいのに帰れない」住民がいる
奥能登では、震災前から人口減少と高齢化が進み、建築から長い年月が経過した木造住宅も多くありました。
2007年の能登半島地震後も住宅の耐震化は十分に進まず、令和6年の地震では多数の住宅が倒壊・損壊しました。
高齢者世帯にとって、住宅の再建は簡単ではありません。
- 新たな住宅ローンを組めない
- 修理費や建築費を用意できない
- 業者との交渉や見積もりが難しい
- 支援制度が複雑で申請できない
- 再建しても家を継ぐ人がいない
- 医療、介護、買物、交通が戻らない
こうした事情が重なるためです。
石川県の調査では、仮設住宅などに暮らす世帯の約7割が被災前の市町での再建を希望し、約5割が自宅の新築や修繕を希望しています。
多くの被災者は、能登を離れたいのではありません。戻るための住宅、仕事、医療、交通がそろわないため、戻れないのです。石川県の生活再建に関する説明
復旧が遅れるほど、人口流出が固定化する
住宅やインフラの復旧が長引くと、避難先で新しい生活が始まります。
子どもは転校先に慣れ、家族は避難先で仕事を見つけ、高齢者は新しい医療機関や介護施設を利用するようになります。
最初は「いつか能登へ戻りたい」と考えていても、避難生活が長引くほど、戻ることが難しくなります。
珠洲市では、2023年12月から2025年12月までの2年間に、人口が2,153人、世帯数が650世帯減少しました。珠洲市の人口・世帯資料
人口が減ると、商店、病院、福祉、学校、地域交通の維持がさらに難しくなります。
すると生活が不便になり、さらに住民が戻らなくなるという悪循環が生まれます。
復旧が遅れる
↓
住民が戻れない
↓
人口と利用者が減る
↓
商店・医療・交通が縮小する
↓
ますます戻れなくなる
能登の復興では、この悪循環を早い段階で断ち切る必要があります。
地震と豪雨が重なり、「復興する側」も疲弊した
地震からの復旧途上だった2024年9月、奥能登豪雨が発生しました。
仮設住宅の浸水、道路や河川の再被災、再避難、災害廃棄物の増加などが発生し、地震で被災した住民が再び大きな被害を受けました。
行政職員、建設業者、福祉関係者、ボランティアなども、地震と豪雨の二つの災害に対応しなければならなくなりました。
人手不足に加えて、
- 建設資材の高騰
- 人件費・輸送費の上昇
- 工事業者の不足
- 作業員の宿泊場所不足
- 公共工事の入札不調
- 自治体技術職員の不足
なども復興を遅らせています。
石川県は、空きが生じた仮設住宅を住宅工事従事者の宿泊場所として活用するなどの対策を始めています。石川県・住宅再建対策
復興を進めるには、補助金を用意するだけでは足りません。実際に設計し、工事を行い、住民の相談に乗る人を確保する必要があります。
子どもの居場所が、復興の陰で失われている
仮設住宅を急いで建設するため、公園、校庭、運動場、空き地などが建設用地として使われました。
住まいの確保は重要ですが、その一方で、子どもたちは遊び、運動し、友達と集まる場所を失いました。
こども家庭庁の資料にも、子どもから、意見を聴かないままグラウンドを仮設住宅用地にしてほしくなかったという趣旨の声が寄せられています。こども家庭庁・こども・若者分科会資料
子どもの居場所は、単なる遊び場ではありません。
- 心を休める場所
- 友達との関係を保つ場所
- 運動不足を防ぐ場所
- 地域とのつながりを感じる場所
- 災害の不安を一時的に忘れられる場所
でもあります。
子どもの意見が復興計画に反映されなければ、「自分たちは地域に必要とされていない」という感覚を生み、将来の人口流出にもつながります。
公園や校庭を仮設住宅に使う場合でも、代わりとなる屋内外の遊び場を同時に整備し、配置を決める前に子どもの意見を聴く必要があります。
能登で広がっている「五つの格差」
能登半島の復興で生じている格差は、次の五つに整理できます。
1.地理的格差
幹線道路に近い地域と、半島先端部・沿岸部・中山間集落では、復旧に必要な時間と費用が違います。
2.行政能力の格差
人口の少ない自治体ほど、土木、建築、上下水道、契約などを担当する職員が少なく、大量の復旧事業を処理できません。
3.経済的格差
貯蓄や保険があり自力再建できる世帯と、支援金を受けても再建費を用意できない世帯に分かれています。
4.世代間格差
住宅や介護への支援が優先される一方、子どもや若者の居場所、教育、地域参加が後回しになりがちです。
5.情報格差
避難先、年齢、家族構成、障害の有無などによって、支援制度の情報を得られる人と得られない人が生じています。
必要なのは「地域ごとの復旧状況の見える化」
復旧状況を市町全体の数字だけで示しても、集落ごとの実態は分かりません。
道路、上下水道、公費解体、住宅再建、医療、福祉、学校、交通、商店などについて、地区・集落単位で状況を地図に表示する必要があります。
そうすることで、
- どの地域が取り残されているのか
- 何が住民の帰還を妨げているのか
- どこに人員と予算を集中すべきか
- 予定より遅れている事業は何か
を、住民と行政が共有できます。
小さな自治体を国と県が支え続ける必要がある
奥能登の自治体だけで、膨大な復旧事業を処理することには限界があります。
国や県が、
- 設計
- 積算
- 入札
- 工事監督
- 用地調整
- 住宅再建相談
- 福祉との連携
- 復興事業の進行管理
を長期的に支援しなければなりません。
復興の遅れを、被災自治体の努力不足として片付けてはなりません。行政職員の数や専門性の違いが、そのまま住民の生活再建格差にならない仕組みが必要です。
道路や住宅を元に戻すだけでは、地域の暮らしは再建できない
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、強い揺れ、津波、土砂災害、液状化、広範囲の地殻変動によって、能登地域に甚大な被害をもたらしました。
さらに同年9月、復旧途上の奥能登を記録的な豪雨が襲い、道路、河川、住宅、仮設住宅などが再び被災しました。
能登で起きているのは、単なる「復旧工事の遅れ」ではありません。
- 早く生活を取り戻せる地域と、復旧が長期化する地域
- 自力で住宅を再建できる世帯と、支援があっても再建できない世帯
- 避難先から戻れる人と、戻りたくても戻れない人
- 復興計画に意見を反映できる人と、声を届けられない人
という、暮らしの再建条件そのものの格差です。
1.半島という地形が、すべての復旧を遅らせた
能登半島は山が多く、半島先端部へ向かう道路も限られています。
地震では大規模な斜面崩壊、土砂崩れ、路面の亀裂などが発生し、多くの集落が孤立しました。
道路が通れなくなると、救助や物資輸送だけでなく、
- 被害状況の把握
- 上下水道の修理
- 住宅の被害認定
- 公費解体
- 建築資材の搬入
- 医療・介護サービス
- ボランティアの受入れ
- 商店や観光施設の再開
まで、あらゆる活動が遅れます。
都市部であれば別の道路から迂回できる場合でも、能登では一本の道路の寸断によって、その先にある複数の集落が孤立します。
この「代わりのルートが少ない」という地理的条件が、奥能登の復旧を難しくした大きな要因です。
2.海岸隆起で漁港が深刻な被害を受けた
輪島市西部では、地震によって海岸が最大約4メートル隆起しました。
石川県によると、県内69漁港のうち60漁港が被災し、特に外浦地域の22漁港では、地盤隆起によって水深が確保できず、港としての機能が大きく損なわれました。石川県の説明
これは水産業だけの問題ではありません。
陸路が寸断されたとき、港は人員、重機、物資を運び込む代替ルートになります。その港が使えなければ、海からの支援も難しくなります。
一方で、すべての港が完全に失われたわけではありません。現在は港ごとの被害状況や利用目的に応じて、仮復旧や本復旧が進められています。
ただし、隆起した海岸を災害前と同じ形に戻すことは容易ではありません。新しい地形に合わせ、漁港、道路、防潮施設、漁業の再開方法を一体的に考える必要があります。
3.上下水道は「元どおりに直すだけ」でよいのか
能登地域の上下水道は、地震前から老朽化、人口減少、料金収入の減少、技術職員不足などの問題を抱えていました。
そこへ大地震が発生し、浄水場、送水管、配水管、下水道管、宅内配管などが広範囲に被災しました。
水道本管の応急復旧は、建物倒壊地域などを除いて2024年5月末までに進みましたが、宅内配管、下水道、本格的な復旧、施設の強靱化には長い時間を要しています。国土交通省の復旧資料
ここで問われているのは、人口が大きく減少した集落に、災害前と同じ規模の上下水道をそのまま復旧し、将来にわたって維持できるのかという問題です。
珠洲市は、公共下水道区域の見直しや、集落単位の小規模設備、浄化槽などを組み合わせた「点でまかなうインフラ」も選択肢として掲げています。珠洲市復興計画
大規模な集中型インフラには、日常的に安定したサービスを提供できる利点があります。一方、長い管路の一部が壊れると、広い範囲が断水する弱点があります。
小規模な分散型設備には、地域や施設単位で機能を維持できる可能性がありますが、導入費、維持管理、衛生基準、故障時の対応など、解決すべき課題もあります。
したがって、一つの新技術ですべてを置き換えるのではなく、
- 従来型インフラを強靱化する地域
- 施設を小規模化する地域
- 浄化槽などの分散型設備を使う地域
- 集落単位の設備を共同利用する地域
を、地域の実情に応じて組み合わせる必要があります。
重要なのは、費用がかかるという理由だけで、一方的に復旧区域を縮小しないことです。
住民の帰還意向、安全性、将来の維持費、医療・福祉上の必要性などを示し、住民と話し合って決めなければなりません。
4.古い住宅と耐震化の遅れが被害を拡大した
国土交通省が輪島市、珠洲市、穴水町の市街地を対象に行った分析では、1981年以前の旧耐震基準で建てられた木造建築物は、それ以降の建物に比べて倒壊・崩壊の割合が顕著に高くなっています。
調査時点の住宅耐震化率は、全国平均87%に対し、輪島市45%、穴水町48%、珠洲市51%でした。国土交通省「能登半島地震の建築物構造被害」
耐震化が進まなかった背景には、単なる防災意識の不足だけでなく、
- 高齢世帯が多い
- 住宅の後継者がいない
- 改修費が高い
- 大きな屋根を持つ伝統的住宅が多い
- あと何年住むか分からない
- 過去の地震を乗り越えたという安心感がある
といった、過疎・高齢化地域特有の事情があります。
耐震化を住民の自己責任だけに委ねる政策には限界があります。診断、設計、改修工事まで一体的に支援し、費用負担を大幅に軽減する必要があります。
5.住宅再建の最大の壁は「費用・業者・時間」
被災者が自宅を再建しようとしても、建設費、資材費、人件費、輸送費が上昇しています。
さらに、
- 地元の工務店や建設業者も被災している
- 能登まで資材を運ぶ費用が高い
- 域外から来る作業員の宿泊場所が不足している
- 自治体の建築・土木技術職員が不足している
- 入札不調や工期の長期化が起きる
という問題があります。
石川県は、住宅工事従事者の宿泊場所を確保するため、空きが生じた建設型応急住宅を住宅事業者へ提供する取組も始めています。石川県の住宅事業者支援
これは、補助金を用意するだけでは住宅が建たないことを示しています。
必要なのは、資金支援に加えて、
- 建築士による相談
- 修理・新築の見積支援
- 信頼できる業者の紹介
- 資材の共同調達
- 住宅モデルプランの提供
- 工事従事者の宿泊拠点
- 契約や施工を支える専門家
を一体的に提供することです。
6.多くの住民は「能登に戻りたい」
石川県が仮設住宅などの入居世帯を対象に行った調査では、約5割が新築、修理、住宅購入などによる自宅再建を希望し、約3割が復興公営住宅を希望しました。
また、約7割が被災前に住んでいた市町での再建を望んでいます。
一方、再建の時期について「分からない」「復興公営住宅の建設時期による」と答えた世帯は約6割に上りました。石川県・住まい再建意向調査
つまり、多くの被災者は能登を離れたいのではありません。
- 住宅が建たない
- 費用の見通しが立たない
- 復興公営住宅の場所や時期が分からない
- 医療、介護、交通、買物環境が戻らない
- 仕事や生業を再開できない
ために、戻りたくても戻れないのです。
帰還の遅れを住民の意思の問題にしてはなりません。戻れる条件をどこまで整えられたかという、行政と社会の側の問題です。
7.復旧の遅れが人口流出を固定化する
住宅や生活インフラの復旧が長引くと、避難先で新しい生活が始まります。
子どもは転校先に慣れ、家族は避難先で仕事を見つけ、高齢者は新しい医療機関や介護施設を利用するようになります。
最初は「いつか戻りたい」と思っていても、避難生活が長引くほど、帰還は難しくなります。
珠洲市では、2023年12月から2025年12月までの2年間に、人口が2,153人、世帯数が650世帯減少しました。珠洲市資料
人口が減れば、商店、医療、福祉、学校、公共交通の維持が難しくなります。
すると生活がさらに不便になり、住民が戻らないという悪循環が生まれます。
復旧が遅れる
↓
住民が戻れない
↓
人口と地域サービスの利用者が減る
↓
商店・医療・交通・福祉が縮小する
↓
さらに戻れなくなる
この循環を断つためには、住宅だけでなく、仕事、医療、福祉、教育、交通を一体で再建する必要があります。
8.奥能登豪雨で「復興する側」も再び被災した
地震からの復旧途上だった2024年9月、奥能登豪雨が発生しました。
地震で傷んだ道路や河川、住宅が再び被災し、仮設住宅にも浸水被害が生じました。地震の被災者が再度避難を余儀なくされる二重被災となりました。
行政職員、建設業者、福祉関係者、ボランティアも、地震と豪雨の二つの災害に同時に対応しなければなりませんでした。
この問題は、単にボランティアの人数が少ないというだけではありません。
- 現地へ入る道路が限られている
- 宿泊場所が少ない
- 支援者を受け入れ調整する職員が不足している
- 必要な作業と支援者を結びつける調整が難しい
- 長期支援への関心を保つことが難しい
という「受援力」の問題でもあります。
支援を呼びかけるだけでなく、移動、宿泊、安全管理、作業調整を一体的に準備する必要があります。
9.経済復興にも地域差が生じている
金沢市など県南部では、交通や宿泊施設への被害が比較的小さく、観光需要も回復しています。
一方、奥能登では道路、港湾、宿泊施設、生産拠点、工房などが大きな被害を受け、観光、水産業、農林業、伝統産業の再開に時間がかかっています。
特に輪島塗は、木地、下地、塗り、加飾など、多くの職人による分業で成り立っています。
一人の職人が工房、道具、住まいを失い地域を離れると、その工程だけでなく、産業全体のつながりが失われる可能性があります。
伝統産業の復興には、設備や工房への補助だけでなく、
- 職人の住まい
- 仮設工房
- 道具や材料の確保
- 共同受注
- 販路の再建
- 後継者育成
- 工程をつなぐ調整役
が必要です。
地域産業は雇用だけでなく、住民が能登へ戻る理由でもあります。生業の再建が遅れれば、住宅が完成しても人口は戻りません。
10.子どもの居場所は「最低限必要な生活基盤」
学校、公園、グラウンド、空き地は、避難所や仮設住宅の用地として使われました。
住まいの確保は重要ですが、その一方で子どもたちは、
- 遊ぶ場所
- 運動する場所
- 友達と集まる場所
- 心を休める場所
- 地域とのつながりを感じる場所
を失いました。
こども家庭庁の分科会では、子どもや若者から、意見を聴かないままグラウンドを仮設住宅用地にしてほしくなかったという趣旨の声も出されています。こども家庭庁・こども・若者分科会資料
子どもの遊びや学びの場は、余裕があれば設けるものではありません。災害時にも必要な生活基盤です。
公園や校庭を仮設住宅に使う場合には、
- 子どもの意見を事前に聴く
- すべての空間を使い切らない
- 代替となる屋内外の居場所を同時整備する
- 通学・送迎手段を確保する
- 心理職や福祉職を配置する
- 障害のある子どもと家族へ訪問支援を行う
必要があります。
11.仮設住宅では「住戸」と「つながり」を同時につくる
仮設住宅への入居によって、住民が元の集落や近隣関係から切り離されることがあります。
特に、みなし仮設住宅では被災者が広い地域に分散するため、行政や支援者から見えにくくなります。
住まいを提供するだけでは、高齢者の孤立、生活不活発病、心身の悪化を防げません。
必要なのは、
- 元の集落や近隣関係に配慮した入居
- 集会所やサロンの設置
- 定期的な見守り訪問
- 福祉・医療との情報共有
- 住民自身が活動を企画できる支援
- 恒久住宅へ移った後も続く伴走支援
です。
コミュニティ支援をイベント開催だけで終わらせず、住民同士が再び支え合える関係をつくることが重要です。
12.復興の格差は「五つの格差」
能登の復興で生じている格差は、次の五つに整理できます。
地理的格差
幹線道路沿いと、半島先端部・中山間集落では、支援の入りやすさや復旧費用が違います。
行政能力の格差
人口の少ない自治体ほど、土木、建築、上下水道、契約などを担当する専門職員が不足しています。
経済的格差
貯蓄や保険があり自力再建できる世帯と、支援金を受けても再建できない世帯に分かれています。
世代間格差
住宅や介護が優先される一方、子ども・若者の居場所、教育、地域参加が後回しになりがちです。
情報格差
避難先、年齢、障害、家族構成などによって、支援情報を得られる人と得られない人が生じています。
13.必要なのは「復旧状況の見える化」
復旧状況を市町全体の数字だけで示しても、地区ごとの実態は分かりません。
道路、上下水道、住宅、公費解体、医療、福祉、学校、公共交通、商店、生業などについて、地区・集落単位で状況を地図化する必要があります。
それによって、
- どの地域が取り残されているのか
- 何が住民の帰還を妨げているのか
- どこに人員と予算を集中すべきか
- どの事業が予定より遅れているのか
を住民と行政が共有できます。
14.小規模自治体を国と県が長期的に支える
奥能登の自治体だけで、膨大な復旧事業を処理することには限界があります。
国と県が、
- 設計
- 積算
- 入札
- 工事監督
- 用地調整
- 住宅相談
- 福祉との連携
- 復興事業の進行管理
を長期的に支援する必要があります。
復興の遅れを、被災自治体の努力不足として片付けてはなりません。
自治体の職員数や専門性の違いが、そのまま住民の生活再建格差にならない仕組みが求められます。
15.「創造的復興」を集落切り捨ての言葉にしない
人口減少が進む地域で、すべての施設を災害前と同じ規模に戻すことは、将来の維持管理を考えると難しい場合があります。
一方で、効率性だけで居住地域を選別すれば、人口の少ない集落から切り捨てられます。
コンパクトな拠点形成や分散型インフラは、有力な選択肢の一つです。しかし、それを行政が一方的に押しつけてはなりません。
必要なのは、
- 原形復旧に必要な費用
- 強靱化した場合の費用
- 分散型設備へ転換する場合の費用
- 将来の維持管理費
- 住民の帰還意向
- 医療・福祉・防災上の必要性
- 移転する場合の補償と生活支援
を示し、住民とともに選択することです。
結論――復興とは「ここで暮らせる条件」を取り戻すこと
能登の復興で問われているのは、壊れた道路、水道、住宅を元に戻すことだけではありません。
高齢者が医療や介護を受けながら暮らせること、子どもが安心して遊び学べること、地域で仕事を続けられること、災害が再び起きても孤立しないことまで含めて再建する必要があります。
能登で表面化したのは、インフラの老朽化、人口減少、高齢化、建設業者不足、行政職員不足、資材高騰という、日本の多くの地方が抱える問題です。
だからこそ、能登の復興は能登だけの問題ではありません。
復興とは、建物や道路を造り直すことではありません。
住民が「ここで暮らし続けられる」と思える条件を取り戻すことです。
子ども、高齢者、障害者、避難先で暮らす住民を含め、誰も復興から取り残さない仕組みをつくることが求められています。

