「必要な支援を、タイムリーに確実に届けるためには何が必要なのか――。」 阪神・淡路大震災から能登半島地震まで、長年にわたり災害支援の最前線に立ち続ける「親子支援・災害看護支援 てとめっと」代表・山中弓子氏による特別講座が開催されました。本記事では、公的支援の死角を埋める「多職種連携(三者連携)」の重要性や、避難所の過酷な環境を改善する「TKB(トイレ・キッチン・ベッド)」の取り組み、そしてナイチンゲールの教えに基づく「被災者に害を与えない」支援のあり方について、現場のリアルな声とともにお届けします。いつ起こるかわからない災害に備え、私たちが今知っておくべき「命を守るつながり」のヒントがここにあります。
2025年11月1日 ゼロメートル防災講座 開催報告
~能登半島地震の現場から学ぶ、災害のリアル~
講座の内容を、要点を絞ってわかりやすくまとめました。
ゼロメートル防災講座 サマリー
~能登半島地震の現場から学ぶ、災害のリアル~
本講座は、「親子支援・災害看護支援 てとめっと」代表の山中弓子氏が、長年の災害支援経験に基づき、タイムリーで確実な支援を届けるための「多職種連携」と「避難所環境の改善」について解説したものです。
1. 過去の災害から見えた課題と教訓
山中氏が現場で直面した課題から、災害支援において「公的支援の死角」をカバーする体制づくりが急務であることが示されました。
| 発生災害 | 現場での主な課題 | 今後に向けた教訓・対策 |
| 阪神・淡路大震災 | 高齢者の体調悪化・孤立、公的な連携体制の欠如 | ナイチンゲールの教えに基づく徹底した避難所の環境整備 |
| 熊本地震 | 民間施設など公的支援が届かない「死角」の発生 | 平時からのBCP構築と、多様な主体による多職種連携 |
| 西日本豪雨 | 名簿があっても救えなかった要配慮者の逃げ遅れ | 実効性のある「個別避難計画」の作成と福祉避難スペースの確保 |
2. 命を守る「三者連携」と支援の仕組み
被災地で支援を円滑に届けるためには、単独の組織ではなく、それぞれの強みを活かした連携が不可欠です。
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三者連携の確立: 公的権限を持つ「自治体」、地域福祉を担う「社協」、機動力のある「民間(NPO)」が連携し、中間支援組織(JVOAD等)がそれを調整する。
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切れ目ない支援: 避難所退所後も孤立を防ぐため、「支え合いセンター」への引継ぎや、看護職の24時間常駐などの中長期的なケア体制を整える。
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伴走型の生活再建: お金や法律が絡む複雑な手続きを、被災者が「自分でできるようになる」まで専門職(士業など)を交えてサポートする。
3. 被災者に「害を与えない」ための環境改善(TKB)
ナイチンゲールの「病院は患者に害を与えるところであってはならない」という理念を災害支援に応用し、被災者の生命力を奪わない「ユニバーサルな避難所」づくりが提唱されています。
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T(トイレ): 和式トイレの洋式化、手すりやナースコールの設置による安全・衛生確保。
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K(キッチン): 冷たい弁当だけでなく、温かく栄養のある食事や、自ら調理できる「簡易キッチン」の導入による気力・認知機能の維持。
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B(ベッド・バス): 段ボールベッドや適切な高さのパーテーションによるプライバシー保護。自衛隊風呂に入れない要配慮者向けの個別浴槽・介助サポートの提供。
4. 心のケアと支援を届ける「つながり」
避難所生活や生活再建の過程では、身体的なケアだけでなく、喪失体験に対する心理的アプローチが重要です。
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グリーフケアの実践: オキシトシン(安らぎのホルモン)の分泌を促すタッチケアや、交流サロンの開催を通じてストレスを緩和する。
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マッチングシステムの構築: 支援に行きたい専門職と被災地のニーズをつなぐ公的システムが不足しているため、「てとめっと」のようなネットワークがその役割を担う。
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平時からのネットワーク: 災害時に孤立せず支援を受け取るためには、日頃から地域や多職種と「つながる工夫」をしておくことが最大の防御となる。
🤝 災害支援の現場から学ぶ:タイムリーで確実な支援を届ける「多職種連携」の鍵🔑
親子支援・災害看護支援ネットワーク「「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」」代表の山中氏が、阪神・淡路大震災から能登半島地震に至るまでの豊富な現場経験に基づき、「必要な支援を、必要なところへ、タイムリーに確実に届ける」ための極意を解説してもらいました。
💡 第1部のハイライト:災害看護と連携の原点
- 「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」の理念と活動:看護の「手」(優しい手、正しい技術)と「目」(優しい眼差し、確かなアセスメント)を届けるネットワーク。阪神・淡路大震災での避難所運営経験から、看護師となり災害看護支援を専門に。
- 阪神・淡路大震災の教訓:高齢者中心の避難所での体調悪化・孤立、そして公的な連携体制の欠如が課題に。支援のあり方を決めたのは、黙々と高齢者ケアと環境整備を行った一人のベテラン看護師との出会い。
- 看護の原点:ナイチンゲールの『看護覚書』の教え(新鮮な空気、清潔さ、暖かさなど)が、避難所の環境改善、ひいては被災者の生命力の消耗を最小限にするための答えであると確信。
- 熊本地震の教訓:公的支援が届きにくい民間医療・福祉施設や自治会が崩壊した団地の課題が浮き彫りに。平時のBCP構築と、行政・社協・NPO、地域の力、士業職といった多職種・多様な主体との連携協働が不可欠。
🌐 第2部・第3部のハイライト:実践的な支援の仕組みと人道的配慮
- 支援のコーディネート:被災地で機能する自治体・社協・民間(NPO)の「三者連携」の仕組みを解説。その円滑化を担う中間支援組織 JVOADの重要性。
- 長期化への対応:避難所退所後の孤立を防ぐ「支え合いセンター」の機能、そして避難所の長期化に備えた看護職の24時間体制常駐の必要性。
- 要配慮者支援の失敗と教訓:水没した福祉避難所、車中泊でドッグフードをかじった母子の事例、避難行動要支援者名簿が機能しなかった真備町の悲劇から、個別避難計画の作成と、一般避難所に「福祉避難スペース」を設ける提案。
- ユニバーサルな避難:和式トイレ、段差、介助が必要な方の入浴など、避難所の環境が「避難しない」リスクを高めていると警鐘。誰もが安心して避難できる「ユニバーサルな避難所」への改善(TKB:トイレ、キッチン、ベッド/バスの改善)の具体策を提示。
- 人道的な支援:ナイチンゲールの教えに基づき、支援が被災者に負荷を与える「害」となってはならないと強調。個別のニーズに応える伴走型の生活再建サポートと、グリーフケアの重要性を訴える。
✨ 結論:あなたを支えるのは「つながり」
支援の鍵は、「多職種との連携協働」です。災害時に孤立せず、必要な支援が届くように、日頃から様々な人や組織と「つながる工夫」を続けることが、あなたと地域を力強く支えます。
この講演は、災害支援における連携の重要性と、人道的な配慮に基づいた現場の具体的な課題と解決策を知る上で非常に貴重な内容です。
「「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」」の詳細や、具体的な支援活動についてさらに知りたいことはありますか?
第1部
📢 必要な支援をタイムリーに確実に届けるために
親子支援・災害看護支援ネットワーク「「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」」代表の山中がお送りする今回の防災講座は、「必要な支援を必要なところへタイムリーに確実に届けるために」と題し、災害支援の現場経験から得られた知見と、多職種連携・協働の重要性について解説します。
- 🤝 「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」の理念とこれまでの活動
「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」の紹介
- 名前の意味: 看護の「手」(優しい手、正しい技術)と「目」(優しい眼差し、確かなアセスメント=観察)を届ける人々のネットワーク。
- 理念: 支援が必要なところへ、必要な支援をタイムリーに確実に届けることを目指し、他職種の連携を組んで活動。
災害支援の経緯と主な活動地
山中氏は阪神・淡路大震災で被災し、避難所運営支援に関わった経験をきっかけに災害支援に関わるようになりました。40歳で看護学校に入学し、看護師となった後、親子支援事業所を立ち上げる直前の2016年、熊本地震が発生したことで、災害看護支援を専門として従事することになります。
| 被災地/活動 | 期間・きっかけ | 支援の要点 |
| 阪神・淡路大震災 | 自身が被災。避難所運営支援がきっかけ。 | 高齢者の体調管理や避難所退所後の生活継続支援に課題を感じる。 |
| 熊本地震 | 2016年。退職から1週間後に発生し参入。 | NPO(九州基礎災害支援センター:九期祭)のスタッフとして中長期支援に従事。 |
| 九州北部豪雨・西日本豪雨 | 2017年、2018年。 | 九期祭からの派遣として支援。 |
| 令和4年福島県沖地震 | 2022年。1年間支援。 | |
| 東日本大震災後 | 避難困難区域解除後の在宅医療・看護・介護の整備をサポート。 | 訪問看護ステーションの立ち上げサポートに1年間従事。 |
| 能登半島地震 | 2024年。(後ほど詳細を話す) |
災害支援の活動内容
中長期支援では、避難所運営支援、災害看護支援、地域の看護やコミュニティ支援、ストレスケア、そして支援が届きにくい親子の支援などを、多様な職種と連携・協働しながら行っています。
| 支援分野 | 具体的な内容 |
| 災害看護支援 | 高齢者団地の安否確認、健康相談会、医療機関・高齢者施設への専門職派遣、車中泊の方々の健康支援など、生活全般を支援。 |
| 親子支援 | 保健師、助産師、保育所などと連携し、託児、子どもたちのストレス緩和(キャンプ、遠足)、絵本読み聞かせなど。特に初めて出産する母親のケア。避難所(小学校が多い)での子どもたちの発達段階をストップさせないよう、学校の先生たちとも連携。 |
- 👵 阪神・淡路大震災の教訓:高齢者支援と環境整備
避難所での高齢者の課題
山中氏が支援に入った避難所(東灘区・本山第三小学校)では、最大避難者数約4,000人のうち70%以上が高齢者で、その多くが独居や身寄りがない状況でした。
- 体調の悪化: 慣れない避難生活で体調を崩す、認知症が進むといったケースが多数発生。
- 支援の難航: 地域のつながりが難しい都会の状況で、名前や住所の聞き取り、身寄りを探すことが困難を極めた。
- 連携体制の課題: 社協や役場と「避難所にいて安全か」という判断も含めて連携・協働を図ったが、当時はその連携協働を図る体制自体がなく、難航した。
- 退所後の課題: 避難所退所後の生活につなぐところまで手が回らず、一部の方にしか訪問支援などができませんでした。
看護師との出会い:支援のあり方を決めた出来事
避難所運営が難航し、感染症の流行やボランティア采配の疲弊で大変な状況の中、新潟から一人の年配の看護師が来援しました。
- 行動: その看護師は、水回りの清掃、換気、高齢者のバイタル測定と体調管理、おむつ交換、清拭などを黙々と実施。
- 影響: この方一人の存在が、避難住民だけでなく、ボランティアにとっても非常に心強く、「大きな働き」でした。この出会いこそが、山中氏が看護師になり、災害看護支援をすると決める大きなきっかけとなりました。
避難所の状況とナイチンゲールの教え
当時の避難所は大人も子どもも高齢者もぎゅうぎゅう詰めでした。コロナ以降はパーティションやテントが使われるようになりましたが、初期は特に安全・安心の確保が重要です。
山中氏は看護学校でナイチンゲールの『看護覚書』に出会い、避難所の状況を改善する答えがここにあると確信しました。
「看護とは、新鮮な空気、よく暖かさ、清潔さ、静かさなどを適切に整え…これらを生かして用いること…すべてを患者の(被災した人々の)生命力の消耗を最小にするように整えることを意味するべきである」
- 🚨 熊本地震の教訓:公的支援の課題と連携
公的支援の届かない現場
熊本地震の支援で特にわかったのは、公的支援が全く入らない領域があることでした。
- 民間医療・福祉施設: 日赤や特殊会など系列の施設には他地区からの応援が来ますが、民間の病院や個人病院、福祉事業所にはDMAT/JMATが入ることはなく、スタッフも被災しているため、非常に大変な状況でした。
- 居住情報の欠如: 自治会が崩壊した公営団地では、役場も住民の安否や居住状況を把握していない現状があり、消防団とナースチームなどの多職種が連携して安否確認を行いました。
災害時に必要な準備と連携
この状況を受け、支援が届くようにするために、以下の点が課題・提言されています。
- 平時のBCP構築と応援要請の明確化:
- 事業所や医療機関は、災害時に誰に、どんな応援を頼むかを平時のうちから具体的に決めておくべきです。
- 応援スタッフが来た際、その対応に追われて疲弊しないよう、何を頼むかまで決めておくことが重要です。
- 多職種・多様な主体との連携協働:
- 看護や専門職だけでは対応できないことが多く、人とのつながりが力強く支えてくれます。
- 行政、社協、NPOに加え、地域の力(民生委員、区長、消防団、PTA、子供食堂、農協、宅配・新聞配達業者など)とも連携を図りながら支えていく必要があります。
- 士業職との連携:
- 最近の問題として、士業職(弁護士、建築士、ファイナンシャルプランナーなど)との連携が非常に重要です。例えば、半壊未満で支援が少ない方の相談を弁護士につないだり、家の修理や資金の工面について専門家につなぐことが、支援に入る側にとって大事な役割となります。
- 情報共有と横の連携:
- 個人情報の壁などで医療と福祉の連携が取りにくい現状もありますが、支援が必要なところに必要な支援が届くよう、しっかり横の連携をつなぐ必要があります。
- 📝 結論と次に向けたバトンタッチ
今、話した中で最も大切なのは、「多職種との連携協働」です。
人とのつながり、連携協働が皆さんを力強く支えてくれますので、日頃からつながるよう工夫してください。この後、「自治体と社協、民間の三者連携」が実際にどのように連携協働を図っていくかについて、話を進めたいと思います。
第2部
-
🤝 支援のコーディネートを担う三者連携とネットワーク
先ほどの第1部では、連携協働の重要性についてお話ししましたが、第2部ではさらに詳しく、被災地で機能する連携の仕組みについて解説します。
被災地で組まれる「三者連携」
現在、被災地では、以下の三者が連携協働を図りながら、支援のコーディネートや課題解決を行っています。
- 自治体(行政): 内閣府など、公的な権限を持つ組織。
- 社会福祉協議会(社協): 地域福祉の専門組織。
- 民間(NPO): 単独ボランティア、大規模な支援団体など。
この三者が一つのテーブルにつき、「どんな課題がどこで上がっていて、どんな支援が必要なのか」という情報を持ち寄り、それぞれが持つ得意分野(得手・不得手)を活かしながら、一日でも早い復旧・復興を目指して支援をつないでいます。
中間支援組織 JVOADの役割
この三者連携を円滑に進めるための「中間支援」と呼ばれる組織が、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)です。
- 役割:
- 行政、社協、民間(支援団体)の情報共有会議を開き、連携を促進。
- 支援の調整を実施し、被災者支援における問題・課題解決をサポート。
- メリット:
- JVOADにアクセスすることで、お金、物資、人、知恵などが動く相乗効果が生まれます。
- 「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」も会員として、自分たちだけでは解決できない課題を相談し、支援につなげることができています。
- 🏘️ 避難生活の長期化と見守り体制
応急仮設住宅と「支え合いセンター」
避難所生活から応急仮設住宅への移行が始まると、各地域で「支え合いセンター」という機能が立ち上がります(名称は地域によって異なります)。
- 機能:
- 在宅避難者、応急仮設住宅入居者、みなし仮設入居者、県外避難者など、避難所を出た方々の見守り支援を担います。
24時間体制で看護職を常駐させた事例
九州北部豪雨・西日本豪雨の避難所運営では、「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」は看護職の24時間体制常駐という形を取りました。
- 従来の課題: DMATや災害支援ナースによる支援は通常1〜3ヶ月程度で撤退し、避難所が長期化(6ヶ月〜1年以上)しても看護職がいないケースが多かった。
- 24時間常駐の理由:
- 被災者は日中、片付けや手続き、仕事で避難所を離れるため、夕方帰宅後に体調を崩す(熱中症、怪我、体調不良)方が多いが、その時間に医療職がいないことが多かった。
- 夜間の不安も見守ることで、避難者の心の安全を守るため。
- 特に健康や福祉面でサポートが必要な避難所では、今後この体制を整える必要があると考えられます。
避難所退所時の「切れ目ない支援」
神戸の震災や熊本地震では、避難所退所後に仮設住宅へ移ってから「支え合いセンター」が立ち上がるまでに数ヶ月のタイムラグがあり、その間、誰とも会えず、体調を崩すケースが多くありました。
- 西日本豪雨での対応: 避難所を出る際、必ずどこかしらと支援をつないでから退所してもらう形を取りました。毎朝のミーティングに保健師、地域包括支援センター、訪問看護ステーションなどに参加してもらい、連携を図りました。
- ⚠️ 要配慮者支援の失敗と教訓
福祉的避難所の開設と対応
西日本豪雨の際、倉敷市内で指定された福祉避難所が水没やキャパシティ不足で機能せず、町外への避難を余儀なくされました。このため、地元の要望で福祉的避難所(臨時福祉避難所)を開設しました。
- 具体的な課題と対応:
- 物品の紛失: メガネ、補聴器、義歯、杖の紛失に対応。
- 健康問題: 環境変化と栄養バランスの悪い食事(おにぎり、パン、冷たい茶色い弁当)による便秘、体調不良、貧血が多発。グリーンコープと連携し、タンパク質や食物繊維、ビタミンが摂れる食事を毎日届けてもらった。
- 特別な配慮: 障害を持つ子ども、生活保護受給者、外国人(食事制限やお祈りの時間)など、多様な要配慮者への対応を実施。
💡 提言: 今後は、福祉避難所に行けない要配慮者のために、一般の避難所の中に「福祉避難スペース」を作り、専門スタッフを配置する必要があると感じています。
誰も支援の手を差し伸べられなかった事例
熊本地震で、家が全壊した寝たきりの娘を持つシングルマザーがいました。
- 状況: 娘の流動食は持ち出せたものの、自身が食べるものがなく、車中泊をしながら数日間ドッグフードをかじって過ごした。
- 悔しさ: 彼女が避難していた大きな避難所の周辺には、日赤、DMAT、保健師、災害支援ナース、そして私たちのチームも巡回に入っていました。しかし、プライバシーを気にして車中泊の方の車をノックすることを遠慮してしまい、彼女につながることができませんでした。
- 教訓: 「もっと連携を図れていたら、担当をちゃんと分けられていたら、こんな苦しい思いをさせなくて済んだ」と痛感しました。支援が必要な人に話が届くよう、連携協働が不可欠です。
西日本豪雨・真備町で起きた悲劇
倉敷市真備町では、51名が亡くなり、大半が自宅の1階部分で亡くなっています。
- 要因: 高齢者が多く、眠剤を飲んでいた可能性があること、大雨で防災無線や警報の音が聞こえなかったこと、水圧で扉が開かなかったことなどが挙げられます。
- 避難行動要支援者名簿の限界: 亡くなった方のうち42名が避難行動要支援者名簿に名前が記載されていたにもかかわらず、助かりませんでした。
- 教訓: 名簿に載っているだけでは助からない。当事者や家族だけでなく、地域も含めて、「より早く、安全に、確実に」命を救う方法を「個別避難計画書」に反映させる必要があります。
医療的ケア児・障害者への支援の課題
知的障害を持つ母親と娘が、避難場所が分からないまま水に囲まれ、亡くなった悲しいケースもありました。普段からご近所との関わりはあったものの、「まさか家の中でこんなことになっているとは」と気づけませんでした。
- 提言: 障害を持つ方々も、普段から避難所まで一緒に歩いて場所を伝えるなど、災害時にどうするかを地域でつながる必要があります。
- 🏠 避難行動計画とユニバーサルな避難
個別避難計画の作成を!
要配慮者だけでなく、健康な人も、「誰が」「誰と」「どこへ」「どうやって」「いつ」避難するかを具体的に決める「個別避難計画」を作成することを推奨します。
福祉避難所と「届出避難所」
- 福祉避難所: 従来は「二次避難所」(緊急避難所から移動)でしたが、現在ではガイドラインが改定され、緊急時にも直接避難できるようになっています。
- 届出避難所: 指定避難所以外の宗教施設(寺、神社、教会)、マンションの集会所、公民館、図書館などを、行政に届け出ることで「届出避難所」として認定できるシステムが一部地域にあります。
- メリット: リストに載ることで、物資や支援が届きやすくなったり、保健師の巡回ルートに入れてもらうことができます。遠くへの避難が困難な方々が、なるべく近い安全なところに逃げられるようにするための取り組みです。
多様な避難先を確保する
コロナ禍を経て、以下の場所も一時的な滞在施設として利用できることが知られています。
- 親戚宅、友人の家
- 車中泊避難
- 宿泊施設、スーパー銭湯
- カラオケボックス、ネットカフェ、ファミレス、テント泊
要は、「雨風が防げて、体を休めることができて、トイレがある」場所が避難先として使えます。
要配慮者が避難できないリスク
避難所の環境が整っていないと、「和式トイレしかないから」、「寝たきりの家族を連れて行っても電源やおむつ交換場所がない」といった理由で避難を諦め、命の危機にさらされるリスクがあります。
- 対策: 避難所の環境を整えること(ユニバーサルデザインの導入)は、「避難をしない」というリスクを下げるために非常に重要なことです。
避難所を「地域の災害支援ステーション」へ
避難所に届く物資は、避難している人たちのためだけでなく、ライフラインが止まって困っている地域住民全体のために届いています。
- 提言: 避難所が「避難者専用」となるのではなく、地域の災害支援のステーションになるように配慮し、誰もが安心して物資や情報を受け取れるようにする必要があります。
ユニバーサルな避難所とは、人道支援の国際基準である「スフィア・ハンドブック」に示されている通り、被災者が「尊厳のある生活、人道援助、保護と安全の権利」を持つことが守られ、誰もが安心して避難できる場所です。
- 📝 生活再建のサポート:複雑な手続きを乗り越える
伴走型の支援が必要
支援に入る側は、できることまで被災者に代わって行うのではなく、被災者が「自分でできるように」サポートしていく(伴走する)ことが必要です。
生活再建は、お金、法律、複雑な手続きなど、非常に大変な作業です。
- 能登での支援事例:
- 高齢者にとって、支援に関するプリントの字が細かく、申請用紙の日本語が難しいため、職員や支援者が付き添い、一緒に読み上げ、説明をしながら手続きを手伝う。
- 災害ケースマネジメントを得意とする弁護士を招き、公費解体の手続きや再建のための法的な説明会を開催し、専門的なサポートにつなぐ。
これらのサポートの方法があることをぜひ覚えておいてください。
第3部
災害支援の実際と人道的な配慮について
避難所運営支援の実際
避難所の支援だったりとか、現場の支援とかがどんなだったかというところです。
先に述べたセフィア・スタンダード(被災された方たちが自分の力で立ち上がっていくように支援を考えたり、その人の人権・人道的な支援が行われているか、ということを重視する考え方)に基づき、具体的にどんなことをしているかというと、避難所の運営支援の実際は以下の通りです。
- 全体との調整と市職員のサポート
- 全体との調整を行いながら、市職員をサポートし、共同を図っていきます。
- 指定避難所には市の職員さんが入られていることが多いので、その職員さんたちをサポートする形で、民間にしかできないこと(公平・平等を優先する行政ではやりにくい、個別ニーズへの対応)に専念してもらえるよう支援します。
- 民間は、公平を期すことが難しい「ここだけ特別」といった個別支援(この人にはこんな支援、この人にはこのサポート、など)が得意なので、そういったところのバランスを取りながら調整していきます。
- 環境整備、改善と調整
- 全体の環境整備、改善と調整、立ち上げから閉鎖までといったところも支援します。
- 行政の方は避難所の支援に慣れていないことが多いので、民間の方が「こういった備品を用意するといいですよ」「こんな風に環境を改善していくといいですよ」といったことを提案しながら、実際の調整と改善を行っていきます。
- 具体的には、感染対策や安全対策があります。
- 安全対策
- 高齢者や障害を持たれている方が多い場合、段差や手すりがないといったところが行動の範囲を狭くしてしまいます。
- 危ないところはテープを貼って注意を促したり、段差を解消する補助具を入れたりします。
- 手すりも、簡易のつっぱり棒タイプや、下に土台があって自立するタッチアップタイプのものを用意するなどして対策を考えます。
- 心身の健康ケアと福祉的配慮
- 専門職に入ってもらい、体操をしたり、水回りの清潔保持(感染対策として非常に大事)といった環境整備をしたりと、民間がサポートします。
- 食環境の改善
- 偏った栄養をどう改善していくかというところも、行政が街全体で改善するのは大変ですが、避難所ごとに支援者が入り、改善を図っていくことがスムーズな方法です。
- 閉鎖へ向けての様々な調整
- 避難所の集約(十数個立ち上がったものが、だんだん集約されて最後一つ二つになる)について、住民さんに理解していただく必要があります。
- 指定避難所は小中学校になるため、子どもたちに早く学校を返してあげたいという事情があります。
- かといって、避難されている方たちを急かしたり、傷つけたりするような雰囲気になってはいけません。また、感情を持たないまま閉鎖してしまうと、次に避難が必要な時に「二度と行くもんか」という思いにつながり、避難行動の妨げになることもあります。
- みんなが気持ちよく避難所を閉じて、自宅に戻る方、次の避難所へ移る方のサポートを、民間が丁寧にしていく必要があります。
民間の役割と専門職による中間支援
行政は住民さんと対立しやすい関係になりがちなので、私たち民間が中間支援として間を取り持つことが重要です。
特に看護職は、住民さんに「眠れてますか?」「ご飯食べれてますか?」「お家はどんなですか?」「悩みは?」「困っていることは?」と聞きつつ、それを行政に伝え、また行政のプランを聞いてそれを住民さんに伝える、という通訳の役割を果たし、調整ができます。
- 例えば、ライフラインの開通状況や、自宅までの道路の工事の進捗状況や計画などを住民に伝えることで、納得していただくというケースもありました。
また、避難所の集約のサポートや、「この人が一人で家に帰って大丈夫か」というのを日頃見ている私たちが、地域包括支援センターと連携しながら、仮設住宅が良いか、施設に行った方が良いかといったことを調整していく役割も担っています。
避難所解消後のケア
- 地域コミュニティの支援
- 被災した医療・福祉・看護施設の支援(職員さんが不足しているところに、人事職員として入ったり)
被災すると、あらゆる場所が大変なことになっています。
避難生活での基本的欲求と心身の健康
大変な方々の心身の健康をどう保っていくか、という点で、人には基本的欲求が備わっているという点を考えます。社会的存在として命・生命を維持するために必要なことです。(マズローやヘンダーソンが提唱している内容に類似)
- 生理的な必要(生命維持)
- 正常な呼吸(きれいな空気)、食事、排出
- 移動と体位の保持(歩行、行きたいところへ行けるか)
- 睡眠と休息
- 服装(季節・温度に合ったもの)
- 体温の維持、清潔(体が清潔に保たれているか)
- これらが整わないと、ものすごくストレスになります(例:トイレが汚くて行けない、夜眠れない、寒くて体温が保てない)。
- 安全の確保
- いる場所の安全が保たれているか。
- 雨風をしのげるか。
- 性被害(特に災害時は多い)など、様々な危険から安全が担保できているか。
- コミュニケーションと自己実現
- その人が大切にしているものがちゃんと大切にされているか(宗教など)。
- 周りの方たちとコミュニケーションが取れているか。居場所があるか。
- 尊重のニード(仕事ややるべきことができているか)。
- レクリエーション、学習、自己実現のニード(災害の場合、生活再建ができているか)。
これらの要素が崩れると、生命の危機にさらされることにもなるため、注意して見ていく必要があります。
ナイチンゲールの看護覚書と13の項目
ナイチンゲールの『看護覚書』に書かれている13の項目も、避難所の環境改善に役立ちます。
現在は、特に指定避難所では避難所マニュアルの作成が義務付けられています。様式は様々ですが、この13の項目はぜひ覚えていただきたいと思います。これらは、人間に備わっている自然治癒力に働きかけるもので、これらが整えられると、被災者が自ら立ち上がっていくきっかけとなりやすくなります。
- 換気と暖房
- 住居の健康
- 食物の管理
- (略)
- 変化(気分転換が図れるような、良い変化)
- (略)
- (略)
- ベッドと寝具
- 段ボールベッドは、ずれて落ちやすかったり、タイプによって使いにくさがあったりするため、注意が必要です。ベッドがずれないように補填するなどの工夫がいる場合があります。
- 太陽
- 大きな体育館などでは太陽の光が当たらなかったり、ジメジメした暗い避難所があったりします。心身の健康が崩れやすくなるため、外に出る機会を作ったり、光が入るような工夫が必要です。
- 部屋と壁の清潔、風通し
- カビだらけになるような壁や床、カビた段ボール箱の事例もありました。換気や布団干し、掃除が大事になります。
- 体の清潔
- お風呂に入れていない方が多くいらっしゃいます。
- おせっかいの励ましと忠告
- 被災地ではデマやいい加減な情報が出回りやすく、それによる詐欺被害(屋根の修理など)に遭うケースがあります。何が正しい情報かを伝える支援が大事になります。
- 病人の観察
- 病人だけでなく、避難されている方々の顔色、排出、睡眠、家の片付けなどの気配りが大切になります。
支援の姿勢:「害を与えてはならない」
ナイチンゲールは「病院は患者に害を与えるところであってはならない」と言っています。当時の病院が患者を実験道具のように扱っていたことへの怒りでした。
これと同様に、「災害支援は被災された方々に害を与えるものであってはならない」と私は言いたいと思います。
- 支援と言いながら、実際は被災者に負荷を与えてしまうことがあります。
- 例:水一本をもらうにも受付に行かないとダメ、生理用品やおむつが欲しいのに、男性が並ぶ受付でいちいち言わないともらえない、など。
- こうした人道的配慮がされていない状況で、人々が苦しむことがないようにする必要があります。
能登での支援活動と課題
支援は、様々なところと連携・協働を図りながら行う必要があります。
能登での活動
- 被害が甚大で、上下水道の復旧の遅れが皆さんを苦しめました。
- 青年海外協力隊のサポートに入る形で支援にあたりました。
- 特徴的だったのは、対口支援リエゾン会議(能登町に来ていた各都道府県・市町村からの応援職員との会議)で、慣れていない職員へのサポートに入ったりしました。
移動と宿泊の課題:ナーシングカー構想
- まず、寝泊まりするところがないという問題がありました。
- 能登半島は地形上、道が一本しかなく、かつ地震で道が崩落するなどして、片側通行や通行止めの場所がありました。
- 金沢に宿を取って通うのは難しいため、キャンピングカーを借りて現地入りしました。
- これは、熊本にいる時から考えていたナーシングカー構想(普段からキャンピングカーを災害看護支援に使えるようにする構想)の一環です。
- 看護の備品を積んでおけば、現場で救護室が開設できる。
- 感染隔離・療養室としても使える。
- 20時間しっかり支援に入る際、応援の看護師のための寝る場所・休憩場所を確保できる。
豪雨災害による二重の苦難
- 能登町では、地震の前に豪雨災害もありました。
- 住民さんが家を片付けたり、荷物を移したりしてやっと落ち着いたところに水害で全て流されたり、避難所を出たかと思ったらまた避難所に戻ったりという状況で、「心が折れる」とはこういうことだと痛感しました。
- 拠点の裏の川(普段は小川)が濁流となり、避難勧告が出たこともありました。
ナイチンゲールの言葉と歩みを止めない支援
ナイチンゲールは「災害支援とは、新鮮な空気、良好な温暖かさ、清潔さ、静かさなど適切に整え、これらを生かして用いること。また、食事内容を適切に選択し、適切に与えること。これら全てのことを被災した人々の生命力の消耗を最小にするように整えることを意味するべきである」と言っています。
発災→九世紀→仮設へ移行→中長期→再び発災という状況に対し、私たちが何ができるかを深く考えましたが、歩みを止めず、必要な支援を必要なところに届けられるよう支援を続けていきたいと思っています。
避難所での環境改善(TKB)
「TKB」とは、Toilet(トイレ)、Kitchen(キッチン)、Bed(ベッド)の頭文字で、48時間以内にこれらを整えようと提唱されているものです(TKB48)。これは、避難所生活の改善を提唱する学会が中心となって進めています。
T:トイレの問題
- 能登の実際の避難所のトイレは、まだ和式が多く、高齢者や膝の悪い方にはつらい状況でした。
- 下水回復が遅かったため、トイレットペーパーは流せず、目の前のビニール袋に入れる必要がありました。前の人の使用済みの紙が目の前にあるという状況は、人道的に問題があります。私たちは場所を変えるなどの工夫をしました。
- ラップポントイレ(排泄物を圧着して密封する高機能なトイレ)も導入されましたが、高齢者などが使い方がわかりにくいことが多く、ボタンの押し忘れや、排出された袋をゴミ箱に入れずに放置されることで詰まりや汚損が発生し、撤去されたケースもありました。
- 原因は、説明書きの文字が小さい・薄い、ボタンの色と印刷の色が違う、ポスターが背面で見えない、などでした。わかっている人が入って改善していく必要があります。
- 倉敷市真備町での事例
- 和式トイレを外して、市販の洋式トイレのカバーを被せ、洋式に変える改善を行いました。
- 手すり(つっぱり棒タイプ)の設置。
- トイレ内での性犯罪や体調不良での転倒事故のリスクがあるため、ナースコール(相互対話型、電気工事不要)を設置しました。
- 簡易なものでは、防犯ブザーをぶら下げるのも有効です。
K:キッチンの問題
- 実際の食事は、おにぎりや菓子パン、幕の内弁当などが何日も何ヶ月も続くケースが多くありました。
- これは、数を時間通りに提供でき、食中毒を出さないという理由で、地元の大手業者に頼むことが多いからです。
- 冷たいご飯や揚げ物が多く、エネルギーは取れても、栄養バランス(タンパク質など)に問題が生じます。
- 長期にわたりインスタント食品などが続くと健康を害するため、食環境の改善が必要です。
- 能登町では、食品の提供を呼びかけて、私たちが避難所へ届ける形を取りました。
- 食環境の整備
- ベッドの上での食事は、こぼしたり、姿勢が悪くなったり、衛生問題(ゴキブリ、カビなど)につながります。
- 食事をする環境(折りたたみの机と椅子など)を作ることが大切です。
- 段ボールベッドを組み替えて食事コーナーを作った事例もあります。
- 簡易キッチンの設置
- アルミ箔を貼った折りたたみ机にカセットコンロを置いた簡易キッチンを導入した事例があります。
- 長期にわたり調理をしないと、特に高齢者は調理の手順を忘れてしまったり、気力を失って仮設に移っても調理をしなくなったり、認知症が進んだりするリスクがあります。
- 食べたい時に食べたいものが調理できる環境を作ることが大切です。
B:ベッドとバス(Bathe)の問題
ベッド
- 段ボールベッドとパーテーション(目隠し)の設置。
- パーテーションには、布製カーテンタイプ(換気がしやすい、柔らかい雰囲気)と、段ボール板タイプがあります。
- 目隠しの高さは、2m(プライバシー保護)や140~150cm(中の様子がわかる)など様々です。
- 2mはプライバシー保護には良いが、中の異変がわかりにくいというデメリットがあります。
- 低いと見守りはしやすいが、のぞき見があったりというデメリットがあります。
- 犯罪抑止の工夫や、人の配置などでカバーしていく必要があります。
バス(お風呂)
- 自衛隊風呂が導入されることが多いですが、浴槽の高さが70cmほどあり、高齢者や足腰の不自由な方はまたいで入りにくいという問題があります。
- 浴槽に置くステップの様式が部隊によって違うため、安定性の悪いものもありました。
- お風呂に入れない方は多く、浴槽に長椅子を置かせてもらう、簡易の個別浴槽を横に設置してタッチアップの手すりやバスチェアを入れるなどの工夫が必要です。
- 介助者をつけて、体の不自由な方でも安心して入れるサポートを行いました。
- プレハブ型のユニットバスを設置した事例もあります(九州北部豪雨災害時、人工膀胱をつけている方のために)。脱衣所を広くし、洗浄ができる流し台をつけたり、介助者が入れる広さにするなどの配慮をしました。
- 妊婦、産褥婦、生理中の方、感染症の方、介助が必要な方など、自衛隊風呂に入れない人は多く、体の清潔が保てているかを丁寧にアセスメントしていく必要があります(「大丈夫」と言っても、浴槽が高くて実際は入れず1回しか入っていない、という事例もありました)。
- その他、手すりの設置や、力の弱い方にも開けやすい扉にするなどの支援が必要になります。
ストレス対策とグリーフケア
ナイチンゲールが「病院は患者に害があるところであってはならない」と言った通り、避難所そのものも、ストレスの塊であったり、良いものが来ていても使えずそれがストレスになっていたりします。
福祉避難所(能登町)の取り組み
- 能登町で開設した福祉避難所では、「生きる力を取り戻す避難所」を目指しました。
- 寝るスペースと食事スペースを分け、簡易キッチンを設け、「普通のお家的な感覚で過ごせる場作り」を重視しました。
- 「ぐっすり眠れて、疲れをとって力を蓄え、しっかりご飯も三食栄養のあるものを食べて」という生活の基盤が守られてこそ、自分で立ち上がっていく力が湧いてくる、という考え方です。
- スタッフは一人ひとりを尊重することを大切にし、高齢者が元気を取り戻し、自分の足で歩いて退所する姿が見られました。
仮設住宅移行後の課題
- 避難所では24時間見守りのスタッフがいますが、仮設住宅に移ると人との関わりが希薄になり、孤立という新しい問題が生まれます。
- 日中独居の方が多く、外に出ることもなく、ベッドでパジャマのまま横になっているような様子も見られました。
- 仮設に移ったとたん、体調を崩される方も多くいらっしゃいます。
グリーフケア
発災すると、物理的なもの、思い出、コミュニティなど、多くのものを失います。これが心身に影響を与えます。
- 心理的な反応:やる気のなさ、怒り、後悔、自責の念
- 身体的な反応:不眠、食欲低下、集中力低下、免疫力低下
- 日常生活での反応:睡眠障害、昼夜逆転、食事が億劫になる(冷蔵庫を開けても食材がなかったら何も食べないなど)
グリーフの過程は、ショック→否認・パニック→怒り(行政への怒りなど)→抑鬱・孤独といった段階を経て、人との関わりの中で立ち直り、再適用していきます。私たちは、この過程にある方々を支援していることを意識し、一生懸命考えながら支援を続けています。
オキシトシンによるストレスケア
ストレスホルモンであるコルチゾールの数値を下げる効果を持つオキシトシンの働きを利用したケアが重要です。
- サロンを開いたり、声かけをしたりといった人との関わりを通じて、オキシトシンが分泌されるような関わりを続けていきたいと考えています。
- タッチケア(肌の神経は脳に直結している)も、オキシトシンを分泌させ、ストレスに対するセルフケアにつながります。
継続的な支援と多職種連携
- 健康被害は地域でも継続していくため、災害関連死の予防や孤立予防のため、継続的な支援が必要です。
- 地域活動や災害前の地域のつながりの回復を目指した活動も行っています。
- 地域も交えて、多職種連携で何重にもセーフティーネットをかけていくことが必要です。
- 仮設住宅への戸別訪問(安否確認、情報伝達)
- サロン活動(体操、レクリエーション、夏メロレコードサロンなど)
- 子どものケア(親子食堂など)
災害看護支援における課題とネットワーク
専門職のマッチングシステム不足
- 現場には看護職などの専門職に入ってほしいというニーズがある一方で、全国の専門職も現地で支援したいと思っています。
- しかし、このマッチングの公的なシステムがないことが大きな課題です。
- 災害支援ナース(看護協会)は、医療機関等に勤めていないとエントリーできず、また現場に行けても通常のシフト扱いになるため、現地に3日程度しか入れないという現状があります。
- ボランティアセンターでは、「看護師です」と言っても、つなぐ余裕がなく「ニーズはありません」と言われてしまうことがあります。
ネットワーク「「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」」の立ち上げ
こうした現地と支援者をつなぐシステムの難しさから、「「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」」というネットワークを立ち上げました。
- 災害看護だけでなく、介護士、保健師、助産師といった専門職がしっかり支援につながることができるような仕組みづくりやシステムを作ることができるよう、尽力したいと思っています。
ナイチンゲールの教え
ナイチンゲールは「あなたがそこにいる時に自分がすることを、あなたがそこにいない時も行われるように対処する方を考えなさい」と言っています。支援が持続可能であるためのシステムを考えていきたいです。
結び
- 被災地は、九世紀から中長期、そして平穏期へとぐるぐる回っていきますが、どの時点でも継続的な支援が必要になります。
- 現地に行けなくてもできることはたくさんありますので、ぜひ皆さんご協力いただきたいですし、皆さんの地元で何かあった時のために、様々なところとつながっていると良いでしょう。
- 「親子支援・災害看護支援 *てとめっと」ハウス(能登町に借りたボランティア拠点)は、ボランティアさんの宿泊に利用できます。
ご清聴ありがとうございました。
