【提言書】大規模災害を見据えた「新しい災害ボランティア受け入れ体制」の構築に向けて
〜阪神・淡路大震災から30年の教訓を弥富市の「受援力」に変えるために〜
1. 提言の背景と弥富市の課題
弥富市は海抜ゼロメートル地帯が広がり、ひとたび巨大地震や大規模水害が発生すれば、広域かつ長期的な被害が予想されます。復旧・復興には全国からのボランティアの力が不可欠ですが、過去30年の日本の災害対応の歴史において、ボランティアのあり方は大きく変質しています。
「被災者に寄り添う自発的な活動」から「システム化された消費的な活動」への変化、社会福祉協議会(社協)への過度な負担集中、行政の事務負担のパンクなど、現在の災害ボランティア体制は制度疲労を起こしています。
弥富市が最悪の事態において外部からの支援を最大限に活かし、市民の命と生活を守り抜くために、以下の5項目を提言いたします。
2. 弥富市への提言
提言①:社会福祉協議会(社協)の本来機能の保護と「ボラセン運営」の分離・協働
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課題の背景: 近年の災害では、災害ボランティアセンター(ボラセン)の運営が事実上「社協の専権事項」となりつつあります。結果として、社協がボランティアの受付やマッチングといった「ボランティアのための対応」に忙殺され、社協本来の強みである「被災した地域住民(特に高齢者や障害者などの要配慮者)へのコミュニティワーク・生活支援」が削がれるという本末転倒な事態が起きています。
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弥富市への提言: 災害時、浸水等で深刻な被害を受ける要配慮者を守るため、社協には本来の福祉・アウトリーチ業務に専念させるべきです。災害ボラセンの運営(特に一般ボランティアのロジスティクスや受付業務)については、市が主体となり、地元のNPO、青年会議所、商工会、大学等と平時から協定を結び、**「社協単独に丸投げしない、地域協働型のボラセン運営体制」**を構築してください。
提言②:一般ボランティアと専門ボランティアの「併存」を前提とした制度設計
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課題の背景: ボランティアは現在、重機操作や技術支援ができる「専門団体」と、片付け等を行う「一般市民」に二極化しています。行政側の管理のしやすさから「登録済みの専門団体しか受け入れない」という排除の論理が働きやすくなっています。
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弥富市への提言: 災害時、「何か手伝いたい」という市民の初期衝動を抑圧・拒絶する制度であってはなりません。専門家による高度な復旧作業と、一般ボランティアによる寄り添いや泥かきは、目的が異なります。 弥富市は、「専門NPO向けのホットライン(高度な調整窓口)」と「一般ボランティア向けの窓口」を明確に分けたデュアル(併存)システムを平時から設計し、多様な善意を取りこぼさない「懐の深い受援体制」を準備してください。
提言③:行政の事務パンクを防ぐ「後方支援(バックオフィス)」の事前確保
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課題の背景: 災害救助法が適用されると、制度上は都道府県が救助主体となりますが、実態としては即座に被災市町村へ事務が委任(丸投げ)されます。危機管理専任の部署が少ない市町村レベルでは、膨大な事務処理に追われ、現場対応が麻痺します。
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弥富市への提言: 発災時、市役所職員だけで災害対策本部の運営、国・県との調整、ボランティア団体との連携を回すことは不可能です。平時から、他県・他市町村への応援要請のスキームを具体化するとともに、民間の中間支援組織(JVOAD等)や企業のバックオフィス支援機能と協定を結び、**「行政事務のアウトソーシング(外部委託)」**の仕組みを準備しておくことが不可欠です。
提言④:「消費者化したボランティア」を「伴走者」に変える現場づくり
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課題の背景: 30年前の「被災者を直接手伝う達成感」が薄れ、現在はシステム化されたボラセンの指示に従うだけの「消費者民主主義的」なボランティアが増加しています。これは作業効率を生む反面、被災者の心の回復に繋がる「人間的な触れ合い」を喪失させています。
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弥富市への提言: ボランティアを単なる「無償の労働力・作業員」として扱うシステムを見直す必要があります。泥出しや家財の搬出が終わった後も、お茶飲み話の相手やコミュニティの再建に寄り添えるよう、作業効率だけでなく「被災者とボランティアの人格的な関わり合い」を意図的に生み出すプログラム(お茶会、足湯ボランティアの積極的導入など)をボラセンの運営方針に組み込んでください。
提言⑤:「文体のアドボカシー」による被災地の「声」の的確な発信
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課題の背景: 被災地から外部への発信は、「○○が足りない、○○をしてほしい」という行政への陳情・提言に偏りがちです。しかし、これでは支援者側との間に「要求と受託」という硬直した関係しか生まれません。
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弥富市への提言: 被災時、全国から適切な支援と共感を集めるためには、市の広報や情報発信において**「文体」の工夫**が求められます。単なる物資の要求ではなく、「今、現場ではこういう事実が起きています」という客観的な確認や、声を上げられない被災者の「生のつぶやき・その背後にある風景」をそのまま伝える広報戦略が必要です。時にはユーモアも交えながら、無関心層にも「関心を持ってもらう入り口」を作る広報・情報発信のスキルを平時から磨いておくべきです。
結びに
阪神・淡路大震災から30年を経て、災害ボランティアシステムは成熟しましたが、同時に「人間同士の繋がり」や「柔軟性」を失いつつあるという危機感が現場の専門家から示されています。 弥富市が将来の激甚災害に立ち向かうためには、国や県が用意する一律のシステムに盲従するのではなく、地域特性(ゼロメートル地帯等)に合わせた**「独自の柔軟な受援ルール」**を確立し、市民の命と地域の絆を守り抜く姿勢が求められます。本提言が、その議論の一助となることを願っております。
