市民の皆様へ
このたび、小・中学校の跡地問題について、市長や市議会に提出するための「請願書(署名)」の素案を作成してみました。
これはあくまで私個人の素案です。市民の皆様の中で少しでもご関心のある方がいらっしゃれば、ぜひ集まって、ゼロから一緒に文案を練り直したいと考えています。
なぜ急いでいるのか。それは、このまま私たちが声を上げずに放っておけば、貴重な公有地である学校用地が、あっという間に民間へ売り払われてしまうからです。一度手放した土地は、二度と市民の元には戻りません。
まずは、私たちの命と安全に直結する「防災」という最大の切り札を使って、何としても売却を阻止しましょう。
跡地を具体的にどう利活用していくかについては、売却をストップさせた後で、地域の皆さんで少しずつ、ゆっくりと考えていけば良いと思っています。
まずは「売却ストップ」という一点に向けて、皆様のお知恵とお力をお貸しください。 素案へのご意見、文案作りへのご参加など、どんなことでも大歓迎です。ぜひ、お気軽に声をお寄せください!
【タイトル】:弥富市の未来と命を守るために。学校跡地の売却ストップを求める署名にご協力ください!
弥富市民の皆様へ
目前に迫る「南海トラフ巨大地震」。海抜ゼロメートル地帯に暮らす私たちにとって、地震と津波、そして長期的な水害は決して他人事ではありません。しかし今、私たちの命を守るための「最後の砦」が、市によって売り払われようとしています。
令和10年(2028年)春、大藤、栄南、十四山東部、十四山西部の4つの小学校が統合され、「よつば小学校」が誕生します。これに伴い、4つの学校跡地(広大なグラウンドと頑丈な鉄筋コンクリートの校舎)が残されます。
市は現在、財政難や駅前開発の借金返済を理由に、これらの公有地を民間企業へ売却しようとしています。しかし、少し立ち止まって考えてみてください。
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避難所は足りていますか? 現在の指定避難所は、災害時に「1平方メートルに1人」という過酷なすし詰め状態を想定しています。高齢化が進む中、お年寄りや配慮が必要な方が安心して過ごせる「福祉避難所」は圧倒的に不足しています。
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南部地域が「犠牲」になっていませんか? 学校跡地が売却されれば、巨大な物流倉庫や中古車ヤードになり、大型トラックが行き交う騒音や環境悪化が懸念されます。南部の土地を切り売りして北部の開発に充てるようなまちづくりで良いのでしょうか。
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今ある「命の砦」を捨てるのですか? 隣の飛島村は、巨額の税金を投じてゼロから津波避難タワーを建設しています。弥富市にはすでに、3階建てで頑強な「元・学校」という立派なタワーがあるのです。蟹江町のように、グラウンドを人工高台にし、校舎を防災拠点として再利用する道が必ずあります。
一度民間に売り渡した土地は、二度と市民の元には戻りません。 いざ災害が起きてから「仮設住宅を建てる場所がない」「避難する高い建物がない」と後悔しても遅いのです。
私たちは、学校跡地の民間への切り売りをストップし、市民の命を守る「広域防災拠点」「福祉避難所」として活用することを求める請願書を市議会と市長に提出します。 どうか、あなたとあなたの大切な人の命を守るため、署名にご協力をお願いいたします!
議会及び市長への請願書(提出用フォーマット)
令和〇年〇月〇日
弥富市長 殿 弥富市議会議長 殿
【請願代表者】 住所: 氏名: 印 (他、署名簿の通り〇〇〇筆)
【請願件名】
小学校統合に伴う廃校舎・公有地の民間売却を凍結し、南海トラフ巨大地震を見据えた「恒久的防災拠点・福祉避難所」としての整備を求める請願
【請願の要旨】
令和10年4月の小学校統合(よつば小学校開校)に伴い遊休化する、大藤小学校、栄南小学校、十四山東部小学校、十四山西部小学校の用地および施設について、現在市が進めている民間への売却・貸与に向けた手続き(サウンディング調査等に基づく処分方針)を即刻凍結することを求めます。
その上で、海抜ゼロメートル地帯という当市の脆弱性と、目前に迫る南海トラフ巨大地震への備えとして、これらの公有地を「福祉避難所」「広域仮設住宅建設用地」および「地域コミュニティのレジリエンス拠点」として恒久的に保存・活用する方針へと転換することを強く求めます。
【請願の理由】
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命を守る「避難スペース・福祉避難所」の絶対的不足 当市の指定避難所は長期の避難生活には到底耐えられません。また、当市は後期高齢者が急増しており、一般避難所での生活が困難な要配慮者向けの「福祉避難所」の確保が急務です。教育再開の重圧がない「廃校」こそが、数千人規模の高齢者を受け入れる最適な福祉避難所となります。
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頑強な鉄筋コンクリート(RC)校舎は代替不可能な「命の砦」 RC造の学校建築は、適切な改修を行えば数十年以上機能する極めて強靭な防災ストックです。目先の市債返済のためにこれらを安価に売却し、将来災害リスクが顕在化した際に再び用地買収や避難タワー建設を行えば、売却益の何十倍もの血税が必要になります。
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南部地域の生活環境悪化と不公平な都市計画の是正 学校跡地を民間に売却すれば、周辺が物流ヤード等に転用され、交通環境や治安の悪化を招く恐れがあります。南部の公有地を切り売りし、その税収等を北部の駅前開発等の財源に充てるような不均衡な政策は、南部地域の「防災空白地帯化」を招き、市民の安全を脅かすものです。
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都市計画法の壁は越えられる(近隣自治体の成功事例) 市街化調整区域であっても、都市計画法上の「地区計画」等を活用すれば、適法に公共公益拠点として維持・転用することは可能です。隣接する蟹江町が旧蟹江高校跡地を人工高台や多目的施設(希望の丘広場)として再生させた事例に倣い、当市も既存資産を活かした防災インフラ投資へ舵を切るべきです。
【請願事項】
上記の理由から、以下の4点を強く求めます。
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売却手続きの即時凍結: 統合対象となる4小学校の跡地(土地・建物)について、民間への売却および貸与に向けた一切の手続きを直ちに凍結・除外すること。
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徹底した情報公開と市民参画: これまで実施されたサウンディング調査の結果や財産処分に関する庁内の検討プロセスを市民に完全公開し、跡地利用の決定にあたっては地域住民を交えた公開協議の場を設けること。
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広域防災拠点・福祉避難所への転用: 既存校舎を平時活用と有事の「福祉避難所」を兼ねた施設(フェーズフリー拠点)へとコンバージョンし、広大なグラウンドは「仮設住宅建設予定地」および「車中泊避難所」として事前指定すること。また、施設の維持と防犯向上のため、地域の消防団詰所を跡地へ集約・移転させること。
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市の根幹計画への位置づけ: 現在策定または見直しが行われる「弥富市総合計画」および「地域防災計画」の中に、当該4校の跡地群を『福祉避難所および地域防災の拠点』として明確に位置づけること。
以上
弥富市における学校統廃合に伴う公有地の恒久的防災拠点化に関する総合研究――南海トラフ地震を見据えた福祉避難所整備と市街化調整区域の適正利用を通じた都市レジリエンスの構築
サマリー
結論(最重要メッセージ)
令和10年(2028年)の小学校統合に伴って生じる4つの学校跡地(大藤、栄南、十四山東部、十四山西部)の民間売却を即時凍結し、南海トラフ巨大地震を見据えた「福祉避難所」および「広域防災拠点」として恒久的に保存・活用すべきである。
1. 弥富市が抱える現状と危機的課題
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過酷な災害リスク: 南海トラフ巨大地震の切迫と、海抜ゼロメートル地帯という水害・津波リスクの二重苦に直面している。
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福祉避難所の絶対的不足: 後期高齢者が急増(推計約4,000人規模)する中、要配慮者を受け入れるための福祉避難所が圧倒的に足りず、災害時の医療・介護崩壊が懸念される。
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既存避難所の限界: 既存の指定避難所は「1平方メートルに1人」という過密基準で算定されており、長期避難には不適格である。また、災害後は早期の学校再開(授業)が求められるため、高齢者などの避難者との動線分離が極めて困難になる。
2. 市の「公有地売却方針」に潜む問題点
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北部偏重と南部の犠牲: 駅前開発など市街化区域(北部)への巨額投資による市債返済を急ぐあまり、市街化調整区域(南部)の学校跡地を売り急いでいる。
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生活環境の悪化(南部の植民地化): 売却された土地が物流ヤード等に転用されることで、南部地域は環境悪化の負担のみを強いられ、将来の避難拠点も失うことになる。
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サウンディング調査の危険性: 民間活力を謳う調査は、防災という公益的価値よりも経済的利益を優先する正当化材料となりがちである。
3. 資産価値の再評価と法的クリアランス
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RC造校舎は「命の砦」: 新耐震基準以降の鉄筋コンクリート造校舎は極めて強靭であり、これを解体・売却することは過去の巨大な防災投資を自ら捨てる行為である。
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法的障壁の打破: 「市街化調整区域だから用途変更が難しい」という行政の主張は、都市計画法上の「地区計画」等を活用することで適法にクリア可能である。
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近隣自治体の教訓: 廃校を人工高台や防災拠点として見事に再生させた蟹江町や、巨額を投じて津波避難タワーを新設する飛島村の事例を見れば、弥富市がすでに持つ「堅牢な校舎と広大な土地」を手放すことの愚かさは明白である。
4. 学校跡地活用の具体的提言
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「福祉避難所」へのコンバージョン: 普通教室を要配慮者の居住スペース、体育館を支援物資拠点などへ特化し、平時から段階的に整備・維持する。
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「仮設住宅・車中泊用地」の事前指定: 広大なグラウンドを、市街化区域で被災した市民も受け入れるための広域的な仮設住宅建設予定地および車中泊避難所として確保する。
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消防団詰所の移転集約: 地域の消防団拠点を学校敷地内に移転させることで、建物の防犯性・維持管理能力を高め、災害時のシームレスな初動対応を可能にする。
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実践的避難所シミュレーションの実施: 北部地域の住民を南部の跡地に招き「1泊2日の避難所体験訓練」を行うことで、弥富市全体の防災ネットワークを強化する。
5. 市民・議会へのアクション要請
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行政の財政至上主義的な暴走を止めるため、市民と議会が連帯して「民間売却の凍結」と「防災拠点としての保存」を求める請願を実施する必要がある。
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策定中の「総合計画」や「地域防災計画」に、これらの跡地を防災拠点として明確に位置づけるよう要求すべきである。
序論:南海トラフ巨大地震の切迫と弥富市が直面する構造的・空間的脆弱性
日本列島は現在、歴史的な地震活動の活動期に入っており、とりわけ太平洋側の広範な地域において甚大な被害をもたらすとされる南海トラフ巨大地震の発生が現実の脅威として迫っている。
地震学および防災科学の広範なコンセンサスによれば、南海トラフにおける巨大地震は過去の地質学的データおよび歴史文献から約90年から150年の周期で発生するパターンが確認されており、次なる発災は2035年を中心とする前後5年間(すなわち2030年代から2040年代前半)に極めて高い確率で発生すると予測されている。
この予測は、単なる確率論にとどまらず、国家および地方自治体における防災インフラ整備の絶対的なデッドラインを意味している。
こうしたマクロな自然災害リスクに対し、愛知県弥富市は極めて深刻な地理的・構造的脆弱性を抱えている。
市の大部分が海抜ゼロメートル地帯に位置し、巨大地震に伴う強震動のみならず、その直後に襲来する津波、さらには堤防決壊に伴う大規模かつ長期的な水害(広域浸水)のリスクに常に晒されている。
このような極限の環境下において、弥富市では令和10年(2028年)4月1日に、南部地域に位置する大藤小学校、栄南小学校、十四山東部小学校、および十四山西部小学校の4校を統合し、新たに「よつば小学校」を開校する大規模な学校再編計画が進行中である 。
教育環境の最適化を目的としたこの統廃合は、同時に「広大な敷地面積と堅牢な鉄筋コンクリート(RC)造の施設を有する複数の公有地が、本来の用途を終えて遊休化する」という重大な都市計画上の転換点をもたらす。
現在、市当局は深刻な財政難や、市街化区域(北部・中心部)における大型公共事業の財源確保を背景に、これらの学校跡地を民間へ早期に売却処分する方針を打ち出し、サウンディング型市場調査(官民対話)を実施している 。
本研究報告書は、こうした弥富市の「公有地の早期売却・切り売り」という方針に対し、災害リスクマネジメント、人口動態分析、都市計画法制、および財政的持続可能性の四つの次元から徹底的な検証を加えるものである。
1981年の新耐震基準以降に建設されたRC造の学校建築群を、一時的な財源として消費するのではなく、目前に迫る南海トラフ地震に向けた「福祉避難所」「広域仮設住宅建設用地」および「地域コミュニティのレジリエンス拠点」として恒久的に凍結・保存することの妥当性と、その具体的な実践モデルについて、他自治体の先行事例や関連法令を交えて網羅的かつ精緻に論述する。
1. 人口動態の劇的変化と避難所収容能力の絶対的枯渇
1.1 高齢化の進展と「福祉避難所」という喫緊の課題
弥富市の都市防災を根本から再考する上で、最も直視すべきファンダメンタルズは劇的な人口動態の変化、とりわけ後期高齢者の急増である。
市の総人口約4万2,000人のうち、高齢化率は年々上昇の一途をたどっており、令和元年(2019年)にはすでに後期高齢者人口が前期高齢者人口を逆転している 。令和5年(2023年)のデータによれば、高齢者全体に占める後期高齢者の割合は56.8%に達しており 、全人口に対して約1割、すなわち約4,000人規模の後期高齢者が市内に居住しているという推計が成り立つ。
この人口構造は、災害発生時における避難行動および避難所運営において致命的なボトルネックを生じさせる。
通常の健常者を対象とした一般避難所(小中学校の体育館など)は、プライバシーが欠如し、空調や衛生設備が不十分な環境での雑魚寝状態を強いるため、後期高齢者にとってはエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)や持病の急激な悪化、最悪の場合は災害関連死を引き起こす直接的な要因となる。
これを防ぐためには、特別な配慮を要する高齢者や障害者を受け入れるための「福祉避難所」の確保が不可欠である。
現在、弥富市は市内の社会福祉施設や病院などを「要配慮者利用施設」としてリストアップし、福祉避難所としての機能への期待を寄せている 。
しかし、平常時においてすらこれらの介護・医療施設は定員超過(満床)状態にあり、ギリギリの人員体制で運営されているのが実態である。
巨大地震による被災によって自宅を失い、あるいは心理的・身体的ダメージを受けて急遽医療や介護が必要となった在宅の高齢者が数千人規模で発生した場合、既存の民間施設に彼らを収容するスペース的・人的な余裕は事実上皆無である。
すなわち、行政が主導して、平時からの既存ストック(公有地・公共施設)を活用した「新たな福祉避難所の絶対的なキャパシティの創出」を図らない限り、大災害時の医療・介護崩壊は免れない。
1.2 市街化区域における指定避難所の物理的限界と基準の陥穽
弥富市が地域防災計画に基づき指定している既存の避難所ネットワークを検証すると、市街化区域の人口密集度に対して、避難所の絶対数および収容面積が絶望的に不足していることが明らかになる。
市は災害の規模に応じて1次、2次、3次開設避難所を指定しており、また水害や津波発生時の「緊急時避難場所」として、RC造やSRC造の中層建築物(学校校舎、市役所、民間マンション等)の2階以上を指定している 。
一見すると、これらの施設によって数万人規模の避難者を収容できるように見える。
しかし、この「収容可能人数」の算定基準は、避難可能面積に対して「1平方メートル当たり1人」という極めて非現実的かつ過密な基準に基づいて算出されている点に重大な留意が必要である 。
1平方メートルはわずか1m×1mの空間であり、人間が横になって睡眠をとるための最低限のスペース(通常、災害関連の国際基準であるスフィア基準では1人当たり最低3.5平方メートルが推奨される)すら満たしていない。
この過密基準で算定された数値は、数時間から半日程度の一時的な緊急避難(命を守るための垂直避難)としては機能し得ても、数週間から数ヶ月に及ぶ長期的な避難生活の場としては完全に破綻している。
実質的な長期居住可能人数は、帳簿上の数値の3分の1から4分の1以下に激減する。したがって、市街化区域内に居住する数万人の市民に対して、既存の小学校等の面積は圧倒的に不足しており、単純計算でも人口の1割から2割程度しか適切に収容できないという構造的欠陥を抱えているのである。
1.3 教育再開の至上命題と高齢者避難のコンフリクト
さらに、市街化区域内の存続する小学校を長期的な福祉避難所として利用することには、決定的な運用的障害が存在する。
文部科学省のガイドラインにも明記されている通り、災害発生後、学校施設は地域の復興のシンボルとして、また児童生徒の心理的ケアの観点から、可能な限り早期の教育活動(授業)の再開を目指すことが求められる 。
教育活動が再開されれば、普通教室や特別教室は児童生徒のために明け渡さなければならない。
文部科学省は「避難所エリアと教育活動エリアを分離するとともに、両者の動線が交錯しないようにしておくことが重要」と指摘しているが 、限られた敷地内で数千人の避難者(とりわけ要配慮者)と児童の動線を完全に分離することは困難を極める。
結果として、高齢者は再開された学校から退去を迫られるか、極めて劣悪な環境に押し込められることとなる。
だからこそ、教育活動の再開というプレッシャーから解放される「統廃合後の廃校(大藤小学校、十四山東部小学校等)」の存在が極めて重要になるのである。
これらの施設を福祉避難所として確保しておくことは、市街化区域の学校が教育活動を早期に再開するための「避難者の受け皿」として機能し、世代間のコンフリクトを回避する最善の策である。
2. 財政的偏重と都市計画における「中心部対周辺部」の非対称性
2.1 大規模プロジェクトを支える市債と「売り急ぎ」の力学
弥富市が統廃合によって生じる学校跡地を「避難所・仮設住宅用地」として凍結保存することに消極的であり、民間への売却を急いでいる背景には、市のいびつな財政構造と中心部偏重の都市開発投資が存在する。
現在、弥富市は市街化区域である弥富駅周辺を中心として、駅前開発、自由通路の整備、土地区画整理事業など、都市の近代化を掲げた大規模な公共施設の再開発プロジェクトを推進している。
これらの事業は、巨額の市債(地方債)の発行によって賄われており、その事業規模は数十億円、関連プロジェクトを含めれば70億円規模に達するとされている。
この莫大な借金の返済圧力と、将来の施設の維持管理コスト(ランニングコスト)に対する強い警戒感が、行政をして「利用されなくなった公有地は一刻も早く売却し、現金化して負債の圧縮に充てるべきだ」という近視眼的な財務ロジックへと駆り立てているのである。
2.2 サウンディング調査(官民対話)の実態と危険性
この「売り急ぎ」の具体的な現れが、市が大手コンサルタント会社に約400万円の予算を投じて委託した「サウンディング型市場調査」である。市は上野グラウンドや東部小学校など5ヶ所の公共施設跡地の活用について、民間事業者の意向を調査している 。
サウンディング調査は、表向きは「民間活力を導入した公共資産の有効活用」を謳う先進的な手法であるが、実態は行政の意図によって大きく左右される。
大手コンサルタントに委託された400万円という予算規模は、住民と膝を交えて地域の数十年先の未来計画(グランドデザイン)をじっくりと練り上げるための金額ではなく、単に「この土地をどう使えば利益が上がるか」という民間企業の収益モデルを事務的に聞き取り、売却・貸与の正当化材料となる報告書をまとめるための予算に過ぎないとの指摘がなされている 。
このプロセスにおいて、地域住民の生命を守る「防災拠点」という最も本質的な公益的価値は、経済的利益(ROI)の算定からは除外されがちである。
2.3 南部地域の「植民地化」と生活環境の悪化という犠牲
この財政至上主義的な土地処分のしわ寄せを直接的に受けているのが、市街化調整区域に位置する南部地域(東末広や西末広地区など)である。
市街化調整区域は本来、無秩序な市街化を抑制するためのエリアであるが、現実には安価な事業用地を求める民間資本に対し、なし崩し的に土地が提供されるケースが後を絶たない。
現在、弥富市の南部地域では、広大な農地や跡地が中古車ヤード、大型トレーラーの車庫、巨大な物流施設へと急速に転用されている。
これに伴い、昼夜を問わず大型車両が行き交うことによる道路環境の悪化、騒音、排気ガス、さらには一部で違法建築が疑われる構造物の乱立など、防犯面を含めた生活環境の急激な悪化が進行している 。
若年層が「住みたくない」と感じるような環境破壊が進む一方で、これらの物流施設やヤードから市に納付される多額の法人市民税や固定資産税は、南部地域のインフラ整備や環境改善に還元されることなく、駅前開発など北部(中心部)の土建工事に吸い上げられている。
南部地域は環境悪化の負担のみを押し付けられ、税収は中心部に再分配されるというこの不公平な状態は、地域住民から「南部地域の植民地化」と厳しく批判されている 。
このような不均衡な都市経営の中で、地域コミュニティの最後の拠り所であり、かつ災害時の広域避難拠点となり得る「学校用地」までを民間企業(ひいては物流ヤード等)に切り売りすることは、市の南部を完全に放棄するに等しい政策的失策である。
3. 鉄筋コンクリート造学校建築の資産価値と法的活用スキーム
3.1 1981年以降のRC造建築物が持つ「命の砦」としての絶対的価値
弥富市が統廃合の対象としている各小学校(大藤小学校、栄南小学校、十四山東部小学校、十四山西部小学校)の校舎群は、その構造的価値において極めて高度な防災資産である。
これらの建物の大部分は、1981年(昭和56年)の建築基準法改正によって導入された「新耐震基準」以降に設計・建設された鉄筋コンクリート(RC)造、あるいはそれ以前の建築であっても適切な耐震補強工事が施された建物である。
RC造の法定耐用年数は通常50年(学校用の鉄筋コンクリート造の場合は47年等)と規定されているが、これはあくまで税務上の減価償却の基準に過ぎない。
物理的なコンクリートの寿命は、定期的な外壁補修や防水工事といった適切なメンテナンスを行えば、70年から100年に及ぶことが建築工学的に証明されている。
構造形式が単純かつ堅牢な学校建築は、通常のオフィスビルや商業施設と比較しても桁違いの耐久性を誇る。
とりわけ海抜ゼロメートル地帯において、堅固な杭基礎によって支持され、津波や高潮時の想定浸水深を優に上回る2階・3階・屋上スペースを有するこれらの建物は、まさに「命の砦」である。「コンクリートの経年劣化が進んでいる」「維持管理費がかさむ」といった表層的な理由で、これほどの強靭な防災ストックを取り壊し、あるいは民間に売却することは、過去数十年間にわたって市民の血税で築き上げてきた巨大なセーフティネットを自ら破壊する行為である。
体育館について言及すれば、その価値はさらに明確である。
大空間を有するRC造またはSRC造の体育館は、建設に莫大な費用(数億円規模)を要するが、これを解体して更地として売却したところで、解体費用が売却益を相殺し、実質的な市の利益は数千万円程度に留まる可能性が高い。
わずかな一時金を得るために、代替不可能な数百人規模の全天候型避難スペースを失うことは、行政の費用対効果(コストパフォーマンス)の観点からも極めて非合理的である。
3.2 市街化調整区域という「言い訳」の打破と都市計画法第34条
行政側が学校跡地を恒久的な避難所や仮設住宅用地として保存・転用することに消極的な理由の一つとして、「当該地域が市街化調整区域であるため、新たな用途での活用や施設の整備が法律上困難である」という見解が示されることがある。
都市計画法上、市街化調整区域は無秩序な市街化を防止するために、原則として新たな開発行為や建築行為が厳しく制限されるエリアであることは事実である。
しかしながら、公共公益的施設としての維持・転用に関しては、十分かつ明確な法的スキームが存在する。
茨城県龍ケ崎市が策定した「学校跡地活用の基本的な考え方」などの先進的なガイドラインが示す通り、市街化調整区域内にある学校跡地を地域のまちづくりや防災拠点として活用する場合、都市計画法に基づく「地区計画」の制度を適用することが極めて有効である 。
都市計画法第34条第10号に基づく地区計画を都市計画決定することにより、その地区の特性(例えば、地域防災の拠点、福祉避難所、地域コミュニティの活動拠点など)にふさわしいまちづくりを法的に位置づけ、適法な形で一体的な開発行為や用途変更を行うことが可能となる 。
また、特区制度(国家戦略特区や構造改革特区など)を活用することで、従来の規制を緩和・排除し、地域活性化と防災拠点化を両立させるアプローチも存在している 。
極端な例を挙げれば、手続きさえ適正に踏めば、市街化調整区域であっても市役所の新庁舎や大規模な公共施設を建設することは都市計画の変更を通じて可能である。
ましてや、元々農地(田んぼ等)であった土地を先人たちが多大な労力と予算をかけて公共用地(学校用地)として確保し、そこに長年存在し続けてきた既存不適格ではない合法な建築物を、防災という明確かつ公益的な目的のために存置・改修することに対して、法的な壁が乗り越えられないはずがない。
すなわち、「市街化調整区域だから難しい」というのは、単に時間と労力を惜しむための行政側の官僚主義的・怠慢な言い訳に過ぎず、市長および市当局に「市民の命を守るためにこの土地を絶対に手放さない」という強固な政策的意志があれば、正当な手続きを経て公有地として凍結し、目的外使用へと移行させることは十分に可能なのである。
4. 近隣自治体における防災インフラ投資の好対照と先進事例
弥富市が直面する課題に対する最適解と、誤った選択がもたらす悲劇的結末は、同じ海部地域に属し、同様に海抜ゼロメートル地帯という過酷な水害リスクを抱える近隣自治体(蟹江町、飛島村)の取り組みとの比較において最も鮮明に浮かび上がる。
4.1 愛知県蟹江町「希望の丘広場」――廃校のフェーズフリー拠点化の成功モデル
弥富市のすぐ隣に位置する蟹江町は、統廃合によって閉校となった旧愛知県立蟹江高等学校の広大な跡地を民間へ売却することなく、町民の日常的な憩いの場と大規模災害時の強靭な防災拠点を兼ね備えた「希望の丘広場」として劇的に再生させた 。
この事例は、弥富市が統廃合対象の4小学校跡地をどう扱うべきかについての、完全な青写真(ロールモデル)である。
蟹江町のプロジェクトは以下の二つの柱から構成されている。
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「希望の丘」(人工高台の造成とグラウンドの活用): 学校の広大なグラウンド部分を活用し、高さ4.5m(海抜3.5m)の巨大な人工高台(築山)を造成した。これにより、伊勢湾台風クラスの大洪水や津波が発生し、周囲が水没した場合でも、浸水面より約2.5m高い位置に500人の町民が安全に一時避難可能なオープンスペースを確保している 。
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管理棟(旧校舎)の多目的利用と垂直避難機能: 旧蟹江高校のRC造校舎を全て解体するのではなく、構造的に強固な部分を社会教育施設兼防災施設として保存・活用している。3階、4階、および屋上にそれぞれ250人ずつ、計750人が一時避難(垂直避難)できる構造となっており、4階には大規模な防災倉庫が完備されている 。
さらに重要なのは、この施設が「フェーズフリー(日常時と非常時の垣根をなくし、平時から利用できる防災施設)」の概念を体現している点である。
平時において、3階のマルチスペースには大型の鏡が設置され、フラダンスやダンスグループの練習、地域の会議に利用されている 。
また、屋外には洗い場付きのバーベキュー炉が10基(炉付き5基、耐火スペース5基)整備され、芝生広場や散策路とともに、町民の日常的なレクリエーション空間として定着している 。
既存の堅牢な教育建築を残し、グラウンドと一体化させることで、莫大な新規建設費を抑制しながら、平時のQOL(生活の質)向上と有事の圧倒的な防災力を両立させた蟹江町の英断は、弥富市が直ちに模倣すべき最良の施策である。
4.2 飛島村の徹底した津波避難施設整備――財政力が証明する「高台」の価値
一方、弥富市の東に隣接し、日本有数の豊かな財政力を持つことで知られる飛島村の取り組みは、海抜ゼロメートル地帯において「命を守るための高さ」を確保することがいかに高コストであり、かつ必須の事業であるかを逆説的に証明している。
飛島村は、巨大地震に伴う津波および高潮から村民の命を守るため、巨額の予算を投じて「新政成一時避難所」「服岡一時避難所」「北拠点避難所」といった専用の津波避難施設を村内各所に次々と新設している 。
これらの施設は、単なる鉄塔や屋外階段ではなく、3階建てから4階建ての堅牢な構造を持ち、内部に住民が安全に待機できるスペースを備えた専用の防災タワーである。家具の転倒防止やガラス飛散防止など、内部の安全対策についても緻密なマニュアルが作成されている 。
飛島村がこれほどまでに莫大な予算をかけて「高い建物」をゼロから建設しているのは、海抜ゼロメートル地帯における唯一の生存戦略が「堅牢なRC造の3階以上に逃げること」以外に存在しないからである。
この事実を弥富市の現状に翻って考えたとき、市の計画の異常性が浮き彫りになる。
弥富市には飛島村のように次々と数億円規模の専用避難タワーを新設する財政的余裕はない。
しかし、弥富市にはすでに、大藤小学校、栄南小学校、十四山東部小学校、十四山西部小学校という、飛島村の津波避難タワーと同等以上の機能(RC造、3階以上の高さ、広い面積、電気・水道のインフラ)を備えた建物が、各地区に「完成した状態」で存在しているのである。
これを数億円ぽっちの目先の売却益のために手放し、10年後、20年後に南海トラフ地震が目前に迫った段階で「やはり南部地域に避難タワーが必要だ」と気づいても、手遅れである。
その時に再び用地を買収し、資材価格が高騰する中で新たな施設を建設しようとすれば、売却益の何十倍もの血税を投入しなければならなくなる。
5. 南海トラフ地震に備えた「学校跡地・福祉避難所コンバージョン計画」の具体的提言
以上の多角的な分析を踏まえ、弥富市は統合予定の4小学校(大藤、栄南、十四山東部、十四山西部)の用地および建物を売却・貸与対象から即刻除外し、以下の具体的なアプローチを通じて「広域福祉防災拠点」へと改修・運用していくべきである。
5.1 既存校舎の「福祉避難所」への漸進的コンバージョンと特化型利用
統合により教育活動が行われなくなった校舎は、市街化区域の小学校が抱える「早期の学校再開(授業再開)」という致命的な制約から完全に解放される。
したがって、数ヶ月から年単位に及ぶ長期的な避難生活の場、とりわけ前述した4,000人規模の後期高齢者や要配慮者を受け入れるための「福祉避難所」としてこれ以上ない完璧な条件を備えている。
建物を完全な無人状態にして放置すれば、急速な老朽化と治安の悪化を招くため、使用可能な部屋は平時から目的を持って維持管理し、有事には即座に特定の機能を果たすようデザインしておく必要がある。
福祉避難所としての機能要件を満たすためには、文部科学省のガイドライン に従い、在宅酸素療法等のための非常用電源の確保や、多様な情報伝達手段(FAX、文字放送)の整備が必要となる。
また、高齢者の垂直移動を支援するため、長期的には国や県の災害対策補助金を活用してホームエレベーターを設置することが望ましい。
しかし、財政的に即時対応が困難であっても、まずは「スペースとして確保・用意しておく」ことが最重要である。
当面の措置として、比較的安価なキャタピラー式の階段昇降機(車椅子用補助具)等を配備し、1階および2階を優先的に要支援度の高い高齢者向けに割り当てることで、十分に対応可能である。
5.2 広大なグラウンドの「仮設住宅用地」および「車中泊避難拠点」としての事前指定
東日本大震災や能登半島地震など、近年の大規模災害における最大の教訓の一つは、「災害後に仮設住宅を建設するためのまとまった公有地が見つからず、復興が著しく遅滞する」という事実である。
弥富市の場合、人口が密集する市街化区域(北部)で大規模火災や家屋倒壊が発生し、被災者が住居を失ったとしても、その市街化区域内に新たに仮設住宅用の用地を取得すること、あるいは平時から空き地として「寝かせておく」ことは地価や都市計画の観点から事実上不可能である。
だからこそ、市街化調整区域に位置する統合後の各小学校の広大なグラウンドは、周辺の地域住民だけでなく、市街化区域の市民を受け入れるための「弥富市全体の広域的な仮設住宅建設予定地」として、総合計画等に事前指定しておくべきである。
さらに、仮設住宅が建設されるまでの期間(発災直後から数週間)、グラウンドは「車中泊避難所」として極めて有効に機能する。
体育館などでの集団生活に強い心理的ストレスを感じる被災者、発達障害を持つ家族がいる世帯、あるいはペット同伴の被災者にとって、プライバシーが保たれる車中泊は重要な選択肢となっている。
平時からグラウンドの一部にマンホールトイレ、屋外手洗い場、非常用電源ポスト(EV車からの給電設備含む)を整備しておくことで、無秩序な車中泊によるエコノミークラス症候群を防ぎ、安全かつ衛生的な車中泊避難コミュニティを形成することができる。
5.3 消防団詰所の学校敷地内への移転集約と「生きたコミュニティ」の維持
施設を維持管理し、防犯性を高めるための最も現実的かつ効果的な手段は、各地区の「消防団の詰所」を小学校の敷地内(空き教室等)へ移転・集約させることである。
現在、弥富市の南部地域等における消防団の詰所は、非常に古い脆弱な建物が多く、耐震性や設備面で課題を抱えているケースが散見される。
大藤地区をはじめとする各地区の消防団拠点を、堅牢な大藤小学校等の跡地に統合すれば、以下のような絶大な相乗効果が生まれる。
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地域の防災リーダーである消防団員が日常的に施設に出入りすることで、建物の劣化を防ぎ、不審者の侵入を抑止する「目」となる。
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「なるべくそこに人が集まる仕組み」が形成され、廃校が再び地域コミュニティのハブとして蘇る。
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発災時、消防団員が既にその場所にいるため、即座に施設を開放し、避難所の初動運営や資機材の展開をシームレスに行うことができる。これは、マンパワー不足に悩む行政の災害初動対応を完璧に補完するシステムとなる。
5.4 防災会・自治会を巻き込んだ「1泊2日・実践的避難所シミュレーション」の実施
施設を物理的に保持するだけでなく、それを運用するソフトウェア(住民の防災リテラシーと広域連携)の強化も不可欠である。
南部地域の学校を広域避難拠点として機能させるためには、「自分が住む北部の地域が被災した場合、南部の施設へ移動して避難生活を送る」という具体的な動線を、市民に体感させる必要がある。
このため、白鳥、弥生、桜、日の出といった市街化区域(北部・中心部)の防災会や自治会の役員、地域住民を積極的に招き、大藤小学校や十四山東部小学校などを舞台として、平時から「1泊2日の本格的な避難所体験訓練・運営シミュレーション」を実施すべきである。
地元の小学校での避難訓練にはもちろん意義があるが、前述の通り地元の小学校はすぐに授業再開を目指すため、長期滞在はできない。
したがって、「最悪の事態には南部の学校跡地(福祉避難所・広域避難所)に移動して展開する」というシミュレーションを合同で行うことで、地域間の相互理解が深まり、弥富市全体の防災ネットワークが有機的に結びつく。
こうした最先端の利活用方法は、単なる「施設の維持」を超えた、市民参加型の巨大な防災教育プログラムとなる。
6. 政策決定プロセスへの市民参画と議会の果たすべき役割
現在、市当局が主導しているサウンディング調査や財産処分の方針は、財政的要請のみが先行し、市民の生命を守るという行政の根本的使命をないがしろにする危険性を孕んでいる。
しかし、過去には弥富市においても、十四山中学校の跡地活用案に関して、住民の切実な声と反対運動によって現行案が白紙撤回され、地域の意向が反映されたという重要な成功体験が存在する 。
この民主主義的なプロセスに倣い、市民および市議会は以下の行動を組織的に展開し、行政の暴走に歯止めをかける必要がある。
請願・陳情を通じた議会からのストップ:
市民の総意として、弥富市議会に対して「統合予定の小学校用地の民間売却凍結」および「地域防災・福祉避難所拠点としての保存・活用」を求める請願書を提出する。
議会は行政のチェック機関として、目先の借金返済のために将来の安全を売り渡すような拙速な売却方針に対し、明確にストップをかけなければならない。
委託調査および財産処分プロセスの情報公開要求:
コンサルタントに丸投げされているサウンディング調査の内容や、市役所内部で進められている財産処分のプロセスに関する徹底した情報公開を要求する 。
市民不在のまま、行政と一部の民間企業の都合だけで土地が処理される密室政治を防ぐ。
総合計画および地域防災計画への「位置づけ」:
市が現在策定中、あるいは今後見直しを行う「弥富市総合計画」および「地域防災計画」のマスタープランの中に、当該学校跡地群を「福祉避難所、仮設住宅建設予定地、および地域活動拠点」として明確に明記(位置づけ)するよう、審議会等を通じて強く働きかける。
計画に一度位置づけられれば、行政の独断による売却は事実上不可能となる。
結論
弥富市が現在直面している学校統廃合に伴う公有地の取り扱い問題は、単なる「余剰となった公共施設の処分・財源確保策」といった次元の話ではない。
それは、目前に迫る南海トラフ巨大地震という国家存亡の危機と、市民の半数以上を後期高齢者が占めるという未曾有の人口動態の変化に対し、弥富市が市民の命をどう守り抜くかという「都市の生存戦略(サバイバル・ストラテジー)」の根幹に関わる問題である。
駅周辺の開発や区画整理事業によって膨らんだ70億円規模の市債の穴埋めをするために、先人たちが心血を注いで整備してきた頑強なRC造の学校施設と、代替不可能な市街化調整区域の広大な公有地を民間資本に切り売りすることは、行政の極端な近視眼に基づく自己否定である。
南部地域の環境悪化(植民地化)を放置し、防災インフラまでをも剥奪する行為は、将来の市民に対する重大な背信行為と言わざるを得ない。
隣接する蟹江町が旧高校跡地を人工高台と多目的拠点に再生させ、飛島村が巨費を投じて津波避難タワーを建設している事実が示すように、海抜ゼロメートル地帯における「堅牢な高層建築と広大な土地」は、何物にも代えがたい究極の防災資産である。
都市計画法制(地区計画等の活用)や文部科学省のガイドラインは、これらの資産を適法かつ効果的に「フェーズフリーな広域防災拠点」「福祉避難所」「仮設住宅用地」として転用・コンバージョンする道筋を明確に示している。
弥富市当局および市議会は、サウンディング調査を隠れ蓑にした安易な土地売却方針を直ちに撤回すべきである。
そして、消防団拠点の集約、地域間の避難シミュレーションの実施、福祉避難所としての段階的整備といった具体的なソフトウェアの充実を伴う、市民参加型の「百年大計の防災ネットワーク構築」へと大きく舵を切ることが強く求められる。
本報告書で提示した包括的な青写真が、弥富市を真に災害に強いレジリエントな都市へと導くための政策的羅針盤となることを確信する。
